11月22日、秩父宮ラグビー場では関東大学リーグ戦・東海大学と流通経済大学の一戦が行われた。両チームともに6戦全勝で迎えた「全勝対決」。勝利した方がリーグ戦優勝となる大一番とあって試合前から緊張感がスタジアム全体に広がっていた。
先制したのは流経大。7人制日本代表・CTB合谷和弘(4年)が敵陣10m手前から東海大陣内ディフェンスの裏へ蹴りこんだボール。ディフェンスのワンタッチがあり、流経大ボールのラインアウトとなる。このチャンスを流経大は確実にものにして、7分、CTBテアウパ・シオネが先制のトライ。SO東郷太朗丸(3年)のコンバージョンも決まり7−0とする。
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東海大FB野口竜司の突進を止める7人制日本代表、流経大CTB合谷
「最後の最後まで詰め切れなかった(木村季由監督・東海大)」がいうように、東海大はスクラム、ラインアウトで流経大を上回り、試合を優位に進めるもゴール前の攻防でトライを取り切ることができない。
19分、敵陣10m手前の相手ボールのスクラムを東海大がプッシュして、ペナルティーを誘発しPKを獲得。ゴール前でのラインアウトモールから残り数mの場所でラックをつくり、SH湯本睦(3年)がラックの右横から抜け出しトライ。SO野口大輔(4年)のコンバージョンも決まり7−7と同点に追いついた。
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スクラム・ラインアウトのセットプレーは東海大が圧倒した
さらに28分、流経大のペナルティーから再びゴール前で東海大ボールのラインアウト。ここでは得意のモールで押し込みHO津田将(4年)がボールをインゴールへグラウディングしトライ。14−7と東海大が逆転する。
流経大もすぐさま反撃に転ずる。33分、敵陣10m付近のラインアウトからFB桑江健一郎(3年)、東郷、シオネの3人で一気にゴール前までボールを運ぶと、FWで押し込む最後はPR陣野原涼(3年)がトライを決め14−14と同点とする。
東海大も前半ロスタイムに絶好のチャンスを迎える。22m内側のラインアウトからNO8アタアタ・モエアキオラ(1年)がブレイク。ゴール前でポイントを作り、LO橋本皓(4年)がトライしたかに思われたがダブルモーションでトライを決めることができず14−14の同点で前半を終える
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この日4度のゴールキックをすべて成功させた流経大SO東郷は、リーグ戦得点王を獲得した
後半5分、東海大がPGを決め17−14と均衡を破るも、直後の9分、流経大も敵陣10mのマイボールスクラムから右サイドに展開すると、東郷、合谷、シオネとつながり、シオネが相手を引きつけて、シオネから大外のWTB八文字雅和(4年)へラストパス。八文字が走りきり右隅にトライ。難しい角度からのコンバージョンも東郷がしっかりと決めて21−17と流経大が再び逆転する。
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流経大No8リサレの突進を止める東海大CTB鹿尾
しかし直後の11分、流経大CTBテアウパ・シオネ(4年)がレッドカードで一発退場となり流経大が残り30分あまりを14人で戦うことになった。この数的優位を活かしたい東海大はゴール前のスクラムで流経大にプレッシャーをかける。14分から4回スクラムを優位にくみ流経大のペナルティーを誘発。さらに東海大はスクラムを選択する。「相手の顔を見たら、こちらの方が精神的に優位だと思いスクラムにこだわりました」(藤田貴大キャプテン・東海大)。さらにスクラムを組み、20分、東海大がペナルティートライで24−21で逆転する。
流経大も粘りを見せる。LO加藤優来(4年)を下げて、タウムア・ナエアタ(2年)を投入する。この投入がすぐさま功を奏す。1人少ないことを感じさせない攻撃で合谷のキックオフレシーブからFL鶴田大成(2年)、FL廣瀬直幸(3年)とつなぎハーフウェイ付近へボールを運ぶと、東郷が東海の隙をついて大きくゲイン。一気にボールを22m陣内まで運ぶと、ナエアタがピックアンドゴーで更に前進。12フェーズ目にSH櫻井大志(4年)が自らボールを持ち込み28−24と流経大が逆転。「14人になって逆にチームとしてひとつになれた」(加藤優来キャプテン・流経大)
さらに31分、東海大のミスからゴール前マイボールスクラムとなった流経大はFB桑江健一郎(3年)がドロップゴールを決めて31−24とリードを広げた。
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東海大SO野口大輔は6度のゴールキックをすべて成功させ勝利に貢献した。
東海大は36分、敵陣10m付近のラインアウトから、BKに展開し22m中央までボールを運ぶとFWでゴール前に迫った。40分、流経大のペナルティーでゴール前ラインアウトの東海はモールをつくると再びFWで押し込み、最後はNO8アタアタ・モエアキオラ(1年)がトライ。野口のコンバージョンも決まり土壇場で東海大が31−31と同点に追いついた。
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東海大ロスタイムの猛攻。No8アタアタが突進する。
ロスタイムは3分と放送され、流経大のキックオフでゲームがリスタート。しっかりとボールキープした東海大はそこからフェーズを重ね流経大ゴールに迫った。ペネルティーを犯せない流経大は慎重なディフェンスにならざるを得ず、東海大に差し込まれてしまう。自陣10mから続いたフェイズは32。ついに33フェイズ目、LO橋本がゴールポストにトライ。SO野口大輔のコンバージョンも決まり38−31でノーサイド。東海大学が3年ぶり6度目のリーグ戦全勝優勝を決めた。
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47分まで続いたロスタイムの攻防で逆転トライ。喜ぶ東海大と倒れる流経大
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3年ぶりの優勝で胴上げされる東海大の木村監督
木村季由監督・東海大
「ここまでもつれる展開になるのは予想していました。ゲームそのものはコントロール出来なかった部分があり詰め切れなかった。今日は耐えながら試合を展開しました。(逆転トライは)何フェイズだったのか正直わかりませんが、トライを取りきれた部分はチームが成長した部分だと思います。(大学選手権は)大きな目標です。この1年自分たちのターゲットになっていることは間違いない。足りないところはクウォリティの部分。選手権までにあげていかなければならない。」
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表彰状を受け取る東海大の藤田貴大主将
藤田貴大キャプテン・東海大
「流経大戦に向けて、春から取り組んできたセットプレーのところを出しきろうと思って臨みました。浮足立ってしまった部分があり、自分たちのリズムに持ち込むことができなかった。ただ、最後に勝ち切れたという部分を糧に、まだ選手権まで時間があるのでもう一度チーム内での競争を厳しくして一つ一つのプレーの精度にこだわって、選手権一回戦では課題を修正して臨みたい。」
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優勝を飾り喜ぶ東海大フィフティーン
(日本代表であり、大学の先輩でもある、リーチ マイケル、木津武士、三上正貴の活躍を見て)翌日に練習があったので、南ア戦は前半だけ見ようと思っていました。しかし前半を終えた時点で、これは最後まで見なくてだめだと思いました。後半、リーチ選手がスクラムを選択した時、自分たちも目指す部分はそこだと感じました。日本代表が南アフリカに勝利することが出来たように、自分たちが帝京大学を倒すことも不可能ではないと勇気をもらいました」
関東大学リーグ戦2015・最終成績
1位 東海大学 (7勝)
2位 流通経済大学 (6勝1敗)
3位 中央大学 (5勝2敗)
4位 大東文化大学 (4勝3敗)
以上、大学選手権セカンドステージに出場
5位 法政大学 (3勝4敗)
*法政大学はファーストステージに関東代表として出場する
6位 拓殖大学 (2勝5敗)
7位 専修大学 (1勝6敗)
8位 山梨学院大学 (7敗)