15人制の全国大会に初出場した早稲田佐賀(佐賀県)は、1回戦で花園2連覇を果たしている王者・桐蔭学園(神奈川県)に真っ向勝負を挑んだ。結果は15‐57と完敗だったが、早稲田佐賀としての新たな歴史を作った。 山下昂大監督、NO8山崎圭介キャプテン、2トライを挙げたCTB吉廻温真(よこざこ・はるま)に試合後、話を聞いた
早稲田佐賀 山下昂大監督

早稲田佐賀・山下昂大監督
――初めての15人制の全国大会でした
ブレイクダウンのところで、こっちが出せるだろうボールを出せなかったというところが、しんどかったかなという感じですかね。テンポといい、ボール自体を失うことといい。
――試合前に初めての舞台に向けて選手に話したことは?
やるからには勝つつもりでというところがあったし、であればどうやって勝つのかを考えたら、ボールを継続して動かす。今日、ブレイクが何本かありましたけど、CTB吉廻や外側の足の速い選手を使って、というところになると思ったので、それは準備をしたし、今日も出たシーンはあったのかなと思います。

――少し、前半固かった?
そうですね。吉廻にボールが渡ったところでミスが2本くらいありましたが、やっぱりそういうところの差だと思うんですよね。もしゲインしてスコアでもしておればまた何か違っていただろうし、やっぱり日本一のチームとそこに差があると思います。
――創部して4年でこういう舞台に立って、この1年は部にとってどんな試合になりそうですか?
初めての全国大会で前年の優勝校と当たれるということ自体が光栄なことで、巡り合わせだなとは思いますけど、ただ、本当に彼らにとってはすごいいい過程になるかなと。
――今後さらに強化していきたいところは?
『普通にやって普通に負けちゃった』という感じで、なんていうんですかね、今日の試合を見た人が、早稲田佐賀は何をするんだろうね、確かに12番はすごいけど……としか印象に残らないゲームだった。僕的にはもっと彼らの魅力を知っているし、良いラグビーできることを知っているんですけど、やっぱり、それをするための最前提として、ボール継続をするっていうところだと思うんですけど、それができなかったので、それができるようなゲームにしたいと思います。
――このレベルの相手にそれをやるというのはもう一つ、精度を上げていかなければならないですよね。
そうですね。やっぱり今まで感じたことない圧力を感じましたね。
(九州大会で対戦したチームとは)全然、違うなとは思いました。(桐蔭学園さんは)コミュニケーションをすごく取っていますよね。やっぱりすごいいいチームだなと思いました。
やっぱり、今、考えられている子と考えられていない子の差がすごく激しいと思っています。そして考えている子の方が少ないので、そこの割合をしっかり上げていく。15人全員に浸透する、もしくは25人、もしくはクラブ全員に対して浸透させるということが、指導者としては大事なのかなと思います。本当に本気で悔しがっている子もいるし、吉廻はこのレベルでもこれだけのプレーができる。やっぱりスペシャルだと思います。
――15人制の全国大会に出場してあらためて感じるところは?
僕も良い勉強になったし、今回はもちろん勝つところは目標にはありましたけど、花園のような最終目的というわけではないので、振り返ったときに良い経験、良い通過点になるんじゃないかと思います。
――少し前に進めたという感じですか?
ですね。でも本当こう、大きな差があるんだっていうのもわかりましたし、逆にもっと、こうすればいけそうなんだなというのもあったので、自分たちの立ち位置はわかったかなと思います。
早稲田佐賀 NO8山崎圭介

完全に実力不足です。桐蔭学園さんが全国レベルで、強いって前から分かっていたし、セットピースが強いってのもわかっていたんですけど、準備してきたつもりだったんですけど、準備不足であったし、完敗です。
ケガ人も多くて、メンバーも変わって、人数も少なくて、選手層が薄いのは、言い訳にはなっちゃうんですけど、全員が変わっても、同じプレーできないと、絶対強くなれない。強いチームになりたいと思います。
――早稲田佐賀の歴史を一つ進めた感じはあるかな?
全国大会に出られたというのは、本当に良い経験だったんですけど、自分たちは、桐蔭学園さんに勝つというのが一つ目標だったので、それを達成できなかったので、まだまだかなと……。
――どこで一番差を感じる?
ブレイクダウン周りです。どんなにアタックしても止められて、外側に回したらそこで外に出されて、継続もできなくて、自分たちのラグビーが全部、押し潰されていた。
もう一回、自分たちが何をしたいのかというのを話し合って、自分たちのラグビーっていうのは何かって話しあって、選手、コーチ陣、全員で明後日の試合に向けて試合に向けて修正して勝ち切りたいなと思います。
――この1試合は、どんな意味を持ちそう?
桐蔭学園さんと、花園で2連覇している強豪と試合ができたんで、まだまだ足りないことっていうのがめちゃくちゃ出てきて、自分たちの中でも良いものを吸収できると思うので、まずそこをしっかり吸収して、花園予選に勝って花園に出たいと思います。
2トライを挙げたCTB吉廻温真(よしざこ はるま/2年)

初の全国大会で(相手が)桐蔭学園で、上を見すぎてしまったかな。前半自分のミスもあり、ほとんど通用しなかったが、後半はやるしかないと思った。自分が縦を意識して、抜けるところ、ゲインできるところがあって修正した。
――2トライを振り返って
1つ目は縦にゲインできて、FBと1対1だったので蹴って自分で取った。桐蔭学園は出て待ってくるというディフェンスだったので、縦に強いキャリーできればゲインできると研究していたところが出た。
2つ目はSOの打返しをもらおうとしたが、オーバーラップしたらボールが来て、(トイメンが)FWでミスマッチだったのでカットアウトで仕掛けた。

――強豪の桐蔭学園と対戦してみて
自分は通用すると思っていたが、最後、自分のことを信じて、日本一という強いチームだが個人では圧倒すると後半から立て直した。(竹山らワセダクラブの)元チームメイトもいたので楽しかったです。
高校1年は全国でもやりあえないと思っていたが、(1つ上の)山下というエースが抜けたので自分が勝負して、どんどんドミネートしていくというところを意識して練習していた。セブンズもコベルコも出て、全国の舞台を経験したのでトレーニングしていた。昨年の夏、コベルコ大会のとき体重73~74kgとフィジカルが弱かったので、1ヶ月で2kgくらいどんどん増えて82~83kgくらいになった。スピードとフィジカルを鍛えて自信になった。フィジカルがついてプレーの幅が広がった。全身をしっかり鍛えて、スピードを落とさず上げて、体重を増やすことができた。
――どうして早稲田佐賀に進学した?
ワセダクラブだったので、早稲田大に行きたいと思いましたし、佐賀工業がずっと花園にいっていて、創部間もない早稲田佐賀に入って歴史を創りたいなと思ったので。強豪校に行って早稲田にいくのもありだが、僕は佐賀工業を倒して花園行くという早稲田佐賀にロマンを感じた。
――この1年をどうしたい?
とにかく、今日の試合で課題が出てきて、全然通用しない。逆に通用したところもあったので、この試合をターニングポイントにして、1人1人が愚直にトレーニングして、フィジカル負けしないようしたい。「スラムダンク」のように、漫画になるような1年にしたい!
今日も相手を山王だと思って、勝つと信じてやったが、一人一人がまだ信じ切れてないかな。全員が信じれば一つのチームとしても個人としても強くなれる。佐賀工業はでかい壁だが、一人一人が絶対勝つ、花園に行くというのを再認識したい。
――足は左効きなの?
手は右ですが、足は左なので、都合が良いです。もっと裏を見てもっと大きいキックを蹴ってもよかったかな。自分でもトライを取ったがゲームコントロールとか、最初の継続とか課題は残っているので、明後日の試合で修正したい。
――目指す選手像は?
世界で活躍できる人材になりたい。今、何が一番近いかというとラグビーで代表クラスになって、代表になるだけでなく、海外を圧倒する人材になりたい。
――早稲田大にいったらFB矢崎と被りますね?
1年、4年ですね。大学生で戦っている矢崎さんにしごかれるように、並べるラインになれるようにこの1年、頑張りたい。
――早稲田大学への進学は大丈夫そう?
まだわからないですが、行けるように頑張ります! アカクロに誇り、プライドを持っていますし、(大学も)憧れているので。
――なぜラグビーを
浦和区出身で、父もラグビーをやっていたので、地元のラグビークラブ(浦和ラグビースクール)で始めました。父(将人さん)は出雲高校出身で、2年のとき江の川(石見智翠館)を倒して花園に出場しています。CTB、WTBでした。お父さんは僕の夢を尊重してくれて、進路とかにはとやかく言わないし、入ったところでどう咲くか、そのために何が必要かを言ってくれる。ラグビーのプレーは全然、言ってくるタイプです。ゲームが終わったら、長文のラインが来ます(笑)。