テストマッチ2連勝へ、アメリカ戦前日練習レポート、坂手淳史、オーウェン・フランクスアシスタントコーチ | ラグビージャパン365

テストマッチ2連勝へ、アメリカ戦前日練習レポート、坂手淳史、オーウェン・フランクスアシスタントコーチ

2024/09/06

文●編集部


ラグビー日本代表は6日、「アサヒスーパードライ・パシフィック・ネーションズカップ2024」アメリカ代表戦の前日練習を試合会場となる熊谷ラグビー場で行った。練習終了後、オーウェン・フランクスアシスタントコーチとゲームキャプテンを務めるHO坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)が取材に応じた。

日本代表 HO坂手淳史ゲームキャプテン

坂手淳史ゲームキャプテン

坂手淳史ゲームキャプテン


――ゲームキャプテンを務めます。若い選手が多い。


まだ2試合目ですが、ゲームキャプテンをやらせてもらっています。ゲームのスタートで、チームにどう良い勢いでスタートさせられるか、ゲームの中で勢い失ってしまう、相手に勢いがいってしまうような時間帯をまずは作らないようにする。

それがでてしまったらどう改善してチームを前進させるかと考えながらコミュニケーションをとっています。アタックは(李)承信、(藤原)忍、ディフェンスは(下川)甲嗣、ラインアウトはワーナー(・ディアンズ)が中心になって、ゲーム中いろんなコミュニケーションを取ってくれて助かってくれている。そういう若い選手をまとめていくことを考えてやっています。

――アメリカ戦に向けてのキーポイントは?


一番はフィジカルの攻防が大きなものの一つになる。アメリカは大きいのでフィジカルを全面に出してくるのは予想つくし、そういうことをやってくると思っています。FWは良い球をBKに供給する、スピードを持ったアタックをし続ければおのずと自分たちのラグビーができると思っています。プレッシャーかかったときどうするかも考えながらやっています。

アメリカ戦のキーポイントはフィジカル

アメリカ戦のキーポイントはフィジカル


――熊谷での試合です


ワイルドナイツの選手たちに頑張れと言われましたし、何人か見に来てくれる。熊谷でテストマッチをするのは2019年以来ですし、僕にとっては大きなことなので、楽しみたいという思いもあるし、勝つための準備もしてきたのでそれを出さないといけないというプレッシャーもある。自分のプレーを出していきたい。知っているグラウンドですが、相手も違うので、やりやすいかわからないですが、自分の持っているものを精一杯出したい。


――先発HOとしてはどんなプレーをしたい?


セットプレーの安定が一番大事だと思います。超速ラグビーをするにあたってBKに良い球を出すことが大事で、スクラム、ラインアウト、特にラインアウトで良いボールを出すことが大事だと思いますし、フィジカルが大きなゲームの争点になると思うので、そこを全面に出して相手に引かない、フィジカル、タックルを出していきたい。


――前回のW杯では、姫野選手や稲垣選手がいました。ベテランがいない中で坂手選手の役割とは?


たくさんいなくて、ほとんど新しい人に変わって、新鮮ですね。ずっとジェイミーのラグビーをしていて、ワイルドナイツではロビーさんのラグビーをしていて、今 僕としては8年ぶりに新しいラグビーに触れて、エディーさんの新しいラグビーをすごく楽しんでいます。

若い選手は若いですが ポテンシャルもあって、頼もしいし一生懸命やっているので、何も心配していません。ただ、一生懸命やっていく中で、流れを掴んでいくところは、みんなで学んでいかないといけない部分ではある。そこを伝えながら自分自身も学びながら、というのが、今やっている中で、一番大きな部分かなと思います。僕自身も若い選手からたくさん学んでいますし、何か若い選手に伝えることができればとプレーしています。

アメリカ戦メンバーではFBに山沢拓也が入った

アメリカ戦メンバーではFBに山沢拓也が入った


――新しいラグビーで具体的に楽しんでいることは?


僕自身はアタックのところですね。夏のシリーズが始まった時、もっとボールを持ってプレーしてほしいとエディーさんに言われた。僕自身、ボールキャリーとしてできることを、練習の中でチャレンジできているし、試合につなげることができている。ボールに触ること、ブレイクダウンはまだまだ伸びしろがあって、重点的にやっていることは楽しいですね。


――W杯が一つ終わって、次のチャレンジは?


W杯で一区切りしたが、あまり関係なくて、もっと自分のプレーを研ぎ澄ましたりもっと上手くなってインパクト残したいと練習している。あまりW杯が、W杯がというより目の前の1試合、この1年でどう成長できるか、どういうプレーができるかを楽しみにしている。練習はハードでしんどいですが、自分を一つひとつを出しながらやることが大事。W杯は目標にする、目標になるべき場所ですが、この1年、1年も自分の成長につなげていきたい。


――ボールを持つということはどう考えてやっている? 


エディーさんのアプローチの仕方は、『ラグビーを始めたとき何が楽しくて始めたのか?』かというところから始まって、ボールキャリーをするボールを持って動くことがアイデンティティーだったり、楽しい部分だったなと思い出させてもらった。それができることは、ポテンシャル、アタックに対してボールを持ってできるというところに話がいって、自分がゲインすること、一つ一つのプレー で初心に戻って、もっとボールを持って前に行く楽しさを表現できるようになったらなと思った。

エディーさんからヒントをもらって、もっと伸びるところを探しながら、そこまで意識していなかったが、今はボールを持ったときにどうゲインするか、足動かしながら考えながらやっているので、そこは成長するポイントかなと思います。

エディー・ジョーンズHC

エディー・ジョーンズHC

――ボール持ってゲインするところは、ワイルドナイツはキックを使いながら エリアを考えながらやっています。日本代表はポゼッション重視ですが、今後、どうブラッシュアップしていく?


FWとしては 9番からシェイプ、10番からのシェイプで、相手をそこにとどめたり、集めることが大事。そのためにフィジカル鍛えているし、フィジカルを出していく。ずっとポゼッションすると、アタックした方が疲れていくのでバランスが必要だと思っています。9番、10番からのキックを有効的に使いながら研ぎ澄ませていくことが一番なんじゃないかなと思っています。

意図的にボールを保有するのではなく、9番、10番が考えながらプレーしているので、そこは明日のゲームでも見てもらえるかなと思います。超速ラグビーではボールを保有するところも大事だが、手放したところでプレッシャーかけて、相手に蹴らせてからのアタックも重点的にトレーニングしています。

FWとしては目の前の仕事、相手のキャリーを止め続けることが大事なので、裏のスペースはみていません。9番、10番、15番が裏のスペースを見て、そこにキックしたときに、チェイスすることも合わせてトレーニングしています。

エディージャパンが目指すラグビーの中で、10番の役割が重要になってくる。カナダ戦に続き10番を背負う李承信

エディージャパンが目指すラグビーの中で、10番の役割が重要になってくる。カナダ戦に続き10番を背負う李承信


――SO李の良さ


彼の良さはスピードですかね。ボールをもったときに前にもっていく推進力があり、10番からパスのオプションも多彩で、自分でもボール持っていける。ゲームメイクもすごく上手いし、FWを前に進めるのも上手なので、期待していただければなと思います。

9番、10番だけでなく、アウトサイドも良いBKが揃っているので、良い判断をするのが大事だし、FWもそれを助けながら良いボールを供給していきたい。それができれば、9番、10番が常にゲームをコントロールしてくれるかなと思います。


――相手が蹴ってきて、それに対して反応する練習をしていましたね


相手がフィジカルでアタックして、それをしっかり止めると、キックのオプションが多くなるのかなと思います。


――エディージャパンでは走り込んでボールをもらうシーンも多いが


最初は難しかった。数ヶ月練習するとだんだん上手くなった。相手をトラップしたり、そこに相手をとどめることが役割です。僕らのところからすごくゲインできれば一番ですが、ハーフヤードと言われる少し短いゲインでもそれを積み重ねて、9番が捌き続けると、アウトサイドや裏にオプションができてくることがあるのでそういったことを目指している。走りこむことで、勢いよくキャリーできるので、ブラッシュアップしながら教えてもらいながらやっている最中です。

日本代表 オーウェン・フランクスアシスタントコーチ

オーウェン・フランクス

オーウェン・フランクス


――なぜ日本代表のコーチになったのか。経緯を教えてください


自分のエージェントに引退後、どうするかと相談していた。引退後、コーチングに興味があると話をしていて、スクラムやフロントローと良い関係を築いていくという自分の得意な部分で、チームに付加価値を与えることができると思っていた。そこでエディーと話したのですが、幸運な転機だったなと思った。エディーと話して、付加価値を与えることができると思って、今、ここにいます。

――NZ国内のチームではなく、ナショナルチームのコーチを選んだ理由は?


自分がプレイヤーからコーチングになった差は、ここに関して自分のパフォーマンスか、チームパフォーマンスに集中するかでとても違った面があると思った。プレイヤー、アスリートとしては自分のわがままさ、自分の本意であるところを押し進めないといけないと思っています。

わがままさを出しながら、何がチームにとってベストか判断しないといけない。コーチとしては週末にそれぞれの選手がベストなチャンスをつかむために、どのように自分がチャンスを与えるかという全く違った観点で取り組まないといけない。



国内とナショナルチームの違いはインテンシティーが違う。国際レベルのチームは国内のベストな選手が揃うし、3~4回のテストで結果を出したり、3~4週間の準備でテストマッチをしないといけないなど短い期間で結果を求められます。国内の試合は20~25試合あり、どうしてもシーズン中にアップダウンがある。インテンシティーの部分が国内と国際レベルでは違うと思います。

――日本代表のスクラムのイメージは、どこまで到達させたいか?


日本のスクラムの印象は、日本人はスクラムにおいて身体が低い、身長の面でも低く組めることはアドバンテージになりえる。ハードワーク、規律が欠かせないが、日本人の性格も含めると、自然とできるのでとても楽しみです。

スクラムは経験値が必要です。リーグワンは長いところもあるが、毎日のトレーニングから激しく行うこと、スキルを高めることをハードワークしてのみ成し遂げることができると思っています。選手はハードワークを尽くしてくれています。それぞれのベストを出して、毎日、ハードワークしてチャレンジして練習に取り組み続けることで目標に近づくことができる。


自分として付加価値を追加できるところは、目的をクリアに、いかに世界で一番のスクラムを組めるパックになれるか、そこに焦点を当てて指導できるところだと思います。ハードワークを通じて、お互いにチャレンジして信条を培っていきたいと思っているし、選手はハードワークし続けていて、良い学びになり、世界で一番のスクラムを組めるように切磋琢磨していきたい。


――日本人として低さが活かせるところは具体的には? 


スクラムにおいては、本当に近道や魔法のようなものはないと思っています。
良いスクラム、良いテクニック、悪いスクラム、悪いテクニックはとてもハッキリわかれている。どうしてもコーチの罠というか、ハードにプッシュしろ、ハードに組めと、(コーチとして)どうしてもコーチングをしがちだが、自分としてはクリアなプロセスを持つこと、そのプロセスを続けることでどういったスクラムを組めて、それがどうなのかを実感させたい。トレーニングを一貫性 を持って続けること、お互いチャレンジし続けることで、お互いのスクラムを上手に伸ばして行くことが大切だと思っています。同時に、フィールドの外のワークも大切だと思っています。ジムのウェイト、モビリティーのワークはFWのパックには大事です。相撲の稽古にとても似ているところがあると思います。

ルーチンをとても規律高く取り組まないといけないところ、毎練習大切にするところ、メンタル面を大事にするところが相撲の稽古はとても似ていると思います。それぞれの練習を重ねるごとに専門性を磨くことができることがスクラムに大きく通じる。毎日、規律高くハードワークを続けることはジムでもまったく同じです。JP(ジョン・プライヤー)という 素晴らしいS&Cコーチがいるので、フロントロー、FWパックは、JPの下で、ジムでのハードワークをしていて、それがスクラムにも大きく関与してくると思います。


――中長期的なプランはありますか、今、どんな感触ですか


もちろん長期的なプランとしては、スクラムで、世界で一番になることです。ただ、先ほども言ったが、魔法などはありませんし、マジックで上手くなることはないです。様々な要素が一つにまじ合わさって一つになるものです。フィールドでのトレーニング、ストレングス、ウェイトをやり続ける、食生活など複合的な要素を、すべてしつこくディシプリン高くやり続けて目標を達成できると思っています。クリアなプロセスとは、どういうものか描きつづけることで体系できるものになるが、一番大切なものは経験値だと思っています。

今後向上するには欠かせないもので、夏のテストマッチを経て、やはり選手は大きな学びを得ています。また自分たちが良いスクラムを組めたときの感触、良いスクラムを組めたらどういうアタックができるか、どういうものが得られるか という兆候も良いものが見られているので、今後もハードワークを続けていきたい。


――日本のPR陣は、スクラム崩れたときにレフリーに先入観があって反則を取られたという言葉をよく聞かれます。どう対処すべきか


まずはそういった思い込み、考えを変えることが大きな答えになります。ハードワーク、一貫性を持って向上し続けることがないとなかなか行えないものだと自覚しています。日本人のFWパックとして、ドミネイトすることをやり続けることで、我々としてはスクラムを組む見返りを得られると思います。そこは目標ですし、日本人のFWとして、みなさまの観念を変えないといけないと実感していますし、私としては日本がスクラムで世界一になれない理由がないと思っています。

――オールブラックスと10月に対戦します。どうアドバイスをして戦う?


時間が来たらフォーカスしていきたいと思っています。対戦する相手が格上で、チャレンジングでタフな相手だと、我々としてはリスペクトは必要だが、リスペクトし過ぎないことが大事だと思います。オールブラックスのブランドやNZというのはいかにラグビーが上手い国がわかっているが、そこに関しては、一度、それを忘れて自分たちがベストを尽くすことに集中する、いかに相手に自分たちのプレーができるかに尽きます。相手への敬意を忘れてはいけませんが、フィールドに一度立てば、そういうことは関係ない。そのタイミングが来たら、ベストを尽くす。その時になったら考えたいと思います。

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