ラグビー日本代表は10日、宮崎に入り8月25日(日本時間の26日)に行われる、パシフィックネーションズカップ2024・カナダ代表戦に向け再始動した。11日、練習を終え、エディー・ジョーンズHCが取材に応じた。テストマッチは未だ勝利がないジャパンだが、エディーHCは、この休止時間について「ヘッドコーチである自分の責任を感じていて、今回は準備の部分をもっと丁寧にやっていきたいので休んでいない」と話した。エディーHCが感じた課題、そして問題とは。
「サマーキャンペーンで足らなかった事に全注力。フォーカスポイントをクリアにしたい」エディー・ジョーンズHC)
――PNC(パシフィックネーションズカップ)に向けた合宿がいよいよ始まりました
まずは、スタッフ陣は前入りだったんですが、なかなかこう触れるようなスタートと申しますが、地震を体験する衝撃的なスタートとはなりました。 スタッフの何名かにとっては地震も初体験で、なんとか落ち着きを取り戻して、やり直そうと新しい意識を持つきっかけになったかなと思います。今回の合宿は最初の3日はFW、BKに完璧に分かれてワークしています。FWはセットプレーとラック周り、BKはハンドリングと連携を深めることとコミュニケーションを上げることを目的に別々にワークしています。
――地震の影響は
誰にもケガもなくダメージなど大きな損傷も全くありません。自分は福岡でワールドラグビーの方と会うためにフライトを待っていたが、翌日、(宮崎に)戻ってきたときも大きな被害がなく安心しています。大きな影響はなく、影響があるとしたらスタッフの合流が1日遅れたことくらいでしょうか。合宿を続けるという意味では安全面を考慮して、承認をもらわないといけなかったが、すべてクリアになったので順調に進んでいます。
――合宿の最初の3日間で、ユニットごとの練習をする意図は?
まずはサマーキャンペーンに足らなかったことに全注力して、フォーカスポイントをクリアにしたい。エラーを減らさないとといけない。イタリア代表戦では56回のエラー、ターンオーバー26回だったことを考えるとユニットで集中した方が修正できると思った。
――新しいキャプテンは伝えたのか
決めましたが、本人に伝えていません。合宿の様子を見ながら発表していきたい。
――オフというか、3週間は選手に宿題を出したのか?
個々のプログラムは渡してあります。
――エディーさんは休めたのか?
自分としては、前回のサマーキャンペーンが終わった後 、憤りを感じていました。どちらかというと、チームではなく自分自身に関してとても大きな憤りを感じていて、個人的にイタリア代表戦に向けて、チームが準備しきれなかったことはとても残念でしたし、パフォーマンスに関しても本当に悔しい思いをしていました 。そこに関してはヘッドコーチである自分の責任を感じていて、今回は準備の部分をもっと丁寧にやっていきたいなっていうところを兼ねて休んではいません。
――具体的にどんな準備が悔やまれる?
自分としてはジャパンがプレイするたびに、やはり自分たちがいかに勝ちたいと思っているか、いかにどういった形でプレイをしていきたいか、といったような意識を皆さんに感じていただきたい、わかっていただきたい、伝わればいいなというふうに思っていた。
だが、イタリア代表戦では再現できていなかった。それが再現できてないのはやはり自分たちの準備不足だったのか、準備の度合いがどうしても直で反映される部分だと思っています。 それが例えば情報過多であったのか、それとも情報不足であったのか、間違った情報が渡っていたのか、セレクションが間違っていたのか。自分としてはどこが間違っているかわかっているつもりなので、わかっているからこそ同じ間違いを繰り返さないようにしていきたい。
「情報過多だったかな…」
――具体的にはどこが問題だった?
情報過多だったかなと思います。プレイするにあたって考え過ぎたのかな。イングランド代表戦の序盤は自分としては良かったと思っていて、このままでいけば勝てるという感触を得られたが、現実的にはそこまでいたっていないので勝てなかった。ジョージア代表戦でもまったく同じで立ち上がりは良かったが、レッドカードの影響と、最後の疲れがどうしても出てしまった。しかしながらエフォートが見えていた。ただしイタリア代表戦では最初の10分でそういった面を見せられなかったのは反省です。
――アウェイのカナダ戦に向けて
現状、まだキャンプに入って1日ですし、自分たちに集中しています。コーチ陣は準備していますが、3~4日後にカナダ代表に向けて準備していきたい。
――アウェイはチームが一つになる要素になるのでは?
短めの遠征なので、若手のスコッドにはいいチャンスだと思います。現状20キャップ以上保持しているのは、4人だけといったところもあるので、そこに関してはどうでしょうか…。自分が覚えている限りジャパンラグビー史上、一番若いスコットっていっても過言ではないのかなと思っています。
我々の一緒に成長していくいいチャンスだと思うし、「超速ラグビー」とはなんぞやというアイデンティティを構築できるいいチャンスだとも言っています。新しいキャプテンになるっていったところで、リーチだけに頼らないチームといったところも成長できると思いますし、いいチャンスになると思います。
――「超速ラグビー」というスローガンのバナーを練習場に飾ったのは? エディーさんのアイデアですか?
はい。隠すつもりもまったくなく、世界一の「超速ラグビー」を体現するためにここにいます。南アフリカはフィジカルがメインチームだし、オールブラックスはとても運動神経の良いチームであるように、ジャパンとしては世界一「超速ラグビー」が上手いチームになりたい、ならないといけない。それができることで勝つチームなので、そういったチームを表現したくてバナーを設置しました。
――3週間ぶりに選手たちと会った印象はどうですか?
何名かはリフレッシュしたが、何名かはコンディション落ちたかなと思うが、全体的にはフィジカルは良くなっている。初回よりも伸びている。チーム全体のコンディションは上がっているなと思います。今回、新たに若手からSH村田(京都産産業大2年)、WTB海老澤(明治大2年)、そしてセブンズからWTB植田(近畿大学4年)を招集しています。
植田はオリンピックを見ながらポテンシャルがあるなと思って、新たな経験値を積んでほしいと思いトレーニングメンバーとして呼びました。3名は同じ高校出身ということで奇遇だなと思います。
――アメリカ代表戦、カナダ代表には若手に超速ラグビーを経験させることはあるのでしょうか?
夏のキャンペーンと同じで、プレイできるベストな23名を選びます。
――アマト・ファカタヴァはリハビリ組として招集していますが……
(9月の)アメリカ代表戦まで戻ってくれればいいなと思っています。
――代表資格が5年間居住、から5年間その国のリーグでプレイしていれば良いと少し緩和されましたが。
そこに関しては、あまり自分は考えていません。自分たちはジャパンの才能を伸ばしていきたい。日本に戻ってきたメインの目的は外国人に頼らず、日本には日本の選手が活躍する場を作って、若手を育成していきたい。高校、大学からそういった選手を選び、チャンスを与えていき、外国人に頼らないラグビーを作っていきたい。リーグワンで、本当に日本人LOで安定的に、一貫性を持って出ている選手は2人しかいない。バスケットボールを見てもバレーボールを見ても背の高い日本人って十分にいるはずだと思うので、ラグビーとしてもそういった才能を発掘して見つけていかないといけない。
――PNC後は新たにメンバーを招集するつもりなのか?
何名かがケガから復帰すると思います。リーチはPNC後に復帰する予定ですし、姫野、フィフィタ、福田、梶村あたりも候補に挙がってくると思うし、(フランスでプレイしている)齋藤、タタフも選考の可能性あります。7~8名は再招集がかかる選手がいると思います。だからこそ次のPNCはとても大事で、若手のスコッドがいかに今後成長できるか。海外の遠征を得て一致団結して、その後もやり続けるかは良い点だし大きなチャレンジになると思います。