サクラセブンズ歴代最高位の3位入賞!ワールドシリーズ・ドバイ大会 | ラグビージャパン365

サクラセブンズ歴代最高位の3位入賞!ワールドシリーズ・ドバイ大会

2025/12/01

文●大友信彦


サクラセブンズこと女子7人制日本代表がHSBC SVNS2025-26第1戦ドバイ大会ブロンズファイナルでフィジーを22-12で破り3位に入賞。昨季バンクーバー大会の4位を上回るワールドシリーズ最高位を更新した。

セブンズワールドシリーズは今季から3部制に改編。トップカテゴリーのSVNS1は従来の12か国から8か国に絞り込まれ、DAY1のプール戦は4カ国×2組で行われることになった。昨季までは4カ国×3組でプール戦が行われ、各プール2位まで+プール3位のうち2カ国が8強進出。「3位の上位」で8強入りすることが多かった日本にとっては過酷と思われたが、サクラセブンズはそのフォーマットに臆することなく果敢に挑んだ。

vsオーストラリア 7-31

サクラセブンズはプール初戦でオーストラリアと対戦。立ち上がりに2トライを奪われたが、前半ロスタイムに、今大会で主将に抜擢された矢崎桜子がハーフウェー付近からステップで抜け出し約50mを独走するトライを返し、7-12で折り返す。

後半、1トライを返された後、相手キックオフを捕った松田向日葵から梶木真凜につなぎ、鮮やかな55m独走トライ!と思ったらグラウンディングの際にボールがわずかに手から離れていたことをチェックされノートライに。逆にオーストラリアはそこから⑩ナサーが90m独走トライを返し、さらに1トライ。日本は7-31で敗れた。

矢崎桜子

矢崎桜子


vs英国 36-5

初戦を落としたサクラセブンズだったが、続く英国戦ではみごとな戦いを見せる。相手キックオフを捕ると自陣からアタック。内海春菜子―松田向日葵―水谷咲良とつないでハーフウェーまで戻し、矢崎桜子が作ったラックをクイックでリサイクルすると平野優芽―堤ほの花とつないでノーホイッスルトライ。

堤ほの花

堤ほの花


これで波に乗ったサクラセブンズは次のキックオフからPKを得ると速攻に出て堤―内海―堤のパス交換で(英語のコメンタリーが発音に苦労していた…)堤が連続トライ。さらに松田向日葵、水谷咲良がトライを加え、22-0と大きくリードして折り返すと、後半も3分に初キャップの山田晴楽のビッグゲインから、5分に大内田夏月のビッグゲインから、須田倫代が連続トライ。36-0までリードを広げる。残り0分、英国のグリーンウェイにトライを許したが、36-5で快勝した。

大内田夏月

大内田夏月


山田晴楽

山田晴楽


三枝千晃

三枝千晃

vsカナダ 21-19

そして迎えたプール最終戦は昨年総合3位(年間ポイント4位)のカナダが相手。カナダは英国を41-5で破り、オーストラリアに17-24で敗れて1勝1敗。互いに、勝てばプール2位で準決勝進出が決まるという1戦は、開始直後からカナダが日本ゴールに迫り猛攻に出るが、日本は粘り強いディフェンスで防戦。ダブルタックルして全員がすぐに起き上がり数的優位を許さないディフェンスでカナダにリズムを作らせない。

それでもカナダは5分、日本のロングキックに長く戻ったチャリティ・ウィリアムズ(太陽生命シリーズでは東京山九フェニックスでプレー!)が反転して約60mを走り切って先制トライ。カナダは続く6分にもトライを加え12-0とリードを広げる。それでも日本は前半のラストプレーで須田倫代のブレイクから大谷芽生がトライ。7-12と追い上げて折り返す。

須田倫代

須田倫代

後半もカナダが先に点を取った。キックオフ直後、これが初キャップの19歳スティーブンソンが強烈なハンドオフで日本DFを突破してトライ。カナダが19-7とリードを広げる。12点差をつけられ厳しくなった日本だが、細かいパス、ループ、リターンを多用してDFの的を絞らせない『忍者ラグビー』を徹底して遂行。それが試合のラスト2分間に結実した。残り2分、梶木真凜からのパスで相手DFを外した松田向日葵が相手陣22m線までビッグゲインし、相手タックルにつかまったところでサポートの平野優芽につないでトライ。

大谷芽生

大谷芽生

5点差に追い上げると、次のキックオフを捕ったカナダのパスをインターセプト。内海春菜子とクロスして入った大谷芽生がゴールポスト真下にトライして同点。平野優芽がコンバージョンを蹴り込み、21-19と逆転。残り時間ゼロのキックオフを内海が巧みにタッチライン際に落とし、ボールは転がり出て試合終了。日本が劇的な逆転勝ちで4強入りを決めた。

4強入りを決め喜ぶサクラセブンズ

4強入りを決め喜ぶサクラセブンズ

vsニュージーランド 5-31

そして迎えたDAY2。準決勝の相手はニュージーランド。シーズン初戦の調整不足があるのかDAY1はアメリカに17-21で敗れるなど、日本にもチャンスがあるかと期待された。
日本は開始直後、相手キックオフを捕った三枝千晃のアタックから梶木真凜―矢崎桜子でブレイク。ビッグチャンスになりかけたが、堤ほの花へのパスが乱れて先制機を逃す。

矢崎桜子

矢崎桜子

その後も日本は細かいパスを多用してNZのDF網に挑むが、さすがは前年チャンピオン、日本がチャンスを作りかけても個々の反応の鋭さで対応し、得点を許さない。日本はDFに回っても粘り強くNZの攻撃を食い止めていたが、NZは4分に④ポールが先制トライ。7分にはワールドラグビーアワード2025のセブンズプレイヤーオブザイヤーを受賞した②ミラーがトライ。14-0として折り返したNZは後半も3トライを奪い31-0と大きくリードする。
それでも日本は残り0分、梶木―堤―松田とつないで相手トライラインに迫り、NZはデリバレートノックオン。このPKでスクラムを選択した日本は、エース堤ほの花がワールドシリーズ通算30号となるトライ。5-31と完封を逃れて試合を終えた。

vsフィジー(ブロンズファイナル)22-12

そして迎えたドバイの最終戦、ブロンズファイナルはフィジーが相手。初めて4強に進んだ今年2月のバンクーバー大会では準決勝で対戦し、7-28で敗れた難敵だ。

しかしこの日のサクラセブンズは徹底したアタックでフィジーを翻弄した。開始直後には松田向日葵のビッグゲインで攻め込み、ショートパス、ループ、アングルチェンジと多彩なつなぎをみせてフィジーDFを攪乱し、3分、永田花菜―内海春菜子―とつないでゴール前に迫ると、内海からのパスを足にかけた水谷咲良が右中間に先制トライ。

水谷咲良

水谷咲良


直後のキックオフからフィジーの大型選手ラリバナワに独走トライを返され5-7と逆転されるが、次の相手キックオフから永田花菜が巧みなアングルチェンジで抜け出し85m独走トライ。さらにタイムアップ寸前には目まぐるしくパスをつないで矢崎桜子主将がトライ。17-7とリードして前半を終えた。

後半1分の時点で表示されたスタッツでは、パス回数が日本の45に対しフィジーはわずか1。圧倒的にボールを支配していただけでなく、果敢にボールを動かし続けたこと、そしてハンドリングエラーが少なかったことが数字にも表れていた。サポート選手が次々に湧き出し、予想もしないところから現れては目まぐるしくパスを繋ぎ続ける日本の『忍者アタック』は、ドバイのスタジアム「ザ・セブンズ」の観客も魅了。日本がボールを動かすたびに大きな歓声があがった。

とはいえフィジーもセブンズ王国だ。9分、再びラリバナワがトライを返し17-12と5点差に迫ると、次のキックオフから日本陣深くに侵入。トライを許せば同点に追いつかれる日本だったが、自陣でも正確なパスワークでボールをつなぎ続け、5分、須田のラックから堤―平野―梶木―内海―堤とつないだところで後方から走り込んだ大谷芽生がクリーンブレイク。猛追するフィジーDFを振り切って50mを走り切り左中間にトライ。22-12として勝利を決めた。


セブンズワールドシリーズにおける日本の最高順位は昨季のバンクーバー大会で女子が記録した4位。男子の世界大会最高順位も2016年リオ五輪の4位だった。15人制ワールドカップでは男子が2019年の8強、女子はまだ8強入りを果たしていないので、今回のサクラセブンズはセブンズ/15人制を通じて男女シニア大会の最高順位を更新したことになる。
サクラセブンズが掲げる目標は2028年ロサンゼルス五輪での金メダル獲得。今回の銅メダルは、サクラセブンズがその目標を射程圏にとらえた証といえそうだ。

表彰を受けるサクラセブンズ

表彰を受けるサクラセブンズ

史上最高位を更新したサクラセブンズはこのあと南アフリカに転戦。12月6-7日の第2戦・ケープタウン大会に挑む。目指すは初のファイナル進出、そして頂点へのチャレンジだ。たやすく到達できない困難な目標だが、不可能ではない。

ドバイ大会日本代表登録メンバー(背番号/氏名/年齢/所属/大会前のセブンズキャップ数)


1 三枝 千晃 28 北海道バーバリアンズディアナ (32c)
2 堤 ほの花 28 日体大女子 (36c)
3 梶木 真凜 26 自衛隊体育学校PTS (31c)
4 内海春菜子 25 横浜TKM (20c)
5 大谷 芽生 25 ながとブルーエンジェルス (32c)
6 永田 花菜 25 ナナイロプリズム福岡 (33c)
9 松田向日葵 21 追手門学院VENUS (6c)
11 平野 優芽 25 ながとブルーエンジェルス (48c)
13 大内田夏月 23 パールズ (1c)
14 須田 倫代 22 パールズ (21c)
15 水谷 咲良 21 東京山九フェニックス (22c)
16 矢崎 桜子 21 横河武蔵野アルテミ・スターズ (8c)※主将
20 山田 晴楽 21 アルカス熊谷 (0c)
ツアーメンバー
 吉野舞祐 24 ナナイロプリズム福岡 (23)

日本協会を通じて発表された各選手のコメントは以下の通り。

内海 春菜子

内海春菜子

内海春菜子


「日頃よりサクラセブンズの応援ありがとうございます。最終戦を勝ちきり3位という結果でメダルを取れてとても嬉しいです。チームをとても誇りに思います。またこれまでのサクラセブンズを繋いでくださった方々にも感謝の気持ちでいっぱいです。この先もチーム、個人共に成長を止めることなく目の前の勝負にこだわっていきたいです。日本時間遅い中たくさんの応援ありがとうございました」

大谷 芽生

大谷芽生

大谷芽生


「時差のある中、たくさんの応援をありがとうございました。私が代表でプレーし始めてから、今回のメダルを獲得するまでに本当に時間がかかりましたし、メダルを獲得することは簡単ではありませんでしたが、どれだけ結果が出なくても応援し続けてくださった方、そして同じ目標に向かって共に戦ってきた仲間に、このような形で報告できることを本当に嬉しく思います。金メダルを獲得するために、今回大差で敗れたニュージーランド、オーストラリアの壁を越えなければならないので、今回の結果を自信にし、自分たちらしいラグビーをより高め続けていきたいと思います。そして1週間後のケープタウン大会に向けて、チーム全員でしっかりと準備をしていきたいと思います。今後も応援よろしくお願いいたします」

大内田 夏月

大内田夏月

大内田夏月


「サクラセブンズへの沢山の応援ありがとうございました。今回、ワールドシリーズ開幕戦のドバイ大会で3位という結果を残すことができました。チーム全員でつかみ取った、歴史的な結果をとても誇りに思います。国内合宿から積み重ねてきたことを、世界の舞台でしっかり体現できた大会でもありました。ここから続く8大会では、さらに上を目指して挑み続けます。今後ともサクラセブンズへの温かい応援をよろしくお願いします」

梶木 真凜

梶木真凜

梶木真凜


「いつも応援いただきありがとうございます。今シーズン最初の大会で過去最高位の3位を取ることができ、とても嬉しく思います。1人1人が攻守共にテーマである『ダブル』を体現し、最後まで戦い続けた結果だと思います。来週末のケープタウン大会でも良い順位を取れるようもう一度気を引き締めて頑張ります。引き続きサクラセブンズの応援をどうぞよろしくお願いいたします」

須田 倫代

須田倫代

須田倫代


「いつもサクラセブンズを応援していただきありがとうございます。タフな試合が続きましたが、14分間14人全員で戦い抜き、3位になれたこと、大変嬉しく思います。続くケープタウン大会ではさらに上を目指せるよう、個人としてもチームとしてもチャレンジし続けたいと思います。今後ともサクラセブンズの応援をよろしくお願いします」

堤 ほの花

堤ほの花

堤ほの花


「いつもサクラセブンズへの温かいご声援をありがとうございます。今シーズン初戦となる大会で3位という初の快挙を達成でき嬉しく思うとともに、これまで共に戦ってきた仲間を心から誇りに思います。今大会では、新たな挑戦に取り組みながら、これまで積み重ねてきたことをしっかり体現した結果が、サクラセブンズらしいラグビーと今回の成績につながったと感じています。より成長したサクラセブンズの姿をお見せできるよう、チーム一丸となって挑戦し続けます。今後ともサクラセブンズへの声援をよろしくお願いいたします。本当にたくさんの応援ありがとうございました」

永田 花菜

永田花菜

永田花菜


「サクラセブンズへの応援、本当にありがとうございました。プール戦から14人全員がチームのためにハードワークし、今シーズンのワールドシリーズ開幕戦で、初のメダルを獲得することができました。メダル獲得という目標が遠く感じる時期もありましたが、これまで共に戦ってきた仲間、そして変わらず応援し続けてくれる家族のおかげでチャレンジを続け、このような結果につなげることができました。心から感謝しています。これからはケープタウン大会に向けて、より上位を狙い、さらに高みを目指せるよう、しっかりとコンディションを整え、チーム全員でいい準備をしていきます。これからも応援よろしくお願いいたします」

平野 優芽

平野優芽

平野優芽


「今シーズンの開幕戦ドバイ大会で3位という結果を残すことができ、とても嬉しく思います。世界でメダルを獲得するまでに本当に長い時間がかかりました。デビューした時には夢のように感じたメダル獲得でしたが、多くの方々のお陰で達成できたと思います。これまでサクラセブンズに関わった全ての方々の頑張りと多くの支えに感謝します。これからも誇りに思ってもらえるような結果・チームになれるよう精進していきます。引き続きご声援のほどよろしくお願いします」

松田 向日葵

松田向日葵

松田向日葵


「今回、史上初となるメダルを獲得することができとても嬉しく思います。まずは、このチームでともに戦ってくれた仲間、そして支えてくださるスタッフの皆さんに心から感謝しています。誰一人欠けても辿り着くことのできなかった結果であり、このチームの一員として戦えたことを誇りに思います。たくさんの応援、本当にありがとうございました」

水谷 咲良

水谷咲良

水谷咲良


「サクラセブンズへのたくさんの応援ありがとうございます!今大会3位という史上最高位で終えられたことを大変嬉しく思います。どの試合も14人全員で最後まで走り続けサクラセブンズのラグビーを体現することができたと思います。次のケープタウン大会でもさらにレベルアップしたサクラセブンズをお見せできるよう頑張ります!これからも応援よろしくお願いいたします」

矢崎 桜子

矢崎桜子

矢崎桜子


「サクラセブンズへたくさんの応援をいただき、本当にありがとうございました。最高順位となるベスト3に入ることができ、とても嬉しく思っています。この結果は、これまでサクラセブンズの歴史を築いてくださった全ての選手やスタッフのおかげだと思います。次のケープタウン大会でも、皆さまをワクワクさせるサクラセブンズのラグビーをお見せできるよう、チーム一丸となってチャレンジし続けます。今後ともサクラセブンズへの応援をよろしくお願いいたします」

吉野 舞祐

吉野舞祐

吉野舞祐


「いつもサクラセブンズの応援ありがとうございます。これまでサクラセブンズを繋いでくれた全ての方々に感謝するとともに、大会を通してハードワークし続け、新しい歴史を作ってくれたチーム全員のことを誇りに思います。これからも大会は続いていくので、引き続き応援のほどよろしくお願いいたします」

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。ラグビーマガジンなどにも執筆。

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