「やっぱセイナだぁ」
そんな呟きがあちこちから聞こえてくる気がした。
もしかしたら自分で呟いていたのかもしれない。
1月19日、三重県鈴鹿市の三重交通Gスポーツの杜・ラグビーサッカー場で行われた全国女子選手権準決勝、三重パールズ vs 横浜TKMの一戦。試合最初のトライを決めたのは、パールズのキャプテンにして日本代表最多キャップ&最多トライ記録保持者である齊藤聖奈だった。
なにしろ「いかにもセイナ」なトライだった。
前半17分だった。パールズがPKから相手陣左ゴール前ラインアウトに持ち込む。ラインアウトからPRメレ・タヴァケが突っ込み、次いでFWがモールを作る。その最後尾についた背番号8の齊藤聖奈がボールを持った、その直後だった。
セイナはボールを持つとモールの真横を滑るようにサイドアタック。人の塊の隙間に潜るように身体を滑り込ませると、相手タックルを次々と浴びながらも突き進み、倒れながらもボールを持った左腕を伸ばす。ボールはトライラインの白線にぴったし、置かれたのだった。まるで無駄のない、トライを取るために設計されたようなアクション。すぐにメンバーが集まって祝福する。地元・鈴鹿で戦う全国大会準決勝、2年前の同じ舞台では今回と同じく関西1位で臨みながら東京山九フェニックスに敗れる苦い経験も味わっていたパールズの選手たちと地元サポーターたちに「大丈夫だ」と安心感を与えるトライだった。