ラグビー日本代表は21日、「アサヒスーパードライ・パシフィックネーションズカップ2024」ファイナル、フィジー代表に挑んだ。世界ランキングではトップ10に入るフィジーはこれまでのカナダ、アメリカ、サモアとはプレーの質、規律という面で一段階レベルが違った。とはいえ、フィジーも今大会は若い選手を起用し、3年後のワールドカップにむけて新たな選手層の強化を目的に今大会を活用している。
それは日本も同じだ。新生エディージャパンとなって「超速ラグビー」という新たなコンセプトを掲げ、キャップ数が少ない選手を多用し3年後のチーム像を作っている最中だ。フィジーとの差で今のエディージャパンの位置がしっかりと分かる試合になることが明確だった。
この試合のメンバーのうち、エディージャパン発足以来17人目のキャップホルダーとなったのはFB濱野隼大だ。濱野はコベルコ神戸スティーラーズに所属しているが、リーグワンシーズン終了後、アメリカのメジャーリーグラグビーでワシントンDCに留学していたが今回の招集を受けて、幼少期から目指していた代表のジャージを獲得した。
その他のメンバーはサモア代表戦と変わらず。SOには立川理道、FB李承信、SH藤原忍というコンビネーションでこの試合も挑んだ。
日本代表・フィジー代表戦試合登録メンバー
序盤の20分はジャパンのペース。ジャパンの高速アタックに対してフィジーも対応するまでに時間がかかった。7分に李承信のPGでジャパンが先制。対するフィジーも10分にPGを返し3-3の同点。その後ジャパンは何度も敵陣ゴール前にボールを運ぶもチャンスをものにできずにいたが、今大会大活躍のディラン・ライリーがこの試合でも見せる。
20分、ハーフウェイ付近のマイボールスクラムからライリーがボールを持って、左サイドに移動、目の前のディフェンス3人を引き付けて、すかさず逆サイドに横移動。ギャップを抜けるとチップキックでインゴールに転がるボールを自らキャッチ。個人技で先制トライを決めた。李のゴールも決まって10-3とした。
ジャパンは32分、マロ・ツイタマが相手のパスをインターセプト。ジャパンがアタックを仕掛ける。立川理道が裏のスペースへキックを試みるがそのボールがカットされボールがジャパンの後方に転がってしまう。このルーズボールに対してフィジーBK陣のスピードが上回り、フィジアンマジックでボールを手にするとWTBカラワレヴがトライ。ゴールも決まって10-10の同点とされ前半を終えた。
後半の序盤、互いにスコアがないままジャパンは51分、立川に代わり濱野隼大を投入。李承信がSOに入り、濱野がFBに入った。さらに52分、ジャパンはテンポをあげるためSH藤原から小山大輝にスイッチする。54分、後半入ったばかりのLOアイザイア・マプスアが自陣で孤立してしまいボールを話せずペナルティ。フィジーはショットを選択しゴールを決めて均衡が崩れた。
さらに59分、自陣のミスで相手のボールを渡してしまったジャパンは、セブンズでパリ五輪銀メダルを獲得したオリンピアン、ロンガニマシにトライを許し、フィジーに流れを許してしまう。
61分、ジャパンは自陣10mでペナルティを獲得。李承信のタッチキックでようやく敵陣に入ることに成功する。そのタイミングでウォーターブレイク。原田はファカタヴァ・アマトに合わせるもボールをキープできずフィジーがボールを取り返す。フィジーはSOマンツに50/22を決められ再び自陣での時間が続く。フィジーの連続アタックに対して、ジャパンも食らいつくが、フィジーのプレー精度が高い、さらにフィジーのプレッシャーで打開ができないでいると、67分にフィジーにトライを許すと70分、75分にも連続トライを許し10-41と大きくリードを広げられてしまう。
後半、アタックらしいアタックができなかったジャパンは、78分、ハーフウェイ付近のラインアウトからライリーが裏に出てマロ・ツイタマへパス。フィジーのBK陣も疲労のため追走することができず、マロがそのままゴール中央にトライを決め、何とか一矢報いた。
試合は結局そのままノーサイド。17-41でジャパンがフィジーに完敗。フィジーは2年連続7度目の優勝を飾った。
エディー・ジョーンズHC
相手に少しプレッシャーをかけることができたのですが、それを得点に結びつけることができませんでした。後半には簡単なトライをいくつか許してしまいました。
ーー若いチームにとっては、このような経験を積み重ねて成長していくしかないでしょうね。
そうですね。今日の試合はだめでした。フィジーは、チャンピオンにふさわしいチームですが、日本の若手選手の何人かは大事な場面でうまく対応できませんでした。残念ながら、それを学ぶには実際に経験するしかありません。彼らはその経験から必ず成長するでしょう。それはいつも難しいことではありますけどね。
立川理道キャプテン
――インテンシティーはどうでしたか
強度も高かったですし、後半、フィジーの一人ひとりの強さを自分たちがうけてしまったのかなと思います。
――大会通じてのチームの成長
今日の敗戦を受けて、しっかりとこの現実を受け止めながら、ただ一試合、一試合成長できたと思うので、それをベースにしっかりと次に積み上げていきたい。
CTBディラン・ライリー
もちろん、私たちは優勝するためにやって来たので優勝したかった。しかし今夜は十分ではありませんでした。フィジーに敬意を表します。彼らは素晴らしい試合を見せ、優勝にふさわしいプレーをしました。一方で、私たちには十分ではありませんでした。
(トライは)ただ自分の目の前にボールが来ただけです。1本のトライは重要ではありません。今夜は、試合全体を通してやり遂げること、全体としてどうだったかが問題。今夜はそれができませんでした。
(大会を通じて)このようなトーナメントでプレーするのは素晴らしいことです。私たちは、もっと強くなるために試合を年間通してやることが必要で、今大会の3試合は自分たちの力を示しました。しかし、このようなトーナメントで優勝するには、毎週良いパフォーマンスをしなければならず、今夜はまったく私たちの試合ではありませんでした。ですから、現時点では、それが今の自分たちの力なんだと思います。
LOワーナー・ディアンズ
――今日はラインアウトでのスティールなどもありました。今日の試合、振り返ってみていかがでしょうか?
タフな試合でしたね。 フィジーは絶対フィジカルなチームだと分かってて、それで自分たちもそのフィジカリティーに勝てるように、試合に入って最初前半、もう最初20分くらいはまあよかったけど、その後相手のゲームになって、フィジーのラグビーをやりつづけて、自分たちは自分たちのラグビーできなかった。自分たちはセットビーズのところで、ラインアウトとか悪くはなかったと思いますけど、これからも頑張って成長しないといけないと思います。
――ただ、夏のテストマッチシリーズから成長している部分というのは、チームの中でどんな部分を感じてらっしゃるでしょうか?
夏からみんなで長くいるから、コネクションのところが良くなってきたかなと思います。チームな感じがあって、試合の中でもお互いのために頑張れるっていう、家族みたいな感じになってきて、仕事量とかワークレートのところで 成長したかなと思います。
ーー秋には横浜でニュージーランドとの戦いも控えています。秋以降の戦いに向けてもチームを代表しお願いします。
この今日の試合を含めて、今までの試合でいろんな学びがあって、それを修正して成長して、その次の試合に向けて頑張りたいと思います。