「めちゃめちゃ怒られましたね」大野均は苦笑した。
11月15日、英国ウェールズ北部の町コルウィンベイで行われた日本代表とロシア代表のテストマッチ。40-13のスコアで圧勝し、欧州遠征3戦目での初勝利をあげた日本代表だったが、ピッチを引き上げる選手の表情に、喜びは窺えなかった。
見えたのは、遠征初勝利への僅かな安堵と、まだまだだな、という深い反省だ。IRB世界ランキングでいえば日本は14位でロシアは19位。しかし前半は13-13という接戦。後半、偶発的にでも先に失点すれば、一気に流れを失う危険性さえ感じられた。
試合はどう控えめに見ても、最初からずっと、日本が掌握していた。
昨年のエディHC就任以来日本代表が目指しているアタック・シェイプは、細かいパスを多用して、相手ディフェンスに的を絞らせない状況を作り、それを連続することで決定機を作り出す思想だ。しかしこの夜のジャパンは、何度もトライ寸前の形を作りながら、あとひとつのフェイズを作ることを我慢しきれずにトライを取り急ぎ、フィフティフィフティのパスを放っては落球し、あるいは相手にパスをカットされ、トライを逸していた。