希少資源の大学生を救え・第4章 | ラグビージャパン365

希少資源の大学生を救え・第4章

2013/08/02

文●大友信彦


「世界のトップ10入り」を目指すジャパンにとって、大学生世代をどう強化するか?はさらなる急務といえよう。2002年1月に発表された本著は、このテーマを議論する上で重要な意味を持つ大友信彦氏の警鐘である。待望の第4弾。

試合数の多さは選手の利益である

林雅人は昨季(2000年度)までフルタイムで慶大のヘッドコーチを務め、今季からは日本代表のテクニカル担当コーチに就任した。同時に(こちらを先に約束していたので)東京ガスのコーチも務めながら、慶大の指導も継続している。16年前からコンピュータを駆使して自チームと相手チームを分析してきた林は、大学、社会人、日本代表と、多くのレベルを横断した日本ラグビーの現在を知る数少ない指導者だ。その林に、大学ラグビー改革への意見を求めた。

「結論から言えば、僕はリーグの再編成は必要だと思います。スーパー12を見ても、1位と12位のチームが戦ったって100点ゲームにはならない。今、対抗戦グループは8チームで戦っていても100点ゲームが出てくる。これはお互いにメリットのないゲームですよ。何で対抗戦とリーグ戦が分かれてるのか、昔の経緯はあるんでしょうけど、再編成して総当たりにして、トライ数なども加味したポイント制でやっていくのがベストだと思う。

今のシステムだと、本当に勝負のかかる試合は年間に何度もできない。すると、そこではどうしても精神論に入ってしまって、負けても敗因は闘争心の欠如ということになる。最終的には精神論は必要なんですが、それまでの積み重ねがないままで精神論に入っていってもラグビー自体の進歩はないんですよ。勝てなかったのは技術が足りないんであって、技術が足りないのは練習が悪いということ。そうぃう部分をしっかりやってるチームが勝つシステムにならないと、大学ラグビーはレベルが上がらないと思います。

僕は、力の接近したチームが12チームずつなりでリーグを組んで、毎週試合をすればいいと思うんです。去年でいえば関東学院と慶応は対戦しなかったし、早稲田と法政、明治と大東もやっていないんですから、これはもったいないことですよ。日程も、1位から12位まで機械的にパーッと決めていいんじゃないか。できることなら社会人も引っくるめて、力の接近した試合をたくさん組めばいいと思いますね」

では林の指摘するポイント制で結果が変わるだろうか。スーパー12のように7点差以内の敗戦、および4トライ以上を挙げた試合に、ボーナス点を与えると、早大が6、帝京大が5、明大が4。優勝した慶大に対して唯一7点差の接戦を演じたことで、早大が順位を上げることになる。個々のチームの順位変動はさておき、ここで問われているのは「対抗戦全体を通じてどう戦ったか」と、「同率で並んだ相手とどう戦ったか」のどちらを評価するかだ。林は前者である。特定の試合に過剰な位置づけを与えないことで、シーズン全体を通じたパフォーマンスの優劣を判定しようという姿勢だ。ただしこの場合、グループ全体が実力の接近したチーム同士で構成される必要があるだろう。

 

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