「すべてワールドカップのためにやっています」
五郎丸歩は、はっきりと言った。
7月中旬に長野県菅平で行われた日本代表スコッドの夏期強化合宿。昨年は、11月にオールブラックス戦という明確な大目標があった。今年の秋の対戦相手はマオリオールブラックス。相手がナショナルチームではないため、テストマッチにはカウントされない。オールブラックス戦からスコットランド戦と続くタフな秋を見据えていた昨年に比べると、メディアにもファンにも、何だかもうひとつ盛り上がらない感じが……。
菅平合宿で、そんなことを問うと、日本代表バイスキャプテンの五郎丸歩は一笑に付したのだった。
「合宿の最初のキャプテンスピーチでも、リーチから『春に10連勝したスタンダードを落とさないで、レベルアップしていこう』という言葉があって、チームの方向性を明確にしました。目の前にゲームがない合宿だと、確かに目標が見えなくて難しい面はあるけど、すべてワールドカップのためにやっていることですから」
この春、ワールドカップのアジア最終予選を勝ち抜き、日本代表は来年のイングランド大会出場を決めた。いくら出場が確実視されていても、公式に決めるまでは安心できないし、目標を切り替えるわけにもいかない。
だからこそ、この夏合宿は、明確に目標をワールドカップに切り替えるスタートとして重要な合宿だった。