ニュージーランドの史上初となる大会2連覇で終えたラグビーワールドカップ2015。日本代表は、プール戦で「歴史上最も衝撃的なアップセット」と言われた、優勝候補の南アフリカ代表に勝利。24年間、ワールドカップで勝利がなかった日本代表が3勝を果たし、「史上最強の敗者」としてイングランドを去った。
チームを率いたのは、オーストラリア人のエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)だった。名前は言えなくとも映像や書店で一度は見たことがあるくらい日本国内では知らない人はいない存在となった。
ジョーンズ氏が日本代表のヘッドコーチに就任したのは2012年の4月だった。ワールドカップまで、指揮したキャップ対象試合数は57試合中37試合、テストマッチの通算成績は27勝9敗1分。(もはや、通算成績を語る事自体意味のない事だということを今大会の日本の結果を見ると痛切に感じずにはいられないが……)。
エディー・ジョーンズ氏がヘッドコーチして就任していた4年間における代表試合を、すべて現地で取材された、ラグビージャパン365にも創刊から寄稿していただいているスポーツライターの斉藤健仁氏にエディー・ジャパンの4年間を振り返っていただいた。
(聞き手:編集部)
――4年間、追い続けましたね。
斉藤健仁氏(以下、斉藤) すべての試合を追っかけてきてよかったです! 南アフリカ戦代表戦、さすがに泣けました。その後の原稿の締め切りも、大変でしたが(笑)。
――(笑)。「一夜」にして世界が変わりました。今日は、この4年間を振り返っていただこうと思っているのですが、まずは南アフリカ戦の事を。
斉藤 (勝利を決めた)最後のトライは、サインプレーではなかったようです。何人かの選手に聞いて見たのですが、本当は、その前のアタックや、モールで取りたかったようです。それよりも感動したのは、(フーリー・)SHデュプレアに、自陣へキックを蹴られてからの19フェイズでボールをインゴールまで運びました。あの攻撃は4年間を凝縮していました。
4年前は、タックルも基本から教わっていて、代表に選ばれた選手達が「パス」の練習を連日していました。そんなスタートだったんですが…
――2013年の代表戦では、ハンドリングエラーが多かったですよね。
斉藤 そうです。それがワールドカップの、試合終了の局面でノーミスで自陣からゴール前までボールを運んだ!しかも相手は南アフリカでした。
――やっぱり、4年間の積み重ねですか。
斉藤 当然それもあるでしょうが、スーパーラグビー組(リーチ、堀江、フミ、松島、稲垣、山田、マレー、ツイ)が、戻ってきてからチームのスタンダードが本当に上がりました。
これは個人的な印象ですが、チーム力が急激に上がったのは、7月末のPNC(パシフィックネーションズカップ)からジョージア戦にかけてだと思うんです。実際に、LO大野均選手はPNCではフィジカルトレーニングを継続した上で、80%くらいのコンディションで試合をして、トンガやサモアと接戦に持ち込めた事で自信を持てたそうです。FLマイケル・ブロードハースト選手も「フィジー戦が自信になった」と言っていました。
さらに、FWの選手たちはジョージア戦での出来が本当に自信なったそうです。1年前にスクラム、モールでやられた相手にリベンジできましたからね。
――そうなんですね。緻密なプランもあったけど、ワールドカップイヤーまでにスーパーラグビー組を何人か輩出できたのは大きかったんですね。
斉藤 彼らがチームにもたらしたものは本当に大きかったと思います。また、これまで取材をしてきてブライトンの直前合宿はこれまでにないほど、集中力が高い練習のように感じました。
フミ(SH・田中史朗)は相変わらず、大きな声で叱咤しているし、他の選手たちも本当に声が出ていました。あと、選手同士で意見を言い合う姿も見えました。動きも集中力が高くて本当にシャープでした。もしかしたら、エディーさんが、チームの仕上がりを9月19日に100%へ持っていくと言っていたのですが、本当に、その通りになったんです。
――4年間取材をされて今、何を思いますか。