29日、第26回全国高校選抜ラグビー大会は準決勝を迎えた。第1試合は桐蔭学園(神奈川)と御所実業(奈良)が対戦した。朝から小雨が降る中、雨のコンディションをどう戦うか注目された。
序盤試合を優勢に進めたのは御所実業。1分、CTB伊勢村彩羽が裏スペースにキック。桐蔭学園WTB鈴木豪が対応するも御所実業の早いプレッシャーを受けタッチライン外へ押し出されてしまう。

WTB鈴木が押し出され御所実業がチャンス
直後、御所実業がラインアウトからモールを組む。モールをプッシュするのかと思われたが1番、3番、NO8の3人はモールに入らず。SH藤澤はボールを出してFWで縦の攻撃。PR藤井威吹がボールをトライラインへ持ち込むもグラウディングできず。

御所実業はモールではなくアタックを選択。PR藤井がインゴールに迫るもグラウディングできず
桐蔭学園のゴールラインドロップアウトから御所実業が再びアタックを仕掛けるもノックフォワードでこの試合ファーストスクラムとなる。桐蔭学園SH竹内のボックスキックは有効なゲインとならず、御所実業が再びアタック。桐蔭学園WTB西本友哉がチョークタックルでボールに絡み、モールアンプレヤブル。桐蔭学園ボールのスクラムに。

西本のチョークタックル
桐蔭学園は自陣のマイボールスクラムから敵陣へ入ろうとするも、SO竹山史人がキックチャージにあい、ピンチを迎えるが御所実業はそのボールを確保することができずノックフォワード好機を逸した。
それでも9分、桐蔭学版がペナルティで御所実業が再び敵陣深くに入ってラインアウトのチャンスを迎える。津村晃志がロングボールを投げ入れるも確保できず、ここでも御所実業がミス。好機を活かしきることができない。
12分、桐蔭学園はFB曽我の絶妙なキックでようやく敵陣に入る。御所実業がラインアウトからアタックを始めるも自陣22m手前でノックフォワード。桐蔭学園ボールのスクラム。

曽我のキックでようやく敵陣に入る桐蔭学園
CTB古賀啓志がゲインして22m中に入るとフェイズを重ね、竹山が裏スペースへボールを転がすと御所実業SH藤澤がカバーに入るもキャリーバック。桐蔭学園が5mスクラムとなる。その後巡目に細かくつなぐと、HO堂園尚悟がスペースを抜けて先制のトライ。CTB坪井悠のコンバージョンは決まらず0‐5。

古賀啓志

竹内楓稀

御所実業のダブルタックルを受けるもボールをキープ

前半17分堂園尚悟がスペースを抜け

堂園がインゴールへ

堂園尚悟の先制トライ

序盤攻め込まれていた桐蔭学園が少ないチャンスをスコアにつなげた

坪井悠のゴールは決まらず
序盤、優位に試合を進めながら先制を許した御所実業は、18分、FB曽我大和に対してCTB岩井壯太朗がキックチャージ。岩井が足にかけボールを前方に転がすも。曽我が何とかタッチ外に蹴り出し、ドロップアウト。桐蔭学園としては再びピンチを凌ぐ。

曽我大和のキックを御所実業CTB岩井がチャージ
27分、桐蔭学園は敵陣ゴール前スクラムから坪井、古語でゲイン。さらにLO吉田がトライライン目前までボールを運ぶとSH竹内が素早く巡目に展開。竹山からロングパスをうけたWTB西本友哉がトライ。0‐10と桐蔭学園がリードして前半を終えた。

堂園の縦突破

古賀啓志の突破

敵陣スクラムでペナルティ

前半27分西本友哉のトライ

前半ロスタイム・坪井悠のゴールは決まらず
後半は互いにスコアのないまま、迎えた22分、桐蔭学園は敵陣ゴール前のマイボールするクラムからFWが近場でフェイズを重ね、最後はHO堂園尚悟キャプテンがトライ。0‐17としてリードを広げた。

後半22分・堂園尚悟のトライ
追いかける御所実業は何とか自陣から脱出して敵陣に入りたかったが、結局そのまま後半のノースコアで終わり試合終了。0‐17で桐蔭学園が完封勝利し2年ぶり5度目の優勝に一歩近づいた。
桐蔭学園 藤原秀之監督

桐蔭学園・藤原秀之監督
前半、ラッキーなことに2本(トライを)取られなかったので。本当は取られていたでしょうね。最初の一発とチャージから。あれらはもうほぼトライですよね。取られたら流れは完全逆だったかなと思いますけど。
――それでもディフェンスで粘りましたね
そうですね。ラッキーでしたですね。今日は御所(実業)さんのミスに助けられた感じでしたね。思ったより御所の方が(ミスが)多かったという感じでした。
前半、良い形で(ラインアウトからのモール)やられていたんで、後半、もうちょっとモール組んでくるかなと思ったら1本でしたね。意外でした。
――2日前の監督の言葉を借りたら、再現性のあるトライだったかどうか・・・
かなり(再現性の)ないトライですよね。今日はBKがエリアのところでしっかり取れなかった。それはスキルの問題もあると思うし、ラグビーの理解力というのもあると思う。取れて1本でしょうね。
やっぱり、そこはFWとBKの中で違いが随分あるので、やっぱりミーティングの中でもちょっとズレてるところがあった。今日は一番、そういうところが出やすい試合だったなというところですが、最後17点を取って継続しましたけど、あれも本当はそういうところじゃない。
あれが決勝なら行ってもいいのですが、(準決勝は)次があるので、やっぱり準決勝は1トライを取られても17-7だし、ゴールキックを蹴っていると、時間的にあと残り1プレーとかになる。ラインアウトを使って、時間を使うということもしなかったし、マネジメントの悪さが、今日はお互いに出たなと。でもFWが頑張ってくれた。

キャプテン堂園尚悟を中心に最後までFWの集中力は高かった
――雨の中、最後までFWは気合が入っていましたね。
それがやっぱりBKを助けた。BKのミスを全部、助けた。
――FWとBKの認識の違いとは
BKの中でもありましたよ。継続は本当にできるの?みたいな。そこで昨日の夜もズレていたし、そういうところは今日の試合で出るだろうと思った。9、10、12、15もそうですけど、スキルの問題もあると思いますけど、それが解消されない限りは、(そのズレは)解消できないなとは思いました。
練習するしかないでしょう。明らかにキックの距離も短いし、(相手の)10番もキックが良かったが、海外ではあれくらいの選手いくらでもいる。(昨季の)古賀並みに蹴れる選手はいない。古賀は風が強くてもしっかり距離が出せるタイプでした。
――前半の最後のPGを決めていればもっと楽な展開になっていたのでは。
そうですね。あの3点を取っていれば、あの3点が入らなかったので、流れは全部変わった。(後半)1トライを取られた瞬間に一気に変わるからな。3点入った瞬間に変わるからなっていうことを言ったら、やっぱり変わりましたね。後半もショットを狙わなかったので、あのあたりが弱いところでしょう。
――後半は逆にPGを狙わなかった
あそこも狙わなかったでしょう。13点になるところ。あれも反省でしょうね。大反省というか、何で狙わないのか、多分、(前半)外したから狙わなかったでしょう。あの辺が弱さかな、今年の新3年生の弱さが出ました。
――まだ昨季の経験者と違いがある?
全然違いますよね。古賀は大きかったですね。しんどい中で1枚、後は後藤、両センター。この辺はどっちかというと、アタックもディフェンスも嫌いなメンバーじゃないので、全然、差が出ましたね。去年は古賀と後藤でやっていましたよね。

昨シーズンは準決勝敗退だったが今シーズンは決勝進出
――こういった経験をしながらも決勝進出です
ラッキーでしたね。でもこういう雨の日も練習はしたし、雨の日のための対策も散々した。そういう意味では、多少なりともセービングしたり、足でボールを扱うという練習の成果は出たのかもしれません。うちの方が蹴っている回数が多いかと思うので。
――もうちょっと縦につなぐのかなと思ったら。
そうですね。ちょっと難しかったでしょうね。オフロードにちょっとこだわったかなという気がします。
――あらためて決勝に向けて
ラッキーですよね。大阪桐蔭さんとはできなかったですが、一応5試合できるのは。東福岡とは夏にやりますけど、そういった意味では春の段階で、5試合できるとありがたい。また、新たな基準ができる。少しワイドに振られて練習したいですね。いい勉強させてもらいます。
桐蔭学園 堂園尚悟キャプテン

今日は雨ということで、ミスもチームの中で想定していて、どう攻撃するか話し合った中で、敵陣でプレーする。ただやっぱり前半は自分たちのミスで、自陣でプレーすることが多くなった。でも規律だったり、ディフェンスで体を当てることができて、我慢できたんじゃないかなと思います。
最初取られなかったのも大きかったし、自分たちが先制して、後半の最初も先に取れた。前半の最後のPGが入らなくて、相手に流れがいっちゃうかなと思って、(後半の最初に)気を入れて、ディフェンスから入ろうと意識しました。

――2トライを挙げました
トライはみんながつないでくれて、自分の強みであるボールキャリーを徹底してやった。トライはたまたまみたいな感じです。(後半のトライは大きかった)3本目がほしかったので、FWでこだわって1対1のところにこだわってトライ取れたことが大きかった。
――序盤苦しかったが、攻撃に転じられたが
マイボールになったら積極的に走り込んで、FWの中で、自分たちから仕掛けるところを話し合った。9、10番にどういうボールがほしいか要求した。できたところはあったがキャッチのところの質のところでこだわりきれていないのが現状です。

――藤原監督がFWとBKがチグハグだったと話していたが
BKがどうしたいとか、FWがこうしたいとかもっとミーティングで話すことが大事になってくると思います。(FL)前鹿川、(CTB)坪井、(SO)フミ(竹山)の3人が中心になってミーティングでどうしようか話し合っている。自分は話すことが苦手なので、プレーで、パフォーマンスで見せることを意識している。
――反省点も出ましたが勝利できました。
御所実さんとか夏合宿で経験できない、花園でしか経験できない相手とやれたのは大きかった。
――決勝に向けて
決勝だからといってそんなに固くならず、どうやりたいかを話してミーティングで話したことを60分間、徹底したい。
――昨季のチームは選抜ベスト4でした。それを超えました。
去年は去年なので。自分たちの最大限を活かしてやっていきたい。アタックの軸であるスペースにボールを運び続ける。そしてそのスペースを共有して、常に自分たちが意志を持ってしゃべり続けることが大事になってくる。
桐蔭学園 SO竹山史人

竹山史人
自分的には勝てて良かったが、何がやりたいのかというのが明確にならなくて、それはゲームメーカーである自分の責任だったので今日は大反省かな。
――それでも決勝に進出しました
今日、すごく悪い試合しちゃったことは切り替えてじゃないですが、みんなでもう1回話し合って、決勝に向けて数多く試合ができるということは成長する機会が増えたので、次の試合もどうやって戦うか話し合って一つ一つの試合に勝てたらなと思います。(5試合目で)体力的にもみんなきつくなってきてますが、その中でも走り勝ちたい。
桐蔭学園 CTB坪井悠

坪井悠
前半の一番最後ペナルティゴールのところで外してしまって、そこで決めていれば後半もいい形で入ったかもしれないですけど。外したことで後半もちょっと難しい立ち上がりになってしまった。そこは自分の責任なんで、責任とって練習しないと、キッカーとして100%きめなきゃいけないなと思っています。
(試合前にやろうとしていたことは?)もっと裏に蹴ろう、敵陣でプレーしようというのはあったんですけど、そこがあんまり出来ていなくて、ずっと自陣であったり、ごちゃごちゃやって相手に取られてみたいなのが多かったんでゲームメイクといいうところはBKとしてはできていないんじゃないかなと感じています。

今日は少し雨というのに囚われすぎた部分もあるんですけど、何かもう少し雨に適応しなければならなかったんじゃないかなと思います。ミーティングでもそこは出たんですけど、ナアナアになってしまった部分があったんで。キック蹴っていればいいでしょう、みたいな感じで全員がそれに納得してしなったんで、そこのところで自分はもうちょっと深く掘り下げて全体が納得する状態で試合に向かわなければいけなかったかなと思います。
(花園が終わってからここまで自分自身としてはどういう部分にフォーカスしている?)本当に1個上の先輩経ちにずっとやってもらっていたんで、自分たち60期はただ付いていっていただけだったんですけど、新チーム始まってから本当に難しい代なんですけど、今、スペースにボールを運ぶという軸が見つかって、少しはやりたいラグビーというのがみつかったんじゃないかなと思います。
(決勝に向けて)決勝は本当にタフなゲームになると思うんで、まずはコンタクトの部分でBKでもFWでも1 vs 1のところで負けないということを意識して、スペースが空いたら、ワンチャンスを狙ってトライを取りに行きたいです。
桐蔭学園 NO8足立佳樹

足立佳樹
(ベンチに戻ってきたとき納得していない表情をみせていましたが)ゴール前のスクラムでNO8単の時に何度も滑ってしまって、そこを(コーチに)焦るなって言われて、どう改善しようかなと考えていました。本当は落ち着いてやりたかったんですけど(苦笑)

(試合前のミーティングでやりたかったことはできた?)FWはとにかく体を当て続ける。御所実業はFWが強くてモールを強みにしているので、そこへの対策だったり、1v1の部分でこっちから体を当てて、相手から受けないようにするというのは出来たかなと思います。

御所実業 津村晃志キャプテン

桐蔭学園さんは基本ができるチームなので、雨という条件の中で自分たちもどれだけ基本的なプレーができるかというところだったんですけど、相手のセカンドマンであったり、ルーズボールに対しての反応というところで負けてしまって、なかなか自分たちのベースというのが掴めなかったです。
(モールは?)モールはあんまり組めてなかったんですけど、一回組めたところでコミュニケーションエラーでSHの子が出ちゃったりとか、なかなか自分たちのやりたいラグビーというのができなかったです。それぞれの考えていることがバラバラになっているみたいな形になってました。

後半、なかなかモールを組む機会を作れなかった御所実業
(ラインアウトについて)は100%自分が悪いです。いい組み立てをしてくれてたんですけど、100%ボールが投げられなかった。練習あるのみかなと。
(前半攻めきれなかった時間帯は)前半は敵陣でやる時間が最初の方は多かったんですけど、そこで得点できなかったのは今日の敗因の一つで、ラインアウトも最初の方は成功して、キックゲームでもSO中俣くんが勝ってくれていたんですけど、基本であるトライラインにちゃんとボールをおけない、そこで点数を取り切れんかったのが桐蔭学園さんとの差かなと思います。
(ハイパントキックが多かったのは)ゲームプランというか、雨が降っていたのでいくらキャッチがうまくてもチェイスかければ相手のミスを誘えるかなと思ったんですけど、そこでFWがなかなかプレッシャーかえられなかった部分あったんで、キックしたその次の行動まで意識してやらないといけないと思います。

(近畿大会3位からベスト4まで上り詰めたチーム。花園までにどこを強化していきたい)ベスト4までこれたのは自分たちプレイヤーだけのやってきたことじゃなくて見えないところで支えてくれているコーチの人であったり、地域の人であったりという支えがあって、公立高校ながら来れたと思います。見えないところの『おかげさま』ってところまで感謝して、ラグビーができるのは当たり前じゃないと思うんで、もう一回基本から自分たちの足元を見直してから秋だったり、花園につなげていきたい。
(春に桐蔭学園と試合をする経験ができたことは?)関東のチームと試合をしたいと思っていたんで、この経験を選抜大会で経験できたのはすごくありがたいことですし、相手から得るものもありましたし、自分たちがたりないことも課題が出たので、高校に持ち帰って、先生に教えてもらうこともありますし、自分たちでどんなふうにどんなことをしないといけないのか考えながら練習していきたいです。

春はベスト4で終えた御所実業。花園では宿敵・天理に勝利することがまずは大きな目標となる。
(ラグビー的にはどんなこと?)ブレイクダウンで圧力をかけられたりとか、あとはボールを貰うときに溜めがなかったとか、ほんまに基本の一つのことで相手に付け込まれたので、そこを絶対改善して、セットプレーも安定できなかったので、そこは練習することと、フィジカルの部分で受けになって後手後手に回ってしまったんで、課題はたくさんあるんですけど、基本とフィジカル強化のところはやっていきたいです。