太陽生命ウィメンズセブンズシリーズは8月2、3日に第3戦の花園大会を大阪・花園ラグビー場で行う。今季はワールドシリーズに倣ってグランドファイナル制を導入し、花園大会終了時点のシリーズランクで上位8チームが最終戦・札幌大会(プレミストドーム)で一発勝負の年間順位決定トーナメントに進む。
ここまでのシリーズランキング
第2戦・北九州大会を終えた時点のシリーズランキングは別表の通りだ。2大会終了時点で1位はパールズ、2位ながと、3位ナナイロ、4位フェニックス。9位アルテミ・スターズは花園大会でMAX20pを加えたとして26pなので、すでに27p以上を獲得しているパールズ、ながと、ナナイロはすでに『8位以内=グランドファイナル進出』が確定。4位のフェニックスも花園に出場した時点で27p=グランドファイナル進出が確定する。5位のTKMは、花園大会で8強入りすればその時点で28p以上が確定し、グランドファイナル進出が決まる。
今季、熊谷と北九州の2大会では8強の顔ぶれが同じだった。9位のアルテミ・スターズ、10位の追手門、11位のアルカスは8強入りし、さらに勝ち進まなければグランドファイナル進出はかなわない。
逆転のグランドファイナル進出を目指すアルテミ・スターズは花園大会ではパールズ、PTS、チャレンジと同じプールCに入る。PTSは北九州大会では初の4強入りを果たしているが、アルテミから見ると熊谷で19-29、北九州では0-7と接戦を演じている。DAY1初戦のアルテミvsPTSは最注目の一戦になりそうだ。

アルテミ、梅津悠月

PTS・秋田若菜
同じく10位からグランドファイナル進出を目指すアルカスはプールAで、ながと、TKM、フェニックスと一緒。追手門はナナイロ、ディアナ、日体大と同じプールB。ともに厳しい組み合わせだが、北九州大会でアルカスはナナイロと17-19、追手門はながとと19-19で引き分けを演じるなど潜在力は十分だ。すでにグランドファイナル進出を決めている相手に少しでも隙があればアップセットの可能性は十分あるだろう。

アルカス・鈴木柚来

追手門・福塚花音
トップ4チームはベストメンバーを揃えてきた
注目されたのは、すでにグランドファイナル進出を決めた4チームがどんな陣容で花園大会に臨むかだった。今大会はワールドシリーズと時期をずらすため、例年よりも開催時期が後ろにずれこんだ上、過去にない猛暑に襲われ、過去2大会で負傷者が続出している。年間最終成績は最終札幌大会のグランドファイナルで決まるだけに、主力を休ませる判断もありえるか?と予想されたが……31日に発表された各チームのエントリーリストを見ると、はっきりした負傷者以外はどのチームもベストメンバーをそろえてきた。
北九州大会の際、惜しくも準優勝に終わったナナイロプリズム福岡のベテラン中村知春は「グランドファイナルの年間優勝よりも、まず目の前の初優勝を取りに行きたい」と話していたが、すでに何度も優勝を飾っている上位チームも、グランドファイナルを睨みつつも目の前の大会を勝ちに来た形だ。もちろん、グランドファイナルをひとつでも上のシード順を取って有利に戦いたいという思いもあるだろう。だがそれだけではなく、各チームが、太陽生命シリーズのひとつひとつの大会の価値をそれだけ高く受け止めていることの表れに思える。

ナナイロ・中村知春
個々のチームを見ると、プールAでは北九州大会優勝のながとブルーエンジェルスでは、NZカンタベリー出身でマナワツ、ハリケーンズでプレー経験のあるフィア・ライコングが初登録。北九州大会ではメンバーを外れたベテラン藤崎春菜も再登録された。東京山九フェニックスも、北九州大会を欠場したトライゲッター尾崎夏鈴が復帰。プールBのナナイロプリズム福岡はベテラン中村知春やエースのレアピ・ウルニサウ、プールCの三重パールズもタリア・コスタ、サラ・ヒリニ、ガブリエラ・リマ、須田倫代ら過去2大会で活躍した主力を惜しげもなく並べた。

フェニックス・尾崎夏鈴が復帰
花園大会のみどころは、まずはDAY1の8強進出争いだ。過去2大会はまったく同じ顔ぶれが8強に進んだが、下位4チームも追手門がながとと引き分け、アルカスがナナイロと、アルテミ・スターズがTKMと、それぞれ2点差の激戦を演じるなど、上位と互角に戦う力はある。

ナナイロ・レアピ・ウルニサウ
優勝争いは過去2大会を制したパールズとながと、その2強と決勝を戦ったフェニックスとナナイロが中心か。特にナナイロは北九州でシリーズ初の優勝を目前で逃しただけに頂点への意欲は強い。エースのレアピ・ウルニサウを軸に、中村知春らベテランのハードワークで一戦一戦を戦い抜きたい。
北九州大会でチーム初の4位に躍進した自衛隊体育学校PTSは負傷者の関係で今大会は10人の登録。酷暑の中、少ない人数で過酷な戦いになりそうだが、無事戦い抜いて最終札幌大会へつなげてほしい。

北九州大会4位のPTS、今大会は10人で挑む
大会ごとに異なるメンバーで登場するチャレンジチームは、今回は大学生以上のシニア選手による編成。これは、同時期に菅平でコベルコ杯(全国高校女子合同チーム大会)が開催され、全国の高校女子トップ選手がそちらに集結しているため。

宮本和(RKUグレース)
今回は、8月17日の札幌大会で併催される入替戦に進めなかったRKUグレース、四国大、神戸ファストジャイロ、弘前サクラオーバルズ、名古屋レディース、愛媛ラガールセブンズから選手が選抜された。四国大時代に当シリーズで活躍した金島瑠奈、5月のチャレンジャートーナメントや6月のカレッジセブンズで実力を発揮していたRKUグレースのスピードスター宮本和(のどか)、高井優花、パワフルランナー成瀬晴菜、神戸ファストジャイロの神谷桃子ら、個々の能力では太陽生命シリーズで戦える能力は十分。パフォーマンスに期待したい。
北九州大会で気になったのは、正面のコンバージョンを外すケースが目立ったことだ。猛暑の中での試合が続くとあって、集中力の維持が難しいのかもしれない。コンバージョンの2点は接戦を分ける。トライのあと、各チームのキッカーのアチチュードにも注目したい。
最後に、北九州大会を終えての年間個人ランキングを紹介する。
トライランク

チャリティ・ウィリアムズ(東京山九フェニックス)の回転トライ。今大会も見られるか?
1位 レアピ・ウルニサウ(ナナイロプリズム福岡):19T
2位 タリア・コスタ(三重パールズ):16T
3位 チャリティ・ウィリアムズ(東京山九フェニックス):14T
4位 大谷芽生(ながとブルーエンジェルス):11T
4位 オリブ・ワザーストーン(三重パールズ):11T
6位 黒田美織(自衛隊体育学校PTS):10T
7位 ヨレイン・イェンゴ(横浜TKM):9T
8位 アカニシ・ソコイワサ(横浜TKM):8T
8位 三枝千晃(北海道ディアナ):8T
8位 堤ほの花(日体大):8T
8位 谷山三菜子(日体大):8T
8位 山田晴楽(アルカス熊谷):8T
8位 鈴木柚来(アルカス熊谷):8T

日本人選手としてはトップの大谷芽生(ながとブルーエンジェルス)
得点ランク

得点ランクトップを独走するレアピ・ウルニサウ(ナナイロプリズム福岡)。トライゲッターでもあり、キッカーでもあり、得点を量産する。
1位 レアピ・ウルニサウ(ナナイロプリズム福岡):117
2位 ヨレイン・イェンゴ(横浜TKM):85
3位 谷山三菜子(日体大):84
4位 タリア・コスタ(三重パールズ):80
5位 プルーニー・キヴィット(ながとブルーエンジェルス):75
6位 チャリティ・ウィリアムズ(東京山九フェニックス):70
7位 山田晴楽(アルカス熊谷):56
8位 大谷芽生(ながとブルーエンジェルス):55
8位 オリブ・ワザーストーン(三重パールズ):55
10位 黒田美織(自衛隊体育学校PTS):54
公式表彰はないが、太陽生命シリーズの年間トライ王は初代が山口真理恵(ラガールセブン)、以降も佐賀工(チャレンジチーム)時代の堤ほの花、石見智翠館高時代の原わか花、そして世界のスター選手の仲間入りしたニア・トリバーらが獲得しており、セブンズスターへのいわば登竜門。年間得点王の行方も含め、個人のパフォーマンスにも注目したい。
大友信彦 (おおとものぶひこ)
1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。
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