1月27日、都内になるラグビーダイナー・ノーサイドクラブで「ノーサイドライブvol45・シーズン総括座談会」が開催。ラグビージャーナリストの村上晃一さん、ラグビー博士の小林深緑郎さん、Webマガジン「RUGBYJAPAN365」スーパーバイザーでスポーツライターの大友信彦さんの3氏が今シーズンを振り返った。最終回となる今回は、高校、そして大学ラグビーを振り返る!
進化する高校ラグビー・花園を制するためにはフィジカル強化は避けて通れないのか・・・。
村上 小林さん、高校で気になったところは
小林 高校は、神奈川県の桐蔭学園。フロントローがでかくて走れて、東福岡の藤田(雄一郎)監督は一番警戒していた。ところがその3人が、大阪桐蔭の選手とフィジカル勝負で当たって、50cm前に出られない。こんな高校生のチームが出来てきたら、もし大阪桐蔭が優勝していたら、来年の花園を制するチームはどんなチームになってしまうのかと。「あんな体を作らなくちゃ、ベスト8に行けない」なんてことになったら、ちょっとマズイかなと思いました。
村上 確かに、高校生、フィジカルすごくなりましたね。
小林 みんな練習後に、お米を食べさせているんですけど、急に体がでかくなったチームは2試合目になると走れなくなってしまうように見えました。
村上 桐蔭学園は初めはレギュラーメンバーを出場させてなくて、最後の準々決勝くらいから良いメンバーを出してきましたよね。本当はフレッシュのはずだったのに、大阪桐蔭に勝てなかったんですね。選手層が分厚くて、フィジカルが強いチームがベスト8に残るという傾向が強くなってきて、普通の部員数が少ないチームが勝ち進むのは大変になってきました。
大友 フィジカルとフィットネスとゲーム勘を重ねながら、いかに決勝に疲労をのこしていかないかということが大切になってきましたよね。桐蔭学園と大阪桐蔭の戦いは印象的でした。だけど「やっぱり桐蔭学園は自陣からぶつかりすぎだよな」、と思いました。ある程度、陣地を進めていかないと、一番強いプレーヤーを一番いいところで使うことが出来ないなということを思いました。
自分の能力を超人的に発揮して何とか解決していこう、というメンタリティーでプレーしているのが何人もいました。2015年ワールドカップでのリーチ(マイケル)のように何年かに一度の大勝負であれば、そういうメンタリティーを持っている選手が何人もいることがすごく大事だと思うのですが、中一日で戦っていく花園の試合でのそれは、感動したけれど、その一方で、それだけでは良くないかなと思いました。
村上 そんな中で、東海大仰星が優勝したのは個人的に嬉しかった。他のベスト4のチームは練習時間も短くて、効率的にやって、ちょっと大学生のチームづくりのようなことをやっています。仰星だけは相変わらず、中1から、高3までなが〜い練習をやっているんです。試合の前日でも3時間くらいやって、高3が中1に教えている、みたいな。ああいうのはすごくいいと思いますね。高校生を大人にするんですよね。そういうチームがずっと花園で勝っているということは、いいですね。
小林 東海大仰星は全クラブ員を同じ時間だけ試合に出場させるようにしてるんですよ。公式戦だけでなくて、練習試合もあわせて、女子マネが選手一人ひとりの出場時間を記録していて、花園までに全選手を同じ時間だけ試合に出場させる。土井(崇司)監督の時からやってることで、土井監督は「部員は同じだけ、部費を払っているんだから、同じだけ試合に出させてやるんや」と言っていました。
村上 美談なのか、なんかわからないですね。
小林 そういっているだけかもしれないですけど(仰星の)チームの作り方は他のチームとは少し違っていて面白い。
大友 桐蔭学園の藤原(秀之)監督も大会が増えていって、「トップの選手だけ、一年中ラグビーをやっているけど、その下の選手たちが試合できないことがないように、大会によってはメンバーを入れ替えながら出場させたりしている」と言われていましたね。花園でもまさにそうだったわけで。
村上 高校の監督は教育者でもあるので、色々と考えていますよね。