23日(土)OTOWAカップ第35回関東女子ラグビーフットボール大会第4節の3試合が行われた。日本体育大学健志台グラウンドでは昨年優勝の東京山九フェニックスと横河武蔵野アルテミ・スターズと対戦した。
サクラフィフティーン、LO佐藤優奈がキャプテンを務めるフェニックスは小牧日菜多、小鍛冶歩、柏木那月の強力フロントローにサクラセブンズから15人制にチャレンジしている水谷咲良がFLに入り、ハーフ団は中島涼香と桑川碧が務める。バックス陣は、奥野わか花(旧姓・原)、西亜利沙、古田真菜、松村美咲と日本代表で活躍する強力なメンバーが揃った。
対するアルテミ・スターズはHO谷口琴美、PR加藤幸子、SH津久井萌らサクラフィフティーン勢が先発。10番には西舞衣子に代わり片岡詩が入った。BKメンバーではWTB小川愛夢が欠場。複数のポジションチェンジがあった。
メインスタンドの左から右に強い風が吹き、前半風下のフェニックスはエリア取りに苦労した。またブレイクダウンの攻防でもペナルティをしてフェニックスは自陣からなかなか脱出できない時間帯が続いた。このチャンスを活かしたかったアルテミだったが、最後の最後、ゴール前でボールをノックオン。スコアにつなげることができなかった。
先制したのはアルテミ・スターズ。ゴール中央で相手のペナルティからPKを獲得するとショットを選択。キッカーを務めるのは、HO谷口琴美。落ち着いて蹴ったボールはゴール中央を貫き成功。均衡が破れた。
するとすぐさまフェニックスが反撃に出る。FB松村美咲のゲインによって空いたスペースにボールを運び、FW・BKが一体となってボールをつなぎ最後は24分、WTB山本侑衣菜がトライ。このトライがチームに勢いをもたらした。
31分、相手のラインアウトが乱れ、フェニックスがボールを奪うと再び攻勢に転じ、再びWTB山本侑衣菜がトライ12-3とリードを広げた。
前半終了間際、アルテミ・スターズが自陣でオフサイド。フェニックスはタッチに蹴り出しトライを狙いに行く。ラインアウトからモールを押し込みBKへ展開。最後はFB松村美咲がトライを決め17-3とフェニックスがリードして前半を終えた。
後半、最初にチャンスを迎えたのはフェニックス。松村美咲のカウンターからゴールに迫るも後が続かずノックオン。アルテミ陣内での時間帯が続くがフェニックスも決めきれない課題が残った。
それでも63分、ゴール前の攻防からPR髙木恵がパワフルなトライで突き放す。追いかけるアルテミ・スターズはコリジョンの部分でプレッシャーを受けてアタックのリズムを作ることができず自陣を脱出できなかった。
77分、SH津久井萌が右肩を負傷して後退すると、アタックのバランスが崩れ、自陣でボールを奪われ84分に髙木恵に2本目のトライを許しノーサイド。フェニックスが5トライを決め、31-3でアルテミ・スターズに快勝し2連勝とした。
なおこの試合でスター・オブザマッチには2トライを決めた、山本侑衣菜(WTB・東京山九フェニックス)が選ばれた。
次戦は一週間後の30日、フェニックスはPiecesと対戦。アルテミ・スターズはYOKOHAMA TKMと対戦する。
東京山九フェニックス LO佐藤優奈キャプテン
前半はこっちのミスが多かったのとレフェリングにあまりコミットできていないで試合に入ってしまったので、ペナルティについてはレフェリーと話をして、しっかり敵陣でプレーしようと声をかけながらやっていました。結構自分たちのミスで敵陣に行けなかっただけだったので、自分たちのプレーができていたら、もっといいラグビーができていたと思っていたので、そこは焦りなくやってました。
――ブレイクダウンでのペナルティの部分はいつくらいからレフェリングに合わせることができるようになった?
そうですね。最初のワンプレーからレフェリーのジャッジと自分たちのフィーリングが違うなと思ったので、実際にプレーしている人は一生懸命やっているので気付けないんですけど、周りがレフェリーのコールがあったらもう離そうとか声かけるように、そしてそれを聞いてねと言いながら固くやっていこうとしていました。
――前半の1トライを取ってからペースを掴みました。
そうですね。あのトライから自分たちのペースに持って行けて、みんなもちょっとホッとしたかなと思います。慌てることはなかったんですけど、本当に自分たちのプレーができていなかったので、まずはそこをやってみないと効くか効かないかわからなかったので、焦りはなかったですが、最初の流れは良くないなというのと、ちょっと建て直さなくちゃという気持ちはありました。
――初戦のTKM戦との接戦に勝利してからどんな準備をしてきましたか
初戦から2週間時間があったので、アルテミはFWが強みだなと思っていたので、こっちもセットプレーの部分では出来ることもあるけど課題もまだまだ多かったので、そこの精度を高めようと2週間、チーム練習でも自主練の部分でも時間を作ってユニットで取り組めたのは強みになったかなと思います。BKの方では結構経験値が高くてボールキャリーの強い選手が多いので、FWがボールをちゃんと出せればBKで勝負できると思っていたので、そこもうまくできたんじゃないかなと感じています。
――今シーズンキャプテンとして意識していることは
キャプテンとしてしっかり80分間、周りを引っ張っていけるような運動量と声がけできるようにそこは準備していきたいです。課題ですが、まだまだ自分のこととかで精一杯で余裕がない部分があるので、しっかりみんなが80分間楽しめるように声掛けできるようにもっとやっていかなきゃなと思っています。
――連覇については意識していますか?
連覇連覇と言っていると足元をすくわれてしますし、フェニックスって結構、いけるって思っているような取りこぼしてはいけない試合を落としたりするんで、まずは一つひとつ眼の前の試合相手がどうやってくるのかをしっかり対策して、いつも全力で試合に勝ち進んだ結果、全国にいくと思っているので、前を見すぎずに1個1個やっていこうとみんなで話をしています。
――今はチームにフォーカスしていると思いますが、その先にワールドカップもあります。
本当にこの15人制の試合が終わったらもうワールドカップにむけて進んでいく形になっていくので、ゲームだけでなくしっかり練習でもちゃんとコンディションを保てるようにしていこうと思っています。
代表としての課題が、勝てそうで勝てないみたいな試合がずっと続いていて、悔しい思いをしてきたのでそこを変えなかったらワールドカップも(前回大会と)同じ結果になってしまうのでまずは自チームで敵陣にいったときに、フェニックスでも課題なんですけど、しっかり自分たちのボールをキープしてトライをして帰って来るというところを意識して、それを代表に行ったときに活かせるようにやっていこうと思っています。
東京山九フェニックス WTB山本侑衣菜
――MVPおめでとうございます。
ありがとうございます。嬉しいですけど、みんなが繋いでくれたボールをしっかりと決めきることができたので、そこは一つありがたかったと思います。
――前半は風下で自陣にいる時間帯が多かったですが
自陣に差し込まれることが多かったので、数少ない敵陣では絶対取りきろうという話をしていました。そこで何回か取り切ることができたので目的が達成できたかなと思います。
――2本のトライを振り返ってみると?
1本目は本当にみんなが繋いでくれたボールを、最後余った状態で私がもらうことができたので、最後に決めきるということが出来たトライでした。2本目ははいい感じにボールをスペースがある状態でもらうことができたので、自分の得意な感じでした。
――ボールを継続すればいけるという手応えはありましたか?
そうですね。チームの中でも外で勝負できるというのは話していたので、そういう場面になったときにはしっかり取り切ろうということをしていました。
――昨年優勝したということで追いかけられる存在ですが、連覇については意識しますか?
意識はしますけど、そこにこだわりすぎず、一つひとつの戦いに集中して、連覇というよりは眼の前の試合にフォーカスしてみんなで練習はしています。
――この試合での課題は?
前半自分たちのミスから自陣でずっと攻められていたことと、ゴール前で自分たちのミスで最後トライを取り切れずに何回か相手にボールを許してしまう場面があったので、そこのミスを減らしていくところ。次の試合が来週にあるので、フォーカスしてまた一週間頑張りたい。
――プレシーズンでは、海外のチーム(フォース)との対戦でトライも取りました。その後の準備でプラスになった部分は?
体の大きい相手とシーズン前にぶつかることができているので、大きい相手に対してこうしていこうとか、速い相手に対してこうしていこう、というように現状を知ることができてすごく自分たちのためになった試合でした。
あのときのトライもみんなが余らしてくれた状態を取り切るということだったので、余っていない状態でも、自分ひとりで切り開けるというか、ピンチをチャンスに変えることができるような選手になっていきたい。
横河武蔵野アルテミ・スターズ 山本和花キャプテン
自分たちの強みを活かしきることができなかったというのと、小さなミスが重なってしまって取り切れるところで取れきれなかったというのが敗因かなと思います。
――フェニックスとの差は
(フェニックスは)昨年の優勝チームなんですけど、そこに勝つために1年間体作りをしてきて、勝てた部分と勝てなかった部分が試合をやっていて感じました。1人1人の「個」については昨年より少しずつ追いついてきたかなと思うんですけど、やっぱり、1v1での外に切られたときの内側とのリンクとか、そういうところがやっぱりフェニックスさんとの違いかなと思いました。
――1本トライを取られてから中々ペースを戻せなかったが、どんな声がけをしたか
最初に取られたときはまだ1トライだよというので、もうどんどん前に、風上でもあったので、前に行こうという声がけをしていました。
――全国を目指すために次の試合では?
やっぱりFWとBKのリンクが切れてその間を付かれてしまうことがあったので、FW、BKがコネクトして、しっかりと面になって守れるようにディフェンスの部分をもっともっと改善して自分たちの強みを活かしたいです。
――今日は片岡さんが10番でしたが、西さんは怪我?
けがもありますが、彼女(片岡)もすごくキックが飛ぶので、そういう部分でフェニックスさんとの陣地の取り合いというところで対抗してくれました。
――アルテミの強みを活かしたトライの取り方とは?
FWのモールとかも自分たちの強みというのはもちろんなんですけど、セットプレーだけじゃなくて、BKの選手もすごくフィジカルはこの1年で強くなってきたので、全体としてフィジカルで一歩でも前に出る、ゲインをきるというのが今年のチームの強みなので、次回はそれを遂行していきたいです。