菅平2020・高校女子たちの夏―大会形式を模した練習試合レポ&本誌選出ドリームセブン | ラグビージャパン365

菅平2020・高校女子たちの夏―大会形式を模した練習試合レポ&本誌選出ドリームセブン

2020/08/12

文●大友信彦


2020年夏、コロナウィルスの感染拡大を受け、多くのスポーツが自粛に追い込まれた中で、8月9日と10日の2日間、長野県菅平のサニアパークでは女子高校生によるセブンズの試合が集中開催された。

「決勝」は国学院栃木と石見智翠館Aの対戦となった

「決勝」は国学院栃木と石見智翠館Aの対戦となった

もともとは例年「オッペンカップ」として開催されていた全国女子高校生セブンズ。今年も開催が予定されていたが、コロナ禍により例年と同じ形での開催は断念。しかし、参加を予定していた各校にとって、この時期は毎年行われてきたコベルコカップ(15人制、地域ブロック単位で出場)もかねて菅平に駆けつけるのが恒例行事だった。大会があろうがあるまいが、菅平にはかけつける。かけつけたなら、試合をしたい。何しろ、3月以降、ほぼあらゆる大会が中止されていた中で、選手たちやコーチたちは、8月には情勢が好転することを信じて準備し、感染リスクを避けながら対外試合再開の日を心待ちにしていた。

そこで到達した結論が「大会形式を模した練習試合」だった。チームによっては公式の大会と同じ位置づけで準備し、ファーストジャージーで臨んだチームもあった。それは、ラグビーをする機会の無い半年間を過ごした選手たちの思いに応えるためのギリギリの選択だった。

「優勝」を飾った国学院栃木

「優勝」を飾った国学院栃木



「大会」を制したのは國學院栃木だった。初日は群馬プライムスを41‐0、石見智翠館Bを22ー7で下すと、2日目は東海大静岡翔洋を31‐0、SCIXを34‐0で下し「決勝」では石見智翠館Aに31‐0で完勝した。5試合を通じて得トライ27、失トライわずか1という圧倒的なパフォーマンスだった。昨年、1年生でSDS(セブンズ・デベロップメントスコッド)に選ばれワールドスクールセブンズに出場した高橋夏未のリードから、やはりSDSメンバーの快足WTB中平あみが快走を重ねた。

最前線でタックルにジャッカルに身体を張った小坂海歩(みぶ)主将は「今年はこの先、大会があるかどうか分からないし、みんなでラグビーできるのはこれが最後かもしれないと思って準備してきました」と笑顔で振り返った。



全国U18女子セブンズで昨季まで2連覇の石見智翠館は、非常事態宣言が発令される前から万全の感染対策を施し、都市部から離れた地理的条件にも助けられ練習を継続。5月31日には校内大会も決行して強化を進めてきた。例年なら夏のターゲットだったコベルコカップに代わる目標として、菅平の前に茨城に遠征し、全日本選手権チャンピオンのRKU龍ケ崎グレースに挑戦するなど、夏は15人制の活動に注力してきた。

菅平では学年別に3チームを組んでエントリー。主将の下村理紗、SDSのワールドスクールセブンズ準優勝メンバー芳山彩未がケガ、コンディション等で欠場するなど戦力が分散して国栃の勢いを止めるまでには至らなかったが、多くの選手が経験を積んだことは大きい。

2強を追う各チームも素晴らしい戦いをみせた。東海大静岡翔洋は根塚智華(ちはる)主将の爆弾タックルからチャンスを作り、相手DFに接近してパスを動かし、杉田生璃(いくり)、高木沙環(さわ)らが旺盛なサポートから多彩なトライをあげた。

スケジュールの関係で第1日のみの参戦だった開志国際も印象的な戦いをみせた。登録メンバー8人というギリギリの編成だったが、走力に優れる古川美月(みる)主将を中心に意思統一されたプレーでSCIXに圧勝。石見智翠館Cとも19ー26とほぼ互角の戦いをみせた。どのチームも、コロナ下の制約された状況で真摯な努力を重ね、レベルアップを果たしてきたことに敬意を表したい。

あわせて、受け入れに奔走した関係者、各チームの指導者もマスク着用、消毒液の準備など感染対策に留意していたことを付記しておく。また、残念ながら、諸事情でこの夏の菅平を断念したチームも多い。苦渋の決断にも深く敬意を表したい。秋の全国U18女子セブンズが無事開催されることを切望する。


RJ365では、2日間にわたった戦いの中でひときわ輝いた選手たちをドリームセブンとして紹介する。



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