東京五輪へ「ラストチャンス」かけ火花!サクラセブンズトライアル | ラグビージャパン365

東京五輪へ「ラストチャンス」かけ火花!サクラセブンズトライアル

2019/08/10

文●大友信彦


連日猛暑が続く中、8月9日(金)、成田市の中台運動公園陸上競技場で、女子セブンズSDS(セブンズ・デベロップメントスコッド)合宿のトレーニングマッチが行われた。これは、「東京2020オリンピックの女子7人制日本代表トレーニングスコッドへの招集のためのセレクション」として行われたもの。

稲田仁HCによると、今年の太陽生命ウィメンズセブンズシリーズで光った選手に、サクラセブンズのオリンピックスコッドへの道を開くのが狙い。「太陽生命シリーズが日本代表(サクラセブンズ)に繋がっていないといけない」という声が日本協会理事会にもあり、この合宿につながったという。

代表トレーニングスコッドをかけたセレクションマッチ

今回の合宿に招集されたのは以下の17人。
片嶋佑果 29 三重パールズ
鈴木彩香 29 アルカス熊谷
小野ゆき 27 ながとブルーエンジェルス
平野恵里子 27 横浜TKM
寺内美樹 24 龍ヶ崎グレース
山下果林 24 アルカス熊谷
山中美緒 23 アルカス熊谷
磯貝美加紗 23 北海道ディアナ
福島わさな 23 東京山九フェニックス
葛西杏奈 23 自衛隊体育学校
庵奥里愛 22 三重パールズ
鵜川志帆 21 日体大4年
高崎真那 21 日体大3年
バティヴァカロロ・アテザ優海 19 アルカス熊谷/立正大2年
室越香南 19 追手門学院大1年
吉村乙華 18 福岡レディース/東筑高3年
今釘小町 17 石見智翠館高3年


うち、コンディション不良で吉村が不参加、福島が離脱、鈴木は前日の練習で軽度の肉離れを起こしこの日は試合に出ずサポートに回った。

セレクションマッチに出場したのは14人。黒と紺の2チームに分かれ、リザーブなし、7人対7人の勝負となった。チーム分けは次の通り。

黒チーム

アテザ優海

アテザ優海

 

寺内美樹

寺内美樹

 

片嶋佑果

片嶋佑果

 

庵奥里愛

庵奥里愛

 

山中美緒

山中美緒

 

小野ゆき

小野ゆき

 

磯貝美加紗

磯貝美加紗

 

紺チーム

葛西杏奈

葛西杏奈

 

室越香南

室越香南

 

 

今釘小町

今釘小町

 

山下果林

山下果林

 

高崎真那

高崎真那

 

鵜川志帆

鵜川志帆

 

平野恵里子

平野恵里子

 

GAME1は朝9時40分から行われた。
先制したのは紺だった。黒のアテザがPKの速攻でノーキックと判定されたスクラムからのアタックでWTB平野が左サイドを大きくゲインし、右に持ち出した室越から左の今釘にパスが通り、左中間に先制トライ。
黒もすぐに反撃する。紺のキックオフがノット10mとなったFKから攻め、フェイズを重ねてフリーになったWTB磯貝が左隅を攻略。5-5の同点に。

若いペアがみせた冷静なパス交換。室越(左)から今釘(右)へ、ラストパスが通る

若いペアがみせた冷静なパス交換。室越(左)から今釘(右)へ、ラストパスが通る

試合はさらにトライの取り合いとなり、6分には紺が、やはりフェイズを重ねたアタックから室越→平野とパスが通り、再び勝ち越しのトライ。

紺が12-5とリードして折り返すと、後半も紺がリズムをつかむ。紺が持ち込んだボールに黒の小野がジャッカルをしかけたがラックを紺が粘って出すと、人数をかけたことで手薄になった防御網に紺の鵜川が仕掛けてトライ。

紺は、プレーメーカーに並んだ大学1年の室越、高校3年の今釘という若いペアが大胆なパスで積極的にリード。速く長いパスを投げる2人が並ぶことで、外に立つ平野、山下という強いランナーが有効に機能した。

4分には平野が右サイドを走りきって2本目のトライ。22-5とリードする。

黒も自陣から再三、果敢に攻めたが、自陣でのアタックがスローフォワードになったり、相手ノックオンから攻め、アドバンテージが解消された瞬間にパスをカットされたりという不運もあり、追加点を奪えずじまい。紺が鵜川のインターセプトトライで29-5と大きくリード。タイムアップの後のラストアタックで磯貝がトライラインに迫るがあと5mで惜しくもタッチに押し出され、1トライのみに終わった。

GAME2・「ハードワーク、ディフェンスをみせてほしい」

この日の気温は日陰で36.9度。グラウンドは…氷が大活躍

この日の気温は日陰で36.9度。グラウンドは…氷が大活躍

GAME2は2時間後、約100分のインターバルを入れて行う予定だったが、気温の上昇を鑑み、約20分繰り上げ。
試合開始にあたっては、稲田HCから「最初の試合でみんなのアタックの能力は分かったから、次はハードワーク、ディフェンスを見せてほしい」というリクエストがあった。
試合は同じチーム編成で11時20分にキックオフ。

巻き返したい黒チームだったが、試合開始の黒のキックオフはノット10となり、紺がFKからアタック。左を平野、右を山下が攻め、右隅にトライ。GAME1に続いて紺が先制した、
その紺も、次のキックオフを失敗。黒はこのFKから攻め、ハーフウェイ付近で庵奥がディフェンスのギャップを突いてインサイドブレイク。そのまま約50mを走りきってポスト左にトライ。だがこのコンバージョンを山中が失敗してしまう。
波に乗れない黒に対し、紺はこの試合でも若いプレイメーカーが積極的にリード。
5分に鵜川-高崎と繋いだボールを受けた葛西が右隅に勝ち越しトライ。
ロスタイムに入り、黒が果敢にアタックしたが、片嶋のパスを追走していた紺の葛西がインターセプトして反攻。平野~山下とすないでトライを奪い紺が15-5とリードして折り返し。

後半も紺が先に点を取った。自陣ゴール前からアタックした黒の磯貝が孤立したところで平野が止めたPKから葛西が速攻に出てトライ。

しかし黒も粘った。4分、スクラムから庵奥が右へ大きく弧を描くランでゲイン、右隅ゴール前でディフェンスに追い詰められるが、サポートの寺内につなぎ右隅にトライ。黒が10-20と追い上げる。
黒は次のキックオフからも相手陣に攻め込み、インゴールに迫るが、紺がターンオーバー。自陣ゴールラインから高崎がカウンターアタックに出ると、室越と今釘が相手ディフェンスを見ながら冷静にパスを交換しながらビッグゲイン。そのまま100mを切り替えして今釘がトライを決め、25-10で紺が連勝した。

「今のサクラセブンズは若い選手が多いので、ベテランと若手をつなぐ中堅の選手にもっと出てきて欲しい」稲田HC

稲田HCは「太陽生命シリーズのパフォーマンスを見て呼んでみたけれど、外国人と一緒にやっているときと、日本人選手だけでやるときでは感覚的に違いがあったかもしれない。急な招集だったし、暑さのせいもあったと思うけれど、全体的にミスが多くて、ボールを失う場面が多かった。急造チームなので仕方ない部分はあったけど、球際の厳しさは物足りなかった」と総括。「東京オリンピックへのチャンスということは初日のミーティングで話したけれど、その思いが強い選手と、あまり表に出せていない選手とのばらつきがあった」と振り返った。
「チーム構成を考えると、選手層が薄いのはBKのCTB。それと、今のサクラセブンズは若い選手が多いので、ベテランと若手をつなぐ中堅の選手にもっと出てきて欲しい」と話した。

ペネトレーター兼フィニッシャーとして紺チームを引っ張った鵜川は「ここでいいプレーを見せられれば東京五輪に向けて代表に呼んでもらえると思い、自分の強みを出してやろう、外をスピードで走るだけでなく、ステップで裏に出たり、周りを見てパスを回したり、場面に応じてプレーを選択できた。楽しくできました」と笑顔をみせた。

プレイメーカーとして紺のアタックのリズムを作った室越は、「外側に平野さんというスピードもパワーもある強い選手がいたので、ディフェンスがいない状態で良いボールを送るように意識しました。太陽生命シリーズでは追手門は良い成績を残せなかったので、代表の合宿に呼ばれたときに学んだことをチームに持ち帰りたいと思ってやってきました。同年代の選手たちがたくさんサクラセブンズのスコッドに入っているので、私も入りたいという気持ちでプレーしました」

サクラフィフティーンのオーストラリア遠征から帰国したばかりでの招集ながら2トライと決定力を見せた平野は「オリンピックスコッドに入っていなかったので、正直、東京五輪はもうないのかな、と気持ちを15人制に切り替えようとしたところで、この合宿に招集があった。15人制ではコンタクト中心にプレーしていたので、スペースを狙っていくセブンズのスタイルの感覚を戻すのはちょっと難しかった」と明かしながら「若い選手が仕掛けが上手で、良いボールをくれたので走りやすかった」と若いチームメイトを讃えた。

炎暑の中、2試合4ハーフを戦い終えた選手たちが互いをねぎらう

炎暑の中、2試合4ハーフを戦い終えた選手たちが互いをねぎらう

一方、敗れた黒チームも個々の局面では良いプレーが目立った。
フィジカルの強さをみせたアテザは「体を当てる局面では手応えがありました。もっと広いスペースにアタックしたかった」とちょっと不完全燃焼だった様子。2年前、高3でサクラセブンズ入りしながら膝を痛め、今回は2年ぶりの挑戦。姉ライチェルからは「姉妹2人でオリンピックに出るよ」と励ましを受けていたというが、その姉の活躍には「うれしいけど、追い越したい」と対抗意識も燃やしていた。

今回の合宿で良かった選手は8月13日からJISSと熊谷、19日から弘前で行われるアジアセブンズシリーズに向けたオリンピックスコッド・トレーニングスコッドの合宿に追加招集されるという。また、今回コンディション不良でセレクションマッチに出られなかった選手、遠征等で合宿に参加できなかった選手もこれで除外というわけではなく、「国体も含め、年内はまだ国内の大会を見ていい選手は呼びたい」と稲田HC。アジアシリーズ、ワールドシリーズだけでなく、東京五輪に向けて日本で合宿する外国チームともトレーニングマッチを調整しているという。

五輪本番まで1年を切ったが、サクラセブンズ入りを目指す争いはまだ続く――。


大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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