今シーズンでスーパーラグビーを離脱したヒトコムサンウルブズ(以下、サンウルブズ)が8日、秩父宮ラグビー場でメモリアルイベントを行った。初代キャプテンをつとめた堀江翔太や立川理道、リーチマイケル、田中史朗、稲垣啓太ら歴代メンバーや齊藤直人、中野将吾といったラストシーズンを戦ったメンバー、総勢17名が登場しトークを繰り広げた。イベント後、堀江翔太、大野均、齋藤直人が取材に応じた。
堀江翔太「若い人たちはとにかく海外へ挑戦してほしい」
――サンウルブズでどういうところで成長したと思うか。
僕自身海外に行って、2011年にオタゴに行って何かしらそういうところで外国人選手と戦わないと強くなれないと思っていた。サンウルブズで、どの選手かは忘れたけど、「海外の選手と試合するのが普通になってきた」と言っていた。
サンウルブズで高いレベルでやり続けてきたことが良かったと思う。強い相手がたくさんいてやれた。2016年に、キャプテンをやって、自分としてはきつい状況だったけど、チームとして成長していった。僕自身はもともと海外慣れていたので、フィジカルを勉強というより、トレーニングとしてやり続けるという意味でやっていた。
――去年のワールドカップで「ワンチーム」と言われ、今日、ヒトコム社長も行っていたが、外国人と日本人のコミュニケーションの土台をサンウルブズで築いたのではないか。
日本のチームは、海外の選手とひとつになる。もともと日本人は得意だったと思う。サンウルブズで培われたというよりかは、(もともと)得意だったのでサンウルブズがなかったとしてもできたと思う。ラグビーの部分の経験の方が大きい。逆に外国人選手の方が、日本を好きになったり、打ち解けていったんじゃないか。
日本人はそういうのは得意だと思う。高校、中学でやらされている協調性はもともと日本人は得意と思う。それに尊重し合う部分はお互い持っている。
一緒にいる時間が長ければ長いほどチームできやすい。サンウルブズももっと時間があればいいチームになったと思う。
――スーパーラグビー(SR)なくなる中で、海外の選手への慣れとかを磨く場はどうすべきか。選手考えることじゃないけど、希望は。
レベル高いリーグにどこか簡単に入れればいいけど、それができなければ自分で行ったりとかするのがベター。松島がフランス行ったように行けばいい。今、日本の価値が上がってきているぶん、海外に出やすくなっている。若いうちからチャレンジしてほしい。日本に残っている選手はトップリーグのレベルを下げないようにしないといけないけど、とりあえず海外にチャレンジして欲しい。
――2020年の活動は
全く何も関わっていない。代表としては。これから、2023年に向けては、とりあえずそんな強い思いはないけど、自分の能力はその時にはW杯ででも大丈夫なように体づくりはしていきたい。その際に選んでもらえたらいいかなという感じ。
今は自分の能力上げるためにメニューもらってやっている。いつ試合があるかわかっていないので、今はどれだけ自分のポテンシャル上げられるか。
大野均「世界の立ち位置を認識できた」
――サンウルブズが代表の躍進に貢献。実際にプレーして感じる一番寄与した部分
テストマッチレベルの試合をコンスタントにできるようになったこと。南アフリカへの移動や、南半球でのタフなツアーを高い強度でやったことで選手は鍛えられた。2016年に代表がスコットランドに接戦できたのもサンウルブズの経験が引き続き生きたのではないかと思っている。
――どういう部分が一番役立った
やっぱりメンタル。SR参戦前は年間に世界の強豪との対戦は限られていた。だから自分がどれだけできるのか不安を抱えながらのぞむ若い選手も多かった。それがSRで。世界の立ち位置を認識できたし、フィジカル、スピードを体感できました。
――若手(選手)も出てきている23年W杯に向けて、日本協会はどうやって環境を整えるべきか
去年まではW杯を日本でやるので、日本で経験したいと海外のチームがきたが。今は日本の躍進を見て、日本代表と試合をしたいと世界の強豪が手を上げるようになった。秋に8ネーションズ(シックスネーションズ+日本、フィジー)に参加するのも嬉しいニュースの一つではないでしょうか。世界からのオファーを日本代表の強化につなげていって欲しい。このコロナ禍の中でどれだけ海外に移動できるのかということもあるし、サンウルブズのようなチームを組んで、海外のクラブチームとの対戦も視野に入れることもありなのではないか。
――サンウルブズ最初の試合(ライオンズ)を一番の思い出に挙げた理由を詳しく教えてください。
サンウルブズにとってもだけど、自分自身にとっても初のSR 。テストマッチとは違う新鮮さがあった。それに、本当にこのチームが成功するのか否定的な意見も多かった。それを覆すには自分たちのパフォーマンスしかないとみんな思っていた。短い準備期間だったが、いいチームができていた。ライオンズ戦で2万人近いお客さんが入ってくれた。
あの時はがむしゃらだったが、今振り返るとライオンズには南アの優勝メンバーが多くいた。その相手に恥ずかしくない試合できていたので、サンウルブズが世界で戦えることができていたことを、今になって思う。
齋藤直人「まずは自分がおかれた立場で結果を残す」
――トップリーグ経験なくSR経験。トップリーグでどういうレベルの経験をしたいか。次のワールドカップにむけて松島幸太朗選手のフランスなど、自分も海外経験積みたいですか。
まだトップリーグでプレーしたことないのでその質問に答えることはできません。海外については、自分が成長できる環境に身をおきたいというのはあります。だがまだトップリーグも経験していない身なので、まずは置かれた立場でしっかり結果を残す。まずはサントリーで試合に出る。流さんという日本代表の9番がチームにいます。まず結果を残した上で考えたい。
――自分にどのような武器になったか。
これだけトップリーグも外国人選手が増えました。チームメイト含めて外国人選手の中でプレーできたことは、経験としてもそうですし、想定しても実戦に勝らないことなので、実践できたことが大きかった。
――ワールドカップ、ワンチームの難しさは。
いろんな、自分の知らないこと、他の文化を学ぶ過程でお互いを知ろうとするところがよかった。ラグビーだけでなく、知識としていろいろ知ることができた。
――サンウルブズからサントリーに戻ってどういうトレーニング、生活していますか。
中断してからリーグに戻れないと決まるまでは、いつ招集かかってもいいように、実家にはいたが、トレーニングはしていた。4月からが社員選手になったので、研修もありつつ、社業との両立が大変だったが、言い訳せずにやっていこうと思った。中止が決まったとしても目標は、日本を代表とする選手になりたいという気持ちを常に持ってやっていた。
――試合と離れる期間、焦りはあったか。
どの選手も同じ立場なので焦りは特にない。今できることにフォーカスするだけ。
――限られた試合数だったが、自信になったものや伸ばしたい部分を英語力以外で。
自信になったのは、アオテアロア、スーパーラグビー・オーストラリアを見ていると、ああいう選手たちを相手にして戦っていたと思うと自信につながると思う。チーム練習始まったら生かしていければ。足りない部分はありすぎてという感じだが、一番はフィジカル。体格差もあり同じフィジカルに持っていくのは不可能。そこをどう埋めるか、逆に今の体格などをどう活かすかを考える。
――試合数は限定的だったが、世界を実感したプレーはありましたか。
結構ありました。特にチーフスとレッズは先発させてもらった。チーフスのSHウェバーに不意に当たられて飛ばされた。体格差ないのに当たられた。彼はオールブラックスだが考え方を変えると、今の体格でもできることがわかった。未熟差を感じた反面、自分次第では(彼のような)フィジカルを身につけることができると感じたそれでもウェバーが抜けたシーンで少し追いつけたりもしたので、少し自信になった。やれるんだと。ディフェンスは怖いとかそういう感覚少しあったが、タックルに入れることもできました。
――今通用する、武器は?
戦えるのはフィットネスとキックとパスの精度。まだまだ伸ばさなければいけないけど、この強みをさらに強みにしていきたい。これからキック、パス状況に応じて出せるか、判断のところはもっとやらないといけない。そもそものスキルがないと遅れが出る。フィットネスもギリギリだと正確にプレーできないので、ひとつ一つのスキルも高めていきたい。
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