1月2日、国立競技場では第61回全国大学ラグビー選手権は準決勝2試合が行われた。第2試合は早稲田大学(関東対抗戦1位)と京都産業大学(関西リーグ戦2位)が対戦し、31‐19で早稲田が昨年の雪辱を果たし、5大会ぶりの決勝進出を果たした。
チャンスを確実にスコアに繋げた早稲田が前半を制した。
前半5分早稲田が敵陣でスクラムペナルティを獲得。ラインアウトからサインプレーでWTB池本晴人が抜けると最後はLO栗田文介がトライ。野中健吾のゴールは決まらず。
前半12分にも早稲田は敵陣ゴール前のスクラムでペナルティを獲得すると再びタッチに蹴り出しトライを狙う。14分、早稲田のアタックに食い込まれた京産大がペナルティ。クイックリスタートからCTB福島秀法がトライ。野中のゴールも決まり12‐0とリード。
前半21分、早稲田はハイタックルのペナルティから敵陣ゴール前のラインアウトのチャンス。22分、ラインアウトからボールをキープしフェイズを重ねると最後はHO佐藤健次キャプテンがトライ。19‐0として早稲田が京産大にプレッシャーをかけた。
前半30分には、互いにボールが暴れて、攻守が目まぐるしく入れ替わる状況の中、早稲田は敵陣近くでボールを奪うとWTB田中健想がトライを決め26‐0とリードを広げた。
京産大はようやく前半終了間際に、敵陣ゴール前でアタックをしかけるも早稲田の硬いディフェンスを崩すことができず前半終了。
後半、最初にスコアしたのは早稲田。FB矢崎由高の50/22から敵陣深くに入ると、ラインアウトからボールを展開し、WTB池本がトライ31‐0と試合を圧倒的優位に持ち込んだ。
早稲田は大きくリードを広げたことで、リザーブメンバーにプレータイムを与えることができた。61分までに5人を入れ替えた。一矢報いたい京産大がスコアしたのは65分、FL日吉健のトライで7‐31とすると、73分にもPR乳井大士がラインアウトからモールでトライを決めると試合終了間際にもSH土永旭がトライを決めるも序盤の失点を埋め合わせることができずに試合終了。
早稲田大学 大田尾竜彦監督
本日は前半から攻め込まれる場面も多かったんですけど、規律高くプレーできたらよかったかなというふうに思いますし、あとスクラムですね、スクラムでしっかりと反則せずに、組み勝ってくれたのが今日の前半に繋がったかなというふうに思います。後半はちょっと規律が乱れる場面とかあったので、そのあたりを修正しながら決勝を迎えたいなと、そういう気持ちです。
――HO佐藤選手の交代の決断について
今日の試合ももちろん大事ですけども、決勝のことも考えて、あとはリザーブの選手のパフォーマンスを見るというような意味も含めて健次のプレータイムは70分ぐらい、もっと早く代えても良かったんですけども、やはり精神的な支柱でもありますし、あそこまで引っ張ったっていうのが正しい言い方かなと思います。
――去年京産大戦の負けから、ディフェンスっていうところはすごくプライドっていう言葉を使ってやってこられたと思うんですけど、今日のディフェンスに関しての評価をお願いします。
ディフェンスは非常に良かったかなというふうに思いますし、ディフェンスから取り返したボールのリアクションもよかったかなというふうに思います。
――今日のMVPは
みんな結構良かったと思うんですけど、池本とか良かったような気がしますけどね。
――先ほどリザーブ選手をテストするっていう意味合いもあって狙いが後半になっても、結構いろいろ大きくポジションを変えるようなところもありましたけれども、これは元々このチームを目指していたものなのか、また決勝に向けてもそういうポジションを変えることも想定している時、実験というかテストだったのか
両方ですかね。最後清水健伸が入ってとかいうところはもう完全にイレギュラーですけども、宮尾とか安恒とか、本当に計算できる選手が入ってどういうふうなチームを、そのメンバー入ったことで作れるかっていうのは、自分たちの持ち手として考えた部分はありますし、そうじゃない部分も当然あります。
――とりあえず試合の流れだけを見ると、そこから点数取られていて、あまり良くなかった流れですけれども、実際には収穫っていう部分はあったのですか
僕としてはやっぱり宮尾の調子がやっぱり戻ってきてるってことですよね。周りがもう少しアジャストできれば、もう少し機能しますし、もうベンチにいるメンバーでいうと、やはり安恒と宮尾が入ったら最初の15人よりもアタッキングのチームというかに変わるなっていう手応えは非常にあります。
早稲田大学 HO佐藤健次キャプテン
まず勝てて良かったっていうのが今の思いというか、去年4年生が負けて引退して、京都産業大学ともう一回やってリベンジするっていうのを、僕自身の一つのターゲットにしていたので、勝てて良かったです。
僕自身最後までグラウンドに立てなかったですし、最後は攻められて、少し守りの状態に入ってしまったというか、攻めるマインドっていうのが、少し薄れてしまったところが受けてしまった原因なのかなというふうに思うので、もっともっとそこの10番とコミュニケーション取ったりとか、こっちもどういうアタックするかとか、どういうプレー選択するかっていうところをもっともっと僕自身磨いていかなきゃいけないなと思いました。
――やっぱり最後までグラウンドに立ちたかった思いというのはあるんでしょうか?
いや最後まで立ちたかったのもありますけど、最後の方は僕はほぼ60分ぐらいから70分ぐらいまで、ほぼ何もできなかったというか、もっともっとチームに影響、チームがしんどい時に流れを変えるプレーであったり、もっとそういうプレーができた、できるチャンスがあったのに、できなかったところですごい反省しなくちゃいけない点が多いのかなと思うので、僕自身、決勝戦あるので、もう1回修正して、今日のビデオを見て反省して、修正して頑張りたいなと思います。
――決勝戦で80分間自分たちのいいプレーをするには、明日以降どんなふうにしていきたいと
まずリカバリーすごい大事だと思うので、アクティブリカバリーのようなリカバリーをまずしっかりしてやるのと、練習の強度というか、練習を持ってゲームライクに今週はすごい準備ができたのはそうなんですけど、やっぱり準決勝とか決勝になってくると、相手の集中力も今までと全然違いますし、やっぱりそうなったときに、もっともっとゲームライクな練習をしていかなきゃいけないと思うので、そこのコンタクト強度だけじゃなくていろんな頭の整理とか、ランニング強度とかももっともっと調整してやれればいいなと思います。
――グラウンドでのパフォーマンス、ディフェンスに関しては
強いランナーがいるっていうのは前々からわかっていたことで、その選手に対してやっぱり弾かれてもいいからしっかりタックルに入ろうということを言い続けていて、何人、何回も弾かれるケースではあったと思うんですけど、その後も全員が内側からタックルに入れたとか、1人にしなかったところがすごい良かったのかなっていうのは思います。
――昨年度の京産大戦で、ああいう負け方をして、この試合で何か声かけたりとか
今回はゲームのテーマに、「ゲームプラン、リゲインプライド」っていうプライドを取り戻すっていう、やっぱり今年、すごいいい感じで進んでいてもやっぱり心のどこかで去年負けてしまった京産大にやり返したいなっていう気持ちはずっとありました。
その中で準々決勝という舞台でもう1回、京産大と戦うチャンスが回ってきて、本当にプライドを取り戻そうっていう話をずっとしていました。それはディフェンスであったりセットプレーだったり。でも、今日勝てたのは本当に去年の4年生がいたからかなって自分の中で思ってて、去年の4年生がいなかったら自分たちはここまで成長できてないし、僕自身もチームを引っ張るようなプレーヤーになってなかったと思うので、今年だけの勝利じゃなくて、本当に去年の4年生のおかげで、今日の勝利があると思うので、今日出ていた部員もそうですし、応援してくれた部員、1週間準備してくれた部員もそうですけど、去年の4年生に本当感謝したいなと思います。
――監督がスクラムよかった立ち上がりおっしゃいましたけど、あの頭のスクラム3本、相手の反則を取りました。キャプテンとしてのマインドはどうだったでしょうか?
今週1週間、京都産業大学の3番のバインドが少し特殊なので、それに合わせて清水健伸と勝矢紘史と前田麟太朗っていう3選手がその組み方を明日試合なのにも関わらず、その試合その組み方で、ずっと練習してくれていて、多分その組み方をやっていなかったら、多分今頃焦っていて、こういう点数にはなってないし結果も勝ってなかったと思うので、本当にその3人の選手がゲームライクというか、本当に練習で押される回数が多かったので、それがいい経験になって今日押せたので、すごい嬉しかったですけど、自分たちのおかげっていうか本当にあの3人のおかげなのかなと思います。
――フロントロー3人で、特に意識したところ
相手の組み方が特殊なので、いろいろぶらされるところあるんですけど、自分たちにしっかりフォーカスして8人でまとまって、まずいいヒット出るっていうところをフォーカスしてやっていたので、それはすごいはまったのかなって思うのと、近畿大学の稲葉くんと、前の試合でできたのが、僕たち的にはすごいいい感触で、稲葉くんが多分今、本当に強くて、それで関西の組み方とか関西の強さを少し体感できたので、それがすごい良かったのかなと思います。
――決勝は帝京大ですけど夏と対抗戦でいい勝負できましたけど
今年の過去2戦の勝負は、あんまり関係ないと思っています。もう一発勝負の選手権の決勝という舞台で向こうは今のところ4年連続で決勝を経験していて、そういう戦い方とか、そういう雰囲気とかに慣れていると思うので、本当に自分たちはチャレンジャーなんで、チャレンジ精神を持って常にアタックし続けるディフェンスでもアタックし続けるマインドを持って、自分たちがやってきたことやれば絶対勝てると思うので自分たち自身持って楽しんで頑張りたいなと思います。
京都産業大学 廣瀬佳司監督
本日はどうもありがとうございました。前半、立ち上がりから早稲田のプレッシャーにペナルティとミスを繰り返してそれがことごとく失点に繋がりまして、非常に苦しい展開だったんですけれども、後半で、最後まで諦めずに素晴らしいディフェンスをする早稲田に対して、最後まで諦めずに京産大らしく攻めてくれたことにはすごくありがたく思ってますしすごく誇りをに思ってます。
本当に今年のチームはいろいろ好不調の波がありましたけれども、ここまで連れてきてくれましたし、今日終わってみれば素晴らしいシーズンであり、来季にまた繋がってもらったシーズンだったかなというふうに思います。選手には感謝してます。よくやってくれたと思います。ありがとうございました。
――4年間準決勝敗退、跳ね返すために何か。
そうですねアイデンティティを大切にしながら、進化していくっていうことは非常に大切かなと思いますけれども、本当にラグビーというスポーツはアイデンティティの強い、強く持ったチームがやっぱり強いチームだと思いますんで、そこはぶれずにこれからもやっていきたいなというのは思いますね。
――先ほどアイデンティティのお話もありましたが、一方で辻野キャプテンから封じられたときにどうするかというような趣旨のお話もありました。来年度以降の挑戦のために、より攻撃の幅を広げるというその辺り監督としてはどのような考えがあるか。
先ほども少し言いましたけれども、アイデンティティを大切にしながら進化していかないといけないなというふうに思ってますが、学生スポーツで毎年毎年戦力が変わるもんですから、しっかりと強化する上でですね、やはり京産大らしさ、アイデンティティっていうものをしっかり築いていくんだという。1年1年にして、それプラスの進化かなというふうに思ってますんで、我々が思う、京産大らしさっていうのもそれぞれの年でも違うと思いますし、セットピースだけではなくて、前に出るディフェンスだとか、今日のような粘り強いアタックだとか、そういったものを強化しながら作っていきたいなというふうに思ってます。
京都産業大学 FB辻野隼大キャプテン
今日の試合は廣瀬さんも言った通り、前半の立ち上がりからなかなかトライが取れず、逆に自分たちのミスで自陣に入られ、それをスコアに繋げられたっていうところで、なかなかチームを勢いに乗せることができませんでした。ただ後半諦めない力というところで、京産大らしさが見えたんではないかというふうに思います。4年間京産大らしさというところを追求してきて、4年間準決勝敗退という結果になってしまったんですけど、来季は残ってるメンバーがいろいろまた頑張ってくれると思うんで、また期待してます。
――接点もすごい頑張ってたと思う一方で、やっぱり敵陣に入ってからの精度のところでちょっともったいない部分もあったと思うんですけどそこは早稲田だから何かが起きてるのか、それともちょっとシーズンを通してもどんなふうに感じてます。
シーズン通してのことかなと僕は思ってて、やっぱりラグビーって接点で優位に出ればうまくいくスポーツだと思うんですけど、京産大はそこに特化してて、なかなかイーブンになったときに、やっぱり次の選択肢がないっていうところで、早稲田さんのディフェンスはすごく硬くて、強いキャリアーが単発単発になってしまって、結果ミスに繋がっていたっていう部分があったので、そこは4年間通しても、そこは見えたところだと思うんで、準備しきれなかった自分たちの実力不足です。
――4年間準決勝敗退、跳ね返すために何か
もちろん京産大が培ってきた歴史であったり、京産大のラグビーというものを追求するのはもちろんなんですが、やはりその強みっていうものは、相手を潰してくるっていうのが今のラグビーだと思うんで、それに対して何かどうしていくのかであったりだとか、もっといろんなラグビーに触れるのは一つ京産大は必要なのかなと思ってます。
――この4年間を振り返って
自分自身が成長できたことです。もちろん、ラグビーの技術であったり、体もそうですけど、一つやっぱ人間として成長させてもらったなっていうのが一番です。
――同期の京都成章のキャプテンだった早稲田SH宮尾昌典と試合後にどんな話をしていた
彼は僕とは違って、僕はなんか硬いですけど、彼は彼なりの良さがあるのでそれを全面的に出して、決勝戦も荒らしてほしいですね。
――自分にとっての京産大ラグビー部は…
難しいですけど、魂とかにしてます。
――試合終わった後に、いつもは涙を流すっていう場面が多く見られますけど、今年はすごい清々しい顔でしたけどそこはどういう心境でしたか?
もちろん最後まで諦めずにやりきったんで。そうですね、グラウンドやってる自分が、試合に出られていない仲間の分も背負って、楽しもうということは決めてたんで、最後までグラウンドで涙は見せないっていうふうに思ったんですけど、最後やっぱり仲間を見て挨拶するときに、すごい悔しさというか、自分たちで結果を残せなかったっていうちょっと申し訳ない気持ちが溢れて少しこうやって出てしまいました。でも試合が終わって清々しかったのは、みんなの分も背負ったっていうところですかね。
ーー4年間挑戦し続けて超えられなかった4強の壁にこれから挑んでいく後輩たちへのメッセージ
チャレンジし続けるだけだと思うので、3年生とあと1年間、死ぬほど努力して、最後にやりきって終わってほしいですね。やり残したことがないように準備して、臨んでほしいと思います。
ーー後半の部分、選手たち1人たちにかなり劣勢の中でどういう声掛けをされていたのか。
前半で点差はついたんですけど、僕たちは苦しい試合をしてきたんで、逆に早稲田さんは順当に勝って、チャンピオンチームとしていいゲームの展開が多かったと思う。僕たちは逆境の中で苦しい時期を乗り越えてきたよねっていうふうに話して、前半負けてるけど後半行こうって前向きに行こうっていう話をしました。
――後半トライから巻き返し
やっぱりいけるって思ってからは強いですよね、京産大は。ただ流れに乗るのが遅すぎました。