HSBCワールドセブンズシリーズ2013-2014第8戦、キャセイパシフィック香港セブンズで行われている来季のワールドシリーズ昇格決定戦に出場している日本は、30日午後4時36分(香港時間)から決勝を行い、イタリアを26-5で破り優勝。来季のワールドシリーズ全大会に出場するコアメンバー昇格を決めた。
日本は試合開始のキックオフからディフェンスでプレッシャーをかけ、レメキのターンオーバーからFW桑水流が左隅へ走り込み、キックオフから僅か29秒で先制のノーホイッスルトライ。
さらに、次のキックオフでも桑水流が高いジャンプで相手のノックオンを誘い、藤田からパスを受けた坂井克行主将がゲインし、またも桑水流につないで連続トライ。
「桑水流の高さでプレッシャーをかけようという作戦だった。桑水流がよくやってくれた。トライはおまけですが」(瀬川HC)
「メンバー発表のとき、キックオフのボールは絶対に捕ってくると決めました。勝ててホッとしました」(桑水流)
開始2分で12-0と主導権を握った日本は、その後も思い切りアタック。6分には藤田慶和が相手ボールにかじりついてターンオーバーし、パスを受けた坂井主将が
「決勝は大胆にプレーすることを心がけました」
という通り、強気にアタックしてゴールポスト真下へ独走トライ。自らコンバージョンも決め、日本は前半を19-0とリードした。
後半もジャパンは先手を取った。後半のキックオフからノーホイッスルで、後半投入のWTB福岡堅樹が猛ダッシュで相手を抜き去り約40mを独走するトライ。
「準決勝では延長戦でみんな疲れていたはずなので、準決勝で出なかった自分は決勝ではみんなの分も助けたいと思っていた」
と話す誠実な韋駄天の快走が、後半の反撃にかけていたイタリアの望みを断ち切った。
敗色濃厚のイタリアも懸命に反撃し、タイムアップ寸前の6分47秒にファブリジオ・セペが意地のトライを返し5-26。さらにホーンが鳴ったあとのキックオフからも反撃を試みるが、ファンブルしたボールを日本の橋野がインターセプト。
そのまま歓喜のウィニングトライを決めようとするが……華麗にダイビングトライを決めようとしたところで、手からボールがするり。4万観衆が爆笑する中のノーサイド。
「いやあ、恥ずかしい。だけど、同点だったらちゃんと両手で持ってトライしましたよ」
橋野は苦笑したが、ロシア戦のサヨナラトライといい、試合の最後の時間帯での働きは出色だった。
メインスタンド中央で優勝カップを手にした坂井主将は声を弾ませた。
「最高です。景色が違って見えました。初めて見た景色。やっと、世界と同じ舞台に立てた。こんな大観衆の中で、こんな結果を出せて本当に嬉しい」
最年少の藤田は、試合終了直後から泣きっぱなし。
「準決勝では、しなくてもいいパスをインタセプトされてトライされても、試合中は落ち着いてやりました。決勝では、行くところは強気で思いきりチャレンジしようと決めていました」
日本選手権決勝のあと、休む間もなく緊急招集され、ベテランらしいコミュニケーション力でチームを支えた北川智規は
「最高です!これで本当のオフになります」と破顔一笑。
そして瀬川HCは
「きょう戦ったメンバーだけでなく、東京セブンズで一緒にプレーしたけど今回はこられなかった選手、アジアシリーズを一緒に戦った選手、みんなの勝利だと思う」
と、セブンズジャパン全員の勝利と強調した。
日本はこれで来季のワールドシリーズ昇格が決定。
来季のワールドシリーズでは、4位までが2016年オリンピック出場権を得ることが決まっている。同時に、出場資格が基本的に国籍主義(パスポート、永住権など)となる。トップリーグと時期の重なる大会もあり、所属チームとの調整もこれまで以上に難航するだろう。
それでも、世界に向けて結果を出したことは大きな前進に違いない。
世界の仲間入りを果たしたセブンズジャパン、次のチャレンジは10月末に開幕する予定の来季初戦、オーストラリア大会、と思ったら……
「昇格を決めたチームは、5月のスコットランド大会とイングランド大会に招待されることが決まったんです。昨日聞きました」と瀬川HC。
世界の戦いに向けて、ホッとする暇はない。だけど、今だけは喜ぼう。
誰かが笑顔を浮かべて言った。
「今日は思い切り飲むぞ!」
大友信彦 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。プロフィールページへ |