8月2日、3日に開催された「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2025第3戦花園大会」は、PEARLSが第1戦熊谷大会に続き今季2度目の優勝で幕を閉じた。ピッチ上は40度近い過酷なコンディションの中、繰り広げられた全34試合で印象に残る輝きあるプレーを見せた7選手を「ドリームセブン」として発表する。
2025/08/04
文●大友信彦
花園大会トライランク
1 タリア・コスタ(三重パールズ)12T
2 レアピ・ウルニサウ(ナナイロプリズム福岡)9T
3 平野優芽(ながとブルーエンジェルス)7T
3 黒田美織(自衛隊体育学校PTS)7T
5 アナ・ナイマシ(ながとブルーエンジェルス)6T
5 堤ほの花(日体大)6T
5 ジャズミン・フェリックスフォッサム(北海道ディアナ)6T
5 ダニー・マフィー(北海道ディアナ)6T
5 チャリティ・ウィリアムス(東京山九フェニックス)6T
10 オリブ・ワザーストーン(三重パールズ)5T

タリア・コスタ
花園大会でトライ王に輝いたのはMVPも受賞したタリア・コスタ。DAY1初戦ではチャレンジを相手に先制トライをはじめ3トライを奪ってチームを勢いに乗せると続くアルテミ・スターズ戦ではキックオフのノーホイッスルトライから3連続トライ。PTS戦でも1トライをあげDAY1だけで7トライを挙げると、DAY2初戦のアルテミ・スターズ戦でまたハットトリック。準決勝、決勝でもチームが必要なときに効果的なトライを決め、6試合すべてでトライ。合計て12トライを決め、太陽生命シリーズ3戦目で初のトライ王に輝いた。
「北九州で敗れたあと、もう一度ウィニングマインドを思い出して、誰よりも自分が勝つんだという気持ちで臨みました」とにっこり。足が速いのは「子供のときからです。特別なトレーニングをしたわけではない。遺伝だと思います。ママが昔陸上競技をしていて走るのが速かった」
100mのタイムは「わからない」が、最高速度を図った時の記録は「時速33.7キロ」というから、単純計算なら100m10秒6のペースになる(もちろんゼロからのスタート加速があるからそんなタイムにはならない。ちなみに100m9秒58の記録を持つ男子のウサイン・ボルトの最高速度は時速44.7キロ。これに準ずると12秒5くらいに相当するか?)
熊谷と北九州で連続トライ王だったレアピ・ウルニサウは9Tで2位。3大会合計はタリアとレアピが28でトップに並んでいる。グランドファイナルでは年間王座を巡る争いに加え、年間最多トライをめぐる争いにも注目したい。
花園大会得点ランク
1 タリア・コスタ(三重パールズ)60=12T
2 レアピ・ウルニサウ(ナナイロプリズム福岡)53=9T4C
3 プルーニー・キヴィット(ながとブルーエンジェルス)37=3T11C
4 アナ・ナイマシ(ながとブルーエンジェルス)36=6T3C
5 平野優芽(ながとブルーエンジェルス)35=7T
5 黒田美織(自衛隊体育学校PTS)35=7T
5 谷山三菜子(日体大)35=3T10C
8 永田花菜(ナナイロプリズム福岡)30=4T5C
8 ジャズミン・フェリックスフォッサム(北海道ディアナ)30=6T
8 ダニー・マフィー(北海道ディアナ)30=6T
8 堤ほの花(日体大)30=6T
8 チャリティ・ウィリアムス(東京山九フェニックス)30=6T
タリア・コスタがトライ王に加え得点王も獲得。2冠に輝いた。熊谷と北九州で連続2冠のレアピはトライランク2位でキッカーも務めるが、成功は4Cにとどまった。昨年の年間得点王・ながとのプルーニー・キヴィットは準々決勝のディアナ戦で3コンバージョンすべてを決める冴えをみせていたが、負傷で準決勝以降を欠場。チームにとってはもちろん、得点ランキング的にも痛手だった。
タリア・コスタ(PEARLS)得点60=12T

タリア・コスタ
圧巻のパフォーマンスだった。ナナイロプリズム福岡との決勝は開始直後、相手のサクラセブンズ吉野舞祐の突破に反応して激戻り、自陣ゴール前で間一髪タックルで倒してすぐジャッカルでPKを勝ち取るトライセービング。前半のラストプレーでは自陣深くから約80mを独走して反撃開始のトライ。

決勝:ナナイロ戦、前半終了間際のトライ
そして後半終了直前のラストプレーでは相手エースのレアピ・ウルニサウにウィニングジャッカル。大会6試合中3試合でハットトリックを決めるなど6試合すべてでトライをあげ大会12トライ60得点でトライ王&得点王の2冠。そして熊谷大会に続くMVP獲得。「北九州大会で敗れたあと、より強く自信をもってプレーすることを意識しました」という言葉通り、アタックだけでなくディフェンスも含めたトータルパフォーマンスすべてに自信がみなぎっていた。

ナナイロのトライゲッター、レアピ・ウルニサウを止めたタリア・コスタ

MVPに選出されたタリア・コスタ
中村知春(ナナイロプリズム福岡)得点14=2T2C

中村知春
キャリー、サポート、タックル、ジャッカル……試合のあらゆる部分にコミットし、チームに勇気とパワーを与え続けるスーパーウーマンだ。プール戦の日体大戦では完全に独走態勢に入った日体大・谷山三菜子を後方から追走し、トライこそされたもののコーナーに追い詰めコンバージョンの2点を防ぎ勝利に貢献。

日体大・谷山三菜子をゴール間際まで追走。簡単にトライをさせなかった。
ながとブルーエンジェルスとの準決勝では相手キックに反応して自陣ゴール前まで激戻りしてトライピンチを防ぎ、蹴ってはタッチライン際からのコンバージョンを決めるなど八面六臂の大活躍だ。パールズとの決勝でも相手ゴール前のPKで瞬時に速攻に出て先制トライ。

そこから逆転を喫し、2大会連続の決勝敗退。ナナイロ悲願の優勝はまた持ち越しになったが「悔しい……もっと丁寧にいかないと。でも面白い試合を見せることはできたと思う。優勝は簡単じゃないけど、それだけチャレンジする価値がある」人間はどこまで強くなれるのか? の問いに答えを提供し続ける37歳。
ヨレイン・イェンゴ(横浜TKM)得点28=2T9C

ヨレイン・イェンゴ
強い日差しを受けてカーリーヘアが輝く。横浜TKMの司令塔兼突破役として、すべての試合のすべての時間に安定したパフォーマンスでフルコミットし続け、正確なゴールキックを蹴りこみ、TKMを今季最高順位となる4位に導いた。
「第1戦ではまだお互いを理解できていなかったけれど、今はいいコネクションを持っています。次の大会でも上を目指していきたい」

輝くのはゲームがうまく行っているときだけではない。相手に独走を許した場面でも、ひとりになっても最後まで追い続ける姿は、試合によって、時間帯によってパフォーマンスに波があるTKMに活を入れているようにも見えるが「最後まで追いかけるのは当たり前のことでしょ」とサラリ。

日本でプレーする初めてのフランス代表選手。「ワールドシリーズで対戦した時から日本のプレースタイルにはとても興味を持っていました。ステップを使ってたくさん走る。そういったプレーを学べるのは自分にとってもチャンスだと思ったし、エージェントからオファーをもらったときには即決していました。この大会のレベルの高さには感激しています。ワールドシリーズで戦っていたのと同じくらい。このレベルでプレーできることを楽しんでいます」

フランス代表として東京&パリ五輪を戦った32歳の経験値とプライドが、真夏の日本でも輝く。
山本和花(横河武蔵野アルテミ・スターズ)得点5=1T

山本和花
ピッチに入ると味方ベンチのみならず時には相手側からも「ワカちゃーん!」の声が飛ぶ。独特の空気感を纏う人気者は日体大からアルテミ入りして5年目。15人制のポジションはプロップ。セブンズの試合ではあまりお目にかかれないが、ほんわか癒し系の雰囲気を漂わせながらタックルにブレイクダウンに体を張り、軽快に走りパスを放つ。

5位以下準決勝のPTS戦では前半ロスタイムに相手ゴール前でパスを受けディフェンスの隙間を突破してトライも決め、今季4度目の対戦で初勝利。最後の5位決定戦では母校・日体大を破り、アルテミ・スターズ史上最高順位となる5位躍進に貢献した(これまでは2023年熊谷の7位)。

「熊谷では勝てなかった(11位)けど、北九州でふたつ勝った(9位)ことで自信をつけて『私たちは勝てる』と思ってプレーしているのが大きいです」
北九州市の門司学園&福岡レディースではサクラxv長田いろは主将と同期の26歳。木川海や辻伶奈、松本栞ら若手が躍動するアルテミ・スターズを温かく見守るお姉さんだ。

17日の最終戦札幌大会は入替戦へ。2季前まで在籍した千北佳英が率いる早大との対戦だが「圧倒します」とキッパリ。花園大会5位の自信を胸に、北へ向かう。
勇 美玲(自衛隊体育学校PTS)得点10=2T

勇美玲
今季好調の自衛隊体育学校に現れた異色の新星だ。見るからにがっちりした体型。強みはフィジカルプレーかと思いきやそれだけにあらず、軽快なパスも操りランも繰り出し、DAY1のチャレンジ戦では先制トライを含む2トライ&1アシストの活躍だ。
出身は鹿児島県の離島・喜界島。幼稚園のころから島で盛んな女子相撲に励み、小6のときに全国優勝。しかし中学生の時「テレビで見た五郎丸さんがカッコよくて」ラグビーをやろうと決意。高校は本土の鹿児島実に進学したのを機にラグビーを始め「もともとなりたかった」という自衛隊でラグビーができることを知り入隊。

久留米、川内の駐屯地での研修、業務を経て自衛隊体育学校入隊。1年のトレーニングを経て今季、太陽生命シリーズにデビューした。公称サイズは165/76だが「もっと動けるように体重を絞っているところです。この体でも動けることを証明してチームに貢献したい。動きますよ! もとの体重は…言えません(笑)」
佐藤 優(北海道バーバリアンズディアナ)得点15=1T5C

佐藤優
DAY2の午後、7/8位決定戦のPTS戦、後半最初のプレーだった。相手キックオフからのボールを佐藤優が持ったのは自陣10m線と22m線の間。目の前には大勢のDF陣。しかし、小刻みなステップを踏んで相手DFを止めると一気の加速でDFの隙間を突破してそのまま約70mを独走。トライラインを越えてトライエリアに走りこむと飛び上がって喜びを爆発させた。
「久しぶりに走り切れました!ひとつ前の試合(日体大戦)でも同じような場面があったけどゴール前で捕まってしまったので、次にチャンスがあったらゼッタイ走り切ろうと思っていたんです」

今大会は1T5Cの15得点。
2014年、太陽生命シリーズが産声をあげた記念すべき第1回龍ヶ崎大会にはチャレンジチームのSOとして我孫子高3年で参加。以来、アルカス熊谷を経て北海道ディアナに加わり6シーズン。コロナ禍の影響で選手がそろわず、移動制限もあって大会に出場することさえままならないシーズンが続いたが「去年、リージョナルに勝って、もう一度この舞台に立てることになった。戻ってきて、やっぱりラグビーは楽しいなと感じています」

昨年はNZワイカトに留学。クラブでプレーし、ワイカト代表ではトップで1試合、デベロップメントで数試合に出場。「プレーだけでなく、ラグビーを楽しむ、ラグビー以外の時間もクラブの仲間と楽しむというラグビーの原点を学んできました。ディアナもそれを大事にしてきたチームだし、キツイ練習もオフザピッチの時間も楽しみたい。若い選手も入ってきて、自分のファイティングスピリッツも燃やしてくれて、うれしいです!」
次戦は地元・札幌でのグランドファイナル。支えてくれる仲間の前で、プレーできる喜びを表現する。
山田晴楽(アルカス熊谷)得点21=3T3C

山田晴楽
北九州大会では奮戦及ばず全敗、12位に終わったアルカスだったが、真摯な取り組みは報われる。DAY1最後のフェニックス戦では2点を追う後半ラストプレーで左サイドを激走、ステップを切って相手DFをかわしてポスト下に逆転トライを決め、26-21の勝利。得失点差で8強入りは逃したが、DAY2の9位以下戦ではチャレンジを36-5、追手門を12-10で破り9位フィニッシュ。どの試合でも、ディフェンスでボールを奪い、そのままラストミニッツまで走り切る山田の存在感は光った。

1日目のフェニックス戦で逆転トライを決める山田晴楽
「今年は松井渓南さんと共同キャプテンをやらせていただいて、その責任感を考えて、迷ったときがあったらまず自分がやろう、チームのために7分+7分の14分間フルにピッチで戦えるようにしよ柚目されてきた大器もうとずっとトレーニングを重ねてきました」

トライだけでなくキッカーとしてもチームにとって欠かせない存在に
アルカスユース時代から期待されてきた大器がパワーとスキル、フィットネスも高めてきた。次のステージでの活躍にも期待だ。
![]() (おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |