2月22日、近鉄花園ラグビー場で行われた第52回ラグビー日本選手権準決勝の第二試合は今シーズンのトップリーグ覇者で2年連続2冠獲得を狙う王者パナソニックワイルドナイツとトップリーグ発足以来初のプレーオフ進出を逃したサントリーサンゴリアスが対戦した。
パナソニックは、SH田中史朗、WTB山田章仁がスーパーラグビー出場のためチームを離れ、チームの中心的役割のHO堀江翔太キャプテンが首のケガで出場しないのに対し、サントリーはケガから復帰したSHフーリー・デュプレアとSOトゥシ・ピシを中心に真骨頂であるアタッキングラグビーが試合を重ねるごとに精度を増してきている。
サントリーのキックオフでゲームがスタート。お互いに相手陣のスペースを狙ってせめぎ合うがスコアのないまま10分、サントリーが敵陣10m手前付近でPKを獲得。ここはショットを選択し、ピシがしっかりPGを決めて3−0と先制。パナソニックも14分、NO8ホラニ龍コリニアシのタックルから相手のペナルティを誘いPKを獲得。SOベリック・バーンズがPKを狙うがゴールポストわずか右に逸れてしまい失敗。

山田に代わり今シーズン2試合目の先発出場を果たした酒井。
20分、センターラインからやや敵陣に入ったところでホラニがブレイク。10mラインの内側までボールをキャリーすると、SH内田啓介がオープンサイドへ展開。バーンズ、CTB12林泰基とつながれ、林がギリギリまでボールを持ち、相手ディフェンスを引き付けながらFL西原忠佑にパス。さらに西原から大外のWTB酒井教全へ繋がれそのままトライ。7−3と逆転。
サントリーも28分にピシのPGで1点差とすると33分、敵陣でのラインアウトからモールをゆっくりと押してNO8竹本隼太郎からデュプレア、さらにピシ、ピシから走りこんできたWTB村田太志へ内側へ返すパスでポイントをずらしアタックを加速。デュプレアは再びピシへパス。22mライン手前でボールを持ったピシはステップを切ってまずはディフェンス2人をを交わすと空いたスペースを駆け抜け一気にゴールへ。そのままトライを決めサントリーが13−7と逆転した。
しかし王者パナソニックはすぐさま反撃に転じる。35分、WTB北川智規のブレイクからゴール前へボールをキャリーすると、密集でサントリーはオフザフィートのペナルティ。サントリー一瞬の隙をみてバーンズが大外に待機していたFL劉永男へキックパス。これが見事に成功し劉がそのままトライ。13−12として前半を折り返した。

ベリック・バーンズ
後半、お互い1本PGずつを上げ16−15とサントリーが1点リードして迎えた16分、パナソニックは敵陣22m内側の相手ボールスクラムをプッシュ。サントリーがコラプシングのペナルティをとられPKを獲得。バーンズがPGを難なく決めて15−13と再び逆転。ここでサントリーはPR畠山健介から垣永真之介、CTB中村亮士からニコラス・ライアンを投入して打開を図る。

サントリーラグビーの原動力となっているデュプレア
27分、ピシのPGでサントリーが16−15とリードして後半残り10分を迎える。サントリーは、デュプレア、ピシが疲労の見えてきたパナソニックに対し、深めのキックやハイパントを敵陣に蹴りこみアタックをさせてターンオーバーからチャンスをうかがう展開になる。すると29分、サントリーはターンオーバーしたボールを自陣から展開。松島がキックを蹴るかとフェイントを入れてブレイク。センターライン付近までボールを運ぶとBK陣にパス。村田が10mを超えてWTB長友泰憲へ、さらに長友から塚本そして再び長友へ繋がれゴールまで5m。

SHとして先発出場し、後半途中からWTBにスイッチしトライを決めた内田
まずは竹本でポイントをずらし、デュプレアはFL佐々木隆道を使ってさらにポイントを中央へずらすとHO青木佑輔がゴール中央付近でポイントをつくる。FL西川征克がプレッシャーをかけにきたバーンズを吹き飛ばすと青木がプレースしたボールを垣永がピックアンドゴー。相手の低いタックルを受けながらも強引にボールをインゴールへ。貴重な追加点がサントリーに入る。サントリーはこのタイミングでNo8にスカルク・バーガー、さらにSH日和佐篤を投入した。

この試合が現役最後の試合となった霜村
何とか反撃に繋げたいパナソニックだったが、脚が止まり密集へのサポートが遅れ自陣でボールを奪われると、34分、サントリーFB塚本健太にトライを決められ勝負あり。パナソニックは37分に途中からWTBに回った内田のトライを返すが31−25でサントリーがパナソニックに勝利し決勝進出を決めた。

サントリー・大久保監督と真壁キャプテン
サントリーサンゴリアス 大久保直弥監督
タフなゲームだったと思います。苦しい時間帯あったと思いますがキャプテンを中心に自分たちを見失わず戦ってくれたのが今日の勝因だと思います。来週、もう一度ゲームができるチャンスをもらえたので何とか勝って終われるように引き続き努力していきたいと思います。
サントリーサンゴリアス 真壁伸弥キャプテン
今週はチーム全体が『パナソニックに勝ちたい』という気持ちがあって本当にいい準備ができました。それが試合にしっかりと出ました。
−−今週で5週連続という疲労の中でこういう相手と試合をやるにあたりどういった調整を取られましたか
大久保 疲労に関しては、先週の神戸(製鋼)戦の後はかなり、特に80分出たメンバーは最初の3日間はリカバリーを中心に行っていました。S&C(ストレングスアンドコンディショニング)コーチ、トレーナーが練習が出来る、出来ない部分をしっかりと明確にしてくれているので計画してトレーニングが計算できました。
−−松島(幸太郎)のパフォーマンスはどうでしたか
大久保 どんどんマークが厳しくなっていく中でもゲームの流れを変えていける、前に出してくれる選手であり相手にとっては脅威になる選手ですね。スーパーラグビーへ向けて、チームとしては日本一になって彼を送り出したいなという思いを持っています。

この試合でも何度となくしなやかな動きでブレイクを見せた松島
−−トップリーグプレーオフ進出を逃した後、チームとして変更した事はありますか
大久保 とりわけ大きく変えたということはないですけども、必要でないものを削ってよりシンプルに、選手たちが迷いなくプレーできるようにというのはあります。特に自分たちのスタイルに大きく変化を変えたというよりは9番(デュプレア)、10番(ピシ)がゲームのコントロールという局面で彼らに良い選択肢をFWがどれだけ与えられるかという部分をチームとして共有しています。
真壁 もっとシンプルになったので迷いがなくなったのでプレーの精度が上がった。リーグ戦少し考えすぎたところがあったのかなと思っています。

決勝でもキープレーヤーとなるだろうピシ
−−清宮監督(サントリーOB)と日本一を争うことについて
大久保 クラブの中でも清宮監督に対するリスペクトはOBとしても高いですし、今年強いチームを作って来られてそのチームと日本一を争えるということについてはクラブとしても大きな意義があると思います。僕らとしては勝って恩返しできればと思っていますけど。
真壁 清宮さんが監督をやっている時に入団したのでしっかりとサントリーラグビー、成長したところを見せてしっかりと勝ちたいと思います。

パナソニック・ロビー・ディーンズ監督とホラニ龍コリニアシゲームキャプテン
パナソニックワイルドナイツ ロビー・ディーンズ監督
非常に残念な結果でしたが、選手たちはよく頑張ってくれましたし、選手たちのパフォーマンスを誇りに思います。サントリーさんが非常に良いプレーをして勝利に値する試合でした。
パナソニックワイルドナイツ ホラニ龍コリニアシ ゲームキャプテン
監督がいうように結果は残念なものでしたがサントリーさんが良かったです。僕らのラグビーをさせてもらえなかった結果がこの結果だと思います。
−−アタック面でハンドリングエラーが見られました。
ロビー 今日のゲームはコンタクトの部分がすごく激しく、ビッグ・ヒットがあった場面でそういうミスが起こったと思います。キックゲームについては我々のやりたかったようなゲームが出来ませんでした。
ホラニ こういう激しいゲームだと、ちょっとでも滑ると…そこはお互いさまですけど。サントリーさんが全てにおいて一枚上手だったと思います。
−−試合間隔があったことに対する影響はどうでしょうか。また前回対戦した時とのサントリーの印象の違いはありましたか。
ホラニ 何においても言い訳になってしまうので。試合間隔が確かに空きましたがここまできたらそういうのは無しでいくと、トップリーグチャンピオンとしては別にないと思います。サントリーの違いはやっぱり(SH・フーリー)デュプレアですね。彼がいるだけで全然変わってくると思います。走るかなと思いきや蹴られるし、その駆け引きは上手かったです。

新しい選手の成長が見られたパナソニック。その中で「ミスター・パーフェクト」こと霜村誠一選手がこの試合を最後に現役から引退した
−−今年の収穫と主力選手が不在だった試合についていかがですか
ロビー 2年連続2冠を逃してしまったことは、日本のラグビーレベルが上がってきているということだと思います。今シーズンもリーグ戦では3敗を喫していますし、非常にタフなコンペティションになっています。今シーズンの収穫は新しい選手たち、今までトップリーグ公式戦でプレーしたことがなかった選手たちが力をつけて試合に出てきてくれたこと。
今日もこういったトーナメント戦という大舞台を経験したことない選手たちが出場しました。主力である3選手(SH田中史朗、WTB山田章仁、HO堀江翔太)がいなかったということに関しては、誰がいないかということを考えていません。こういう選手がいるからこういうラグビーをする、ということしか考えていません。
今日出場した選手たちは、この試合に出る権利を自分たちで勝ち取ってこのグラウンドに立ったのであって、代わりに出たとは思っていません。