26日、ラグビー日本代表は「アサヒスーパードライ・パシフィック・ネーションズカップ2024」カナダ代表とのテストマッチに挑み、序盤で5トライを決め試合を圧倒するも、後半自分たちのペナルティから相手の息を吹き返されると3トライを献上。55-28とエディージャパンとしては初のテストマッチ勝利を収めたが、後半の内容には課題が残った。
2024/08/26
文●編集部
怒涛の前半!超速ラグビーでカナダを圧倒
4分、初キャップのマロ・ツイタマのトライで先制すると直後のキックオフボールをフェアキャッチして敵陣へフリーキック。ディフェンスのラインスピードをあげてカナダにプレッシャーをかけるとたまらずペナルティ。敵陣深くに入るとWTB矢崎由高が裏に抜け出し、ボールを前進させると、ゴール前のフェイズアタックからLOワーナー・ディアンズがトライを決め14-0とリードを広げた。
22分には、この試合後は所属する早稲田大学へ戻るとされている、FB矢崎由高のゲインからFL下川甲嗣がトライ。26分にはSO李承信がPGを決め24-0とリードを広げると、28分には、敵陣10m付近のラックからLOディアンズがピックゴーで前方のスペースにボールを運び、そのままトライ。TMO判定にかけられるがトライが認められて31-0と前半で30点台にスコアを乗せた。
極めつけはその直後のキックオフ。この試合で初キャップを果たしたCTBニコラス・マクカランのブレイクから、CTBディラン・ライリーがトライ。38-0と大きくリード。前半の終盤、疲れからボールが手につかないジャパンはルーズボールをいかされてカナダWTBアンドリューにトライを許し、38-7で前半を終えた。
後半の入り、43分にジャパンは下川甲嗣のブレイクから一気にゴールライン際までボールを運ぶとサポートに入った李承信が体をスピンさせながらトライ。エディーHCは45-14となったところでフロントロー3人を交代。直後のマイボールスクラムでペナルティを取られてしまう。前半に比べ、接点の部分でペナルティを取られ苦労するジャパン。すると50分にカナダCTBにトライを取られて45-21とスコアを縮められ、場内の雰囲気も変わってくる。
53分、ツイタマ、マクカランに続き3人目の初キャップである、アイザイア・マプスアもここでピッチに入った。さらに63分、立川理道キャプテンがピッチに入り、10番李承信との交代だった。悪い流れを断ち切りたいジャパンは、68分、WTB長田智希の仕掛けから、ジョネ・ナイカブラがビッグゲイン。自陣10m付近でボールをもったジョネはそのまま相手ディフェンダーを交わしトライ。50点の大台にした。
それでも試合終了間際にカナダにもう1トライを決められ、カナダのラストプレー、無茶なロングパスに対して長田智希がパスインターセプトを決めトライ。55-28でジャパンが勝利を果たした。
プールBは翌週にアメリカとカナダが対戦。ジャパンは2週明けした7日に熊谷でアメリカ代表と対戦。勝利すればプールB1位通過が決まり、9月15日にプールAの2位と準決勝を戦う。さらに勝利するとプールA1位とプールB2位の勝者と21日に花園ラグビー場で決勝戦を戦う。
エディー・ジョーンズHC
まずは我々としてはこの試合で挑むにあたり、カナダ代表とカナダで対戦した場合、カナダ代表と日本で対戦したときの勝率を話すことから始めた。ここには40%の勝率の差があり、どういう理由があったのかと選手全員から突き止めるところから始めた。
最終的にはいかにフィジカル面が大切か、いかにボールを動かし続けることが大事がという話になった。前半に関しては、我々が目指すラグビーができていた面が多かった。
フィジカル面もボールも動かし続けられた。しかしながら、若いチームにありがちな面ですが、前のめりになりすぎるシーンがあり、もっともっと、という気持ちが先に出てしまい、ボールがコントロールできないシーンが特に後半多くあった。
後半はフィジカリティー、プレーの精度が落ちてしまったが、バンクーバーで歴史的な勝利が収められたと自負していますし、結果的に良かったと思います
――今年、指揮官に再任し、テストマッチで初勝利を挙げられた意味は?
我々は常にハードワーク続けていますし、「超速ラグビー」のコンセプトを体現しようとすると、どうしても結果をともわないと信条がぼやけてしまうときがあるが、今回の結果をもって、スタイルを強調して、精査して、ベターになっていきたいと思います。
ーーどのくらい超速ラグビーができたか?
ハル(立川)が言っていたことに追加させてください。前半は集団的なスピードでプレーできていた。集団的なスピードで世界一になれる部分だし、日本人に合っているスタイルだし、2015年、2019年といったこれまでの歴史を鑑みても良いプレーができると思います。
前半はそういったところが上手くいっていたところを見せられたと思います。集団的にプレーするためには、パスごとにコミュニケーション、パスごとにランラインも精査していかないといけないというところが課題になります。前半は上手くいったが、後半は少し右肩下がりで停滞してしまった。もちろん、これを80分やり続けることが目標だが、しばらくは難しいかもしれない。プレイヤーごとの関係性を密なものにしないといけないし、連携も深めていかないといけない。
――ペナルティーの多さが特に後半、気になったが 特に後半
おっしゃっている通りだと思います。後半、フィニッシャー陣が入ってきたとき、大きな得点差で勝っている場合、簡単なことをしがちになってしまう。
ランしたい、パスをしたい、スペースにどんどん入り込んでいきたいといったようなところがあったのかな。しかしながらテストラグビーでは基礎的なことを丁寧にやり続けないといけない。
後半、ディフェンス面でできてなかった場面があり、プレッシャー時にペナルティーをしてしまった。今後、若手のチームにとっても良い学びになったと思いますし、修正していかないといけない。
――PNCの間で組織力を上げていきたい?
そういったところの一貫性が大きな課題だと捉えています。どうしても試合中、興奮して盛り上がったり、失望したりすることはそれぞれの選手の状況判断に影響を及ぼすことは否めないと思います。前半、何とかパスを何とかつなげたいというシーン、例えば矢崎がラインブレイクした後、つまらないパスを投げてしまったことは、テストプレイヤーではやってはいけないところだが、若手はスキルを学んでいるところなので、そこは忍耐力が必要です。
私はプレイヤーを鼓舞し続けたいし、課題を見つけることができると思います。
大谷(翔平・メジャーリーガー)も若手のときはまだまだ何でも打ちたいという状況だったと思いますが、ただ大谷が現在のような偉大な選手になったのは、何をしっかり打つのか何を逃すのかが明確になったのだと思います。大谷は30歳で、経験があります。我々は発展途上です。すごいね、大谷!
――矢崎が大谷のように変わっていく?
8年後!(笑)
――試合の途中から上手くいかなかったが、今後に向けてどうつなげていきたい
すべて学びのプロセスであると思っています。とてもプラスだと思ったのは、試合の序盤はスキル、スピードを使いながらしっかりプレーできていた。避けられない部分とは言い切れないが起こりえることだとして学びになるかなと思います。学びの一部だし、我々としてはいかに指導できるか、いかに選手が学んでいくことができるかが鍵になると思います。いいプレイヤーは残り続けると思いますし、それに満たない選手はどんどん脱落していくと思います。 野球でも(MLBから)3Aに落ちることと同じことだと思います。
――ランナーが孤立してジャッカルされるシーンが多いが。
考えないことを意識していきたい。ハルがキャリーで、自分がサポートに入るとなると、考えることなくサポートに入ることが大切だと思っています。選手にとってはまったく新しい形の癖付けを育成しているところです。
――カナダ代表の印象は?
ヘッドコーチのキングスリーとは親しくされていただいています。彼と話していても、カナダは始めたばかりで再建したばかりと言っています。前回W杯はあいにく出場できず、まだまだ若手のチームだそうです。先発の総キャップは日本代表が120、カナダは140で、まだまだ若いチームだと思います。前半、カナダとしてはジャパンに食い込まれたが、後半戦う姿勢を見せられた。個性、強みが見せられたのが今後のプラスだと思います。とても良いコーチングでプログラムがはじまったばかりだと思います。若い選手がこのまま良い育成を続ければ良いチームになると思います。
――初キャップのWTBツイタマの印象は?
左足のキックができ、ステップが得意なところを見ても、とても良いプレイヤーで、アイルランド代表のWTBローのような選手になると期待しています
――矢崎について
矢崎は早稲田大に戻ると思うがまだ確定していない。今後は山沢、李を15番のオプションとして考えています。(今後、学ばないといけないところは)スピードとパワーを今後、まだまだ伸ばさないといけない。取り組む姿勢は素晴らしいですが、ラインブレイクした後、サポートを探すスキルやスピードとパワーはまだまだ伸ばさないと行けない。基本的部分には良いものを持っているのでラグビー界の大谷になることに期待しています。
立川理道キャプテン
――どのくらい超速ラグビーでイメージするものができた?
すごく一人ひとりの役割が明確になっていたし、相手のフィジカリティーに対してスピードとスキルで前に出ていって自分たちのやりたいラグビーができていたかなと思います。後半は修正しないといけない部分があったと思うが、学びを活かして、次の試合では80分間を通してできるようにしたい。
――カナダ代表の印象は
フィジカルを前面に出してくるチームだったと思いますし、その中で、前半は日本代表がすごく上手く戦えたかなと思います。自分たちがペースとれないときは相手のフィジカルで止められたし、カナダの強みだし、しっかりと参加しながら分析した結果が今日の結果です。