23日、第60回全国大学ラグビーフットボール選手権は準々決勝4試合が行われた。大阪・ヨドコウ桜スタジアムでは、京都産業大学(関西リーグ1位)と早稲田大学(関東対抗戦3位)が対決し、京都産業大学が65-28と大勝しベスト4進出を決めた。
前半5分、京都産業大学がFB辻野隼大のPGで先制すると、10分、早稲田大学はU20日本代表1年生WTB矢崎由高のトライで3-7とする。14分、追いかける京都産業大学がPGで6-7と差を縮める。その後ボールポゼッションは早稲田、テンポのいいアタックで前進を続けた。
18分、早稲田がフェイズを重ねて敵陣22m内側まで入ると、京都産業大学NO8シオネ・ポルテレがジャッカル。早稲田の攻撃を止めた。すると22分ビッグプレーから流れが京都産業大学に傾く。
ハーフウェイ付近での京都産業大学ボールのスクラム。スクラムプッシュでスペースができるとSH土永旭が突破。さらにポルテレがディフェンダーをなぎ倒しゴール中央へトライ。13-7と京都産業大学が逆転。
このトライでチームの緊張がほぐれた京都産業大学が攻勢をかける。30分、敵陣ゴール前でフェイズを重ね、BKに展開しWTB西浩斗が左隅にトライを決める。その後のコンバージョンゴールを辻野隼大がしっかり決めて20-7とリードを広げると、39分にも辻野がPGを決めて23-7と京都産業大学がリードして前半を終えた。
重要になってくる後半の入り、早稲田が敵陣22mで相手ボールを奪いクイックリスタート。しかし京都産業大学がカウンターラックでボールを奪い返すとSH土永がすぐさまボックスキックし50/22が成功。
ピンチをチャンスに変えるビッグプレーが生まれた。このチャンスを活かしたい京都産業大学はラインアウトからフェイズを重ねると早稲田がオフサイド。ここはタップからリスタート。再びFWでフェイズを重ね最後はHO李淳弘がトライ。30-7とリードを大きく広げた。
さらに47分、相手ペナルティーから敵陣深くに入った京都産業大学がラインアウトからFWでディフェンスを中央に寄せてからアウトサイドできたスペースをCTB小野麟兵が抜けてトライ。37-7と30点差に引き離した。
50分、早稲田は敵陣でのラインアウトからSO久冨連太郎がトライを決めて37-14とするも、スクラムで優位に立った京都産業大学が流れを渡さない。54分、SO吉本大悟のトライで再び44-14とすると66分にはFB辻野隼大のトライで51-14とした。
66分、早稲田は後半途中から出場したSH宮尾昌典がトライを返すも、70分LOソロモネ・フナキがトライを決め58-21とリードをキープする。早稲田は73分にWTB矢崎由高がトライを返すも京都産業大学は最後まで勢いを失うことなく終了間際にFB辻野隼大がトライをきめノーサイド。65-28と大差をつけて京都産業大学が大勝した。
準決勝の相手は明治大学。「準決勝の壁」を打ち破り悲願の「チャンピオンシップ」獲得に挑む。
早稲田大学 大田尾竜彦監督
起点となるセットプレー、中盤のペナルティーがかなりゲームに大きく影響を与えたと思います。なかなか自分たちが準備してきたものが出し切れなかったのが正直なところです。
京産大さんが非常に強かったというのがトータルの印象です。
――相手のタックル、DFで前に出られたが
ボールを持って攻撃をしかけているときは自分たちの時間が結構来ていた。(相手の)DFに何か自分たちのリズムが狂ったことはそこまでない。攻撃力の方が印象があった。
――後半、相手に点を取られた後、流れをつかめなかった
起点のところ、やっぱりラインアウトの獲得が全然できなかったところが非常に大きいかなと思います。準備したプレーで流れを取り戻したり、攻撃をスタートできれば得点能力があったが、食い込まれたところでちぐはぐだった。試合全体がそうだった。
――昨季の準決勝の京都産業大戦は1点差で、今季はこの差になったが
そうですね、試合は流れがあると思うので、ずっと流れをちょっとしたことで掴みきれなかったことがかなり大きいなと思います。京都産業大さんはやることをシンプルにしているかなと感じるが、そういったところかな。(小さな差が積み重なった?)今日の試合に関してはそうかなと思います。
早稲田大学 伊藤大祐キャプテン
自分たちのやりたいことが出せなかった、シンプルに出させなかった京産の勝ちかなと思います。
――DFで前に出られたが
あそこでバトルしようと思ったがやられた印象があるので、まだ整理がついていないが、もうちょっといきたかったな。
――後半、得点を与えてから流れを取り戻せなかったが
セットプレーを少なくしたかったが、僕自身整理ついていない、キャプテンとしてやれなかった責任は大きいなと思います
――テーピングにNO.1と書いていたが
僕自身が本当にプレーで引っ張りたかった、という思いが今も強くて、それが出せなかったのが正直僕自身も悔しい。やっぱり、そこでもっと行けたらなという思いがありました。(ノーサイドの笛がなったとき)監督、4年生も上井草残してきたメンバーとも、ただただただもっとラグビーがしたくて臨んで、この結果だったのですごく悔しいです。
――後半、最初のペナルティーでショットの可能性はあった?
いや、もう焦っているとか特になかったが、ラインアウトもスクラムも少しうーんという感じだったので、自分たちの一番自信のあるストラクチャーのアタックをしようとした。(ショットの可能性は)なかったです。
京都産業大学 廣瀬佳司監督
タレントが揃っている早稲田に対して京産らしく戦えるかがポイントだったと思いますし、スクラムも押すことができたし京産らしい戦いで勝てて非常に嬉しく思っています。関西のチャンピオンとしてのプレッシャーを学生は感じていたと思いますが、本当にしっかり準備をして立派に戦ってくれたなと思います。次の明治戦に臨んでいけると思っています。頑張っていきたいと思います。
――昨季の準決勝で早稲田さんに1点差で敗れていました
(昨季)早稲田に負けたとき、セットプレーを封じ込められた。ラインアウトでプレッシャーかけられたり、スクラムをいなされてうまく組めなかったり、上手く京産らしさを出せなかったことがポイントだったので、しっかり準備してきた。早稲田は試合巧者で80分隙を見せないことも意識してそこに対して準備してきました。
――前半セットから得点して、後半の勢いを維持して差を開けられた要因は
ハーフタイムで、後半、早稲田が巻き返してくることは選手とも話し合っていて、どちらが先にスコアするかが一番問題かなと思っていた。キックオフのリターンが悪かったが、しのいで敵陣に入って、スクラム、モールを押し込んで得点を重ねていき、後半も主導権をしっかり握れた。集中してよく戦ってくれた。
――明治戦に向けて
早稲田以上にタレント揃いでFW、BKにも素晴らしい選手が揃っているので、我々は15人一体となって攻撃、守備をしていきたい。(三木主将に対して)前に出るDFが彼の持ち味で、チームに伝染して強みになっているので、そういったところをどんどん出してしてほしいし、(彼のプレーが)京産らしさにつながっているので次の試合もそういった試合をしたい。
――試合前に、ボール保持率を高くしないといけないと話していた
セットプレーが上手くいった。ボール保持率はどうだったかというと、前半はキックオフリターンでミスしてあまり保持率高くなかった。後半は特にスクラム押して完全に主導権を握った。キックも有効的なキックを蹴っていて、チェイスも良くて、相手のキーマンの伊藤くんを走らせなかったのも良かった。
――スクラムに関して
一つはヴェアが帰ってきたこと。2試合くらい欠場したが、ヴェアが帰ってきて、早稲田に対するスクラム対策をしっかりして、うちの3番を前に出すスクラムができた。それが明治に通用するかわからないが、今日に限ってはうまくいっていた。
京都産業大学 三木皓正キャプテン
早稲田さんに対して、京産らしさを出して戦うことを意識して臨みました。自分たちのやりたいラグビーもありましたが、勝ってまた次に進めることを嬉しく思います。明治戦では10度目の準決勝の挑戦ということで必ず乗り越えていきたい。
――昨季は1点差で負けた相手
昨季のリベンジマッチということで、僕自身もすごく思い入れのある4年生やったので、この試合にかける思いは大きかったです。チームとしても僕の思いを伝染させてこの3週間、いい準備ができたので良い結果が得られて嬉しく思います。
――キック成功率100%だったFB辻野の活躍について
すごく僕の中で信頼している選手なので、今季、上手くいかないときもあったが、陰で努力している姿を知っているので決めてくれた。
――明治戦に向けて
伝統的にスクラムが強いので、スクラムのところと、ラインアウトが高いのでしっかりマイボールキープできるか。京都産業大である以上、セットプレーが重要になってくる。
――後半、反則からスクラムを3度選択した
スクラムを押すための準備をこの3週間で、選手それぞれ積み重ねてきたので、フロントローの顔を見て、押してくれると思ったのでスクラムトライを狙いました。
――空を見上げながらピッチに入ってきた
負ければ引退になるかもしれないので、無意識に空を見ていたと思います。(笑顔になっていたのは)笑っている方が強いと思っているからです。