15日、ラグビー日本代表は「アサヒスーパードライ・パシフィックネーションズカップ2024」セミファイナル、サモア代表との一戦に臨み、49-27で快勝。決勝進出を果たした。21日、花園ラグビー場でフィジー代表に挑む。
アメリカ戦でゲームキャプテンを務めたHO坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)とWTBジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)が怪我により欠場。LOサナイラ・ワクァ(花園近鉄ライナーズ)は家庭の都合でチームを離れた。
HO原田衛(東芝ブレイブルーパス東京)とLOエピネリ・ウルイヴァイティ(三菱重工相模原ダイナボアーズ)が先発。HO松岡賢太(コベルコ神戸スティーラーズ)がリザーブに入った。
サモア代表戦試合登録メンバー
激闘の80分を振り返っていく。試合はキックオフからいきなり動く。風下のジャパンのキックオフで試合が始まるとサモアがノックオン。そのボールがワーナー・ディアンズに入る。ラックの攻防でサモアがノットロールアウェイのペナルティ。ジャパンはタッチに蹴り出しトライを狙いにいく。
HO原田衛がエピネリ・ウルイヴァイティにあわせモールを押し込む。原田がキャリー。ゴールラインの攻防。FWでフェイズを重ね、BKに展開7フェイズを重ねるもサモアがターンオーバー。キックで蹴り戻すもジャパンがプレッシャー。再びジャパンのアタック。今度はサモアが危険なタックルでペナルティ。再びジャパンがタッチに蹴り出しトライを狙うもサモアも接点でプレッシャーをかけ中々ジャパンが前進できない。
6分、ジャパンは敵陣22mのラインアウトをワーナー・ディアンズがインターセプト。チャンスを迎え、さらにアドバンテージがだされ優位な状況。すると、敵陣22mから少し中に入ったラックから、10番立川理道、11番マロ・ツイタマ、そして15番李承信とショートパスでつなぎ、李が裏のスペースにグラバーキック。これをキャッチしたCTBディラン・ライリーがそのままインゴールへトライ。ジャパンが先制点をあげる。
8分、ジャパンは敵陣ゴール前のラックから右オープンサイドへ展開。短いパスで相手を引き付けると大外に待っていたマロへ李承信がロングパス。さらに速いテンポで藤原がライリーへパスをするもサモアがデリバレイトノックオン。TMO判定でペナルティトライに認定されジャパン14-0とした。
12分、サモアNO8マップにブレイクを許すと14分、SOアイオナにトライを許し14-7。15分、ジャパンはハーフウェイ付近のペナルティから敵陣に入るとラインアウトのサインプレーで原田がゴール前5m付近までブレイク。サモアディフェンスが中央に寄ったところを見て李が大外の長田へキックパス。長田がそのままインゴールへ飛び込みトライ。21-7とジャパンがリードを広げた。
25分、ジャパンは自陣でオフサイドのペナルティ。サモアはショットを選択。アイオナが決めて21-10とする。さらに29分、自陣15分付近でラックサイドでジャッカルされ再びPGを与え21-13と8点差とされる。
前半残り10分、ファカタヴァ・アマトがゲイン。22m手前までボールをキャリー。ディアンズがキャリーするも戻されてしまう、さらに竹内柊平がランしてラックを作るもボールに絡まれサモアがペナルティ。サモアがラインアウトモールからアイオノがブレイク。インゴールにボールを運ぶが原田がグラウディングさせない。さらに、直後のカウンターアタックに対してディアンズがチョークタックル。アンプレヤブルでジャパンボールのスクラムとなる。
ジャパンはスクラムからブラインドサイドへ10番、11番が走り込むサインプレーを見せるがサモアがデリバレイトノックオン。ハーフウェイまでジャパンが前進。ラインアウトからサモアがノックオン。ジャパンボールのスクラム。ジャパンはフェイズを重ね、サモアが我慢しきれずにペナルティ。
直後のラインアウトから、ライリー、マロでゲインラインを切り、さらにアマトがボールをキャリー。ショートパスでフェイズを重ね、サモアのディフェンスを中央に寄せ、6フェイズ目、外側のディフェンスが薄くなってきたところ立川から李へのパスがつながりトライ。直後のゴールも決まり、ジャパンが28-13とリードを広げて前半を終えた。
後半も優位に試合を進めたジャパン
後半最初にスコアしたのはジャパン。43分、自陣10m付近でCTBニコラス・マクカランが相手ボールをもぎ取ると藤原がすぐさまブラインドサイドへ展開。李が裏のスペースにボールを転がすと、長田がトップスピードでボールをチェイス。バウンドして長田の手中にボールが収まると、李につなぎ、さらにサポートに入った下川甲嗣につながり、ハンドオフをしてそのままインゴールへトライ。李のゴールも決まって35-13とリードを広げた。
51分、サモアはWTBアロフィポのブレイクからSHマタヴァオがトライ。35-20と再び15点差となりまだまだわからない展開となる。ジャパンはPR阿部崇人(横浜キヤノンイーグルス)を投入。ジャパンの苦しい展開を切り替えたのはマロの献身的なプレーだった。54分、自陣10mでボールを手にしたマロは相手の陣形を見て相手を背走させるキック。さらにマロ自らボールをチェイスし相手にプレッシャーをかけ、キックを浅くさせ敵陣22m手前までチームを前進させた。
54分、ラインアウトをキープしたジャパンはライリー、下川で敵陣22mの内側へ入るとサモアがノックオン。ジャパンボールのスクラムから、サモアがペナルティ。藤原がクイックでリスタート。ゴール前の攻防。フェイズを重ねるジャパン。57分、ゴール前ラックから藤原がフェイクを入れて前に空いたスペースに向けて自らボールをキャリーしトライ。42-20と貴重な追加点を上げた。
ジャパンは61分にウルイヴァイティからアイザイア・マプスア、62分にはマキシからティエナン ・コストリー、さらに立川に代わり髙橋汰地を投入。15番だった李が10番に入り、高橋がFBをつとめる布陣となる。
65分、ジャパンは相手ボールスクラムを押し込みペナルティ。ジャパンが敵陣深くへ入り込む。ジャパンはSH小山大輝へスイッチ。追加点を狙う。ラインアウトモールから原田がキャリー。さらにディアンズがキャリー。サイドを変えてマクカランが逆サイドにボールを持ち込むがペナルティ。
サモアボールのラインアウトだがサモアがノットストレート。ジャパンボールのスクラムとなる。スクラムペナルティのアドバンテージをもらうと、李からマロへのキックパスを試みるが合わず。直後のラインアウトをディアンズがターンオーバー。ジャパンが攻勢をかける。李が裏スペースにショートパント。反応した髙橋汰地がインゴールに入り込むもタイミング合わず。
71分、李承信のキックが相手のチャンスボールとなり、カウンターアタックをうけてCTBラロミロにトライを許し42-27とされ、残り7分少々。75分、ジャパンは敵陣22m付近でスクラム。HO松岡賢太が投入され初キャップを獲得する。フリーキックを獲得したジャパンは小山がタップしてアタックを再開。サモアがペナルティしてジャパンはスクラムを選択。
スクラムを押し込みアドバンテージを得て、右サイドへ展開。李からパスを受けた高橋が相手に絡まれながらもそのままトライ。49-27としてノーサイド。ジャパンが6トライを決めてサモアに快勝。パシフィック・ネーションズカップ2024決勝進出を決めた。
日本代表 エディー・ジョーンズ
我々としてはステップアップとなるような試合だったと思います。これまで対戦していたアメリカ、そしてカナダより格上のチームでした。試合の序盤に関してはとても良い形でスタートできました。向かい風の厳しいコンディションの中でいいプレーができていたと思います。
課題については特にラック周りのディフェンス、キックチェイスのディフェンスは今週の課題としてキーポイントとして取り組んでいきたい。しかしながら勝ったことに関してはとても良かったと思います。フィジーはとても質の高い対戦相手となります。良い準備をして次の試合を迎えたい。
――立川キャプテンの評価
立川はとても落ち着いているところがポイントだと思っています。スピードでもいい判断できますし、今日はフィジカル面でもよかった。やはり立川というプレーヤーがチームに入ってきてくれるととても付加価値が多いと思います。常に価値を与えてくれる、そういったプレーヤーですので、立川がいてくれることでチームとしても強くなりますし、いい影響をえられていると思います。
――車いすラグビーの池主将が訪問されたことでインスパイアされたことは?
我々のような若いプレーヤーにとってはいかに日々感謝の気持ちを持ち続けるか、いかに自分達がラッキーな環境にいるかというところが必要です。
我々ジャパンが現在トレーニングを続けている宮崎の合宿場に関しては、施設もワールドくらすでとても素晴らしいものが備わっていますし、プレーヤーとしてもジャパンを代表してプレーをするというところに関してはそういったチャンスをもっているということを自覚すること、それに関して感謝することが大切だと思っています。
今回池さんにお越しいただいたのですが、スピーチの中で、ご本人が事故で友人を3名なくされたこと、足があまり思うように動かないもしくは切断せざるを得なかったという話をされました。その話にプレイヤーは30分間のスピーチに集中して耳を傾けていました。池さんの持つ謙虚さ、真剣さといったところは我々も学ぶことが多かったです。
――次のフィジー戦にむけて
まずはトレーニングを積むこと、これに尽きると思っています。我々としてはディフェンス面で流れを掴んでいかないといけませんし、ラックディフェンスについてはフィジーにモメンタムを稼がれないためにも精査していかないといけない。キックチェイスに関してもコネクトしながら、我々がキックするときに関してはコネクトしながらキックチェイスをするというところが肝になってくると思います。
こういった課題が出るということは我々が成長するチャンスがあったということですし、今週に関してはプレイヤーがそれぞれ試合に対してのアプローチといったところはとてもいいものがあったと思います。
――10番と15番のポジションチェンジしたこと
前回のワールドカップが終わって、テストマッチで10番ができるのは松田力也だけでした私の考えとしては、今後テストマッチでプレーができる10番の育成が早急の課題だと考えました。現状、李が一番能力が見込めるかなと思っていますし、理想的には李が10番としてテストマッチで育成できればと思っています。今回、山沢、そして矢崎が15番としては離脱してしまったので立川が10番、李が15番というのがバランスとしては最適化と思っています。
追加としては、我々の今直面している状況というのはとてもユニークなところがあります。矢崎は今大学でプレーしていて、昨日も4トライを決めていました。この状況を理解していますし、どうこういうつもりはありません。今となりにいる立川のことは100%信頼しています。2015年ワールドカップまでの4年間、一緒にワークしてきましたし、さきほど話のあった、車いすラグビーのキャプテンである池さんのようにとても謙虚で真摯な態度でトレーニングにも臨んでくれています。
――今日の試合でプレーヤーオブザマッチに選ばれた李承信について
本日POMにということで、アサヒのビールを100本獲得してしまったことを自分としては懸念しています。なにせ彼はビールがとても好きなプレーヤーなので。自分としては他の人に与えて欲しかったなと思っています(笑)。
試合にとてもいい形で順応していましたし、ラインにもいい形で仕掛けながらプレーをするといったところが良かったです。ゴールキックについても良い確率で決めていましたので今後も期待したいです。(ショットクロックについても)いい形で順応していると思います。
ご存知かもしれませんが、カナダ戦ではスキルコーチの浅田一平氏が、立川のゴールキックをする際にティーを間違えてしまい、立川があえなくドロップゴールをしてしまうシーンがありました(笑)。李はとても順応していますね。23歳のプレイヤーとしてはとても落ち着いていますし、成熟したプレイヤーだと思っています。
立川理道キャプテン
――今日の勝利、キャプテンとして
テストマッチに関しては、やっぱり準備というものがすごく重要になってくると思っています。本当に宮崎の合宿もそうですし、こっちに来てからポジションのところも含めてしっかりとチームで全員で準備できたことがこの結果に繋がったのかなと思っています。
――ご自身のプレーは
10番としてプレーしたのは9年ぶりということもあって少し最初緊張しましたけど、実際に試合に入ってしまえばもうチームとしてやるべきこと自分のやるべきことを明確にシンプルにやっていくというところを取り組めばチームとしても個人としてもいいスタートが切れたと思います。
――前半からボールを回していたがそれは風のことも考慮して?
そうですね。自分達がボールを手放しても、一気にキックで返されるという可能性もあったのでプランとしてはボールを持ちながら、スペースにボールを運ぶということをやってきました。
――車いすラグビーの池キャプテンとお話されたと思いますが、今日の試合で役に立ったことなどは
リーダーシップの在り方みたいなものを聞いたんですけども、やっぱり自分らしさを忘れずにやっていくってことが大事だったという話は僕に通ずるものもありました。すごくためになった話は、エディーさんが言ったように本当に何事も当たり前ではない状況の中から、前向きに常に取り組んでいる姿というのは選手全員すごく刺激を受けたと思いますし、今日の試合に向けてもすごく選手たちの意識の中にもあったと思いますので、いいタイミングで池さんと話しができたなと思います。
――サモアとは今回で19回目の試合となりますが、最高得点、最高得失点となりました。
点差であったり、結果に関してはそこまで、後からついてくるおのだと思っていますけど、そういう点差で勝てたことはこの若いチームにとってすごく自信になると思いますしいい準備をするとこうやって結果に現れるという経験は今のチームには大事なので、次ここで気を抜くんではなくて、しっかりとまたいい準備をしてフィジー戦を迎えたいなと思います。
サモア代表 マホンリ・シュワルガーHC
とてもタフな試合でした。日本は高いスタンダードを見せた。テクニカル、前半は特にプレッシャー、大事なエリアでミスしてしまい。立て直すことができなかった。大きな学びになったと思います。
ーーこの大会の期間中の若い選手たちについて教えてください。
とてもいいと思っています。なかなかこうした世界の舞台に立つ機会を得られませんでしたし、次のワールドカップに向けてチームをビルドアップすることにつながります。
ーー非常に力のあるコーチンググループですよね。
ええ、ケイン・トンプソン、トゥシ・ピシ、アレサナ・ツイランギなど、私たちは何人かの元代表選手を迎え入れようと決めました。現実的な方法でスタンダードを上げられると考えたんです。だからジャージーを着たがっている選手はたくさんいて、コーチたちはそのためにどんなレベルになる必要があるのかをよく知っています。経験も必要だし、若い選手もいる。さっきも言ったように、私たちは次のワールドカップのために準備をしているんです。
サモア代表 テオドール・マクファーランドキャプテン
――今日の敗因は
試合の始まりから少しよくなかった。特に前半20分の私たちの規律に問題があったと思います。そこで日本はチャンスを得ました。
でも今日はポジティブな部分もたくさんありました。試合をレビューして、月曜日に確認する必要があります。しかし、やはり私たちが今日の結果になったのは、常に多くのミスを犯していることであり、基本的な部分です。それが私たちが焦点を当てるべきことだと思います。来週はアメリカと対戦があり、もう一度そのことを改善するチャンスがあります。
――ミスが多かった理由は
色んな理由が考えられます。もちろん日本のディフェンスからのプレッシャーもありましたし、蒸し暑かったということもあります。ただ、それはどうしようもないです。自分たちでもっと基本を大事にしてエラーを犯さないようにする必要があります。特に自分達のテリトリーでエラーしてしまうと、それを日本が有効的に活用して勢いをつけられてしまいました。これを学びの機会として基本に立ち戻る必要があります。
自分達のミスが暑さと湿気に影響したかというとそれは否定します。自分達はサモア出身ですので気候も同じです。日本に来て2週間トレーニングして、その前も6~7週間サモアでもトレーニングしてきました。やはり自分達の責任になります。あれだけのエラーをしてしまった。ミスするたびに日本は勢いを持って、こちらのディフェンスにまとまりや落ち着きがなくなってしまったので良い教訓にしたいと思います。