誠実な若者だ、と思った。
福岡堅樹のことだ。
6月17日、パシフィックネーションズカップの北米遠征から前日夕刻に帰国したばかりのラグビー日本代表は、21日のイタリア戦に向けて始動した。午前10時から1時間あまり、秩父宮ラグビー場の芝の上で、軽いジョッグ程度のスピードでチームのアタックを確認する「ウォークスルー」。
そのあと、ウエイトトレーニングを終えて、選手たちは宿舎へ帰るバスへ向かう。荷物を持ってバスへ歩を進める福岡堅樹に、おそるおそる、記者たちが歩み寄った。
日本代表にとって史上初の北米大陸テストシリーズ連勝、そしてテストマッチ9連勝。明るい話題で終わった14日のアメリカ戦で、チームの快勝ムードからひとり取り残されていたのが福岡堅樹だった。