ノーサイドの笛がなると、金澤功貴キャプテンはベンチの横で大きく息を吸って、吐いた。かすかに、合図を送ったのかどうか、後ろにいたチームメイトが、金澤の座った車いすを押す。 正面に両チームが整列した真ん中に、金澤の車いすは、自然に進み入った。
そして、3位の表彰状を受け取った。
表彰式を終えると、相手チームのベンチへ向かい、東海大仰星の湯浅監督にあいさつをして、それから自分たちのベンチへ戻った。
車いすに乗ったキャプテンの、春の戦いが終わった。
「仰星にはこの前負けて、そのリベンジを果たす試合やったんですけど…」
金澤はそう言って、少し表情を曇らせたが、すぐに気を取り直して続けた。
「自分らは、まだまだ足りない部分があるし、『ここは行けるぞ』というのが見えた部分もあったと思う。やらなきゃならない部分は多いし、この負けを、しっかり受け止めて、次に向けて何をしなきゃいけないかをしっかり見つめて、次につなげていきたいです」
そう話す金澤主将の目が、少し濡れて見える。
「泣かんとこう、と思ったんですけどね(笑)。僕よりも、実際にプレーしている選手の方が悔しいだろうと思ったし……」
試合に負けて泣いたのは「初めてですね」と金澤は言った。