11日、NTTジャパンラグビーリーグワンは第15節を迎えた。今シーズンも残すところ今節を入れて4試合となった。11位の三重ホンダヒートはここまで勝ち点18。この試合に負ければプレーオフ進出圏内である6位の可能性がかなり厳しくなる。一方埼玉ワイルドナイツは途中2連敗したものの前節でトヨタヴェルブリッツに快勝しプレーオフを決めた。対象的な両チームの一戦は序盤からトライの取り合いで、前半は互いに3トライずつを決めて19‐19で折り返した。
後半の序盤10分でワイルドナイツが2トライで突き放すと、ヒートは2枚のイエローカードが出され勝負あり。13人でトップを走るワイルドナイツの攻撃を食い止めることは難しく、2トライと決められ26‐46と試合を決められてしまった。その後、互いに1トライずつを決めてノーサイド。
埼玉ワイルドナイツが53‐33で快勝。ボーナスポイントも獲得し勝ち点を60として再び首位に返り咲いた。試合後、ロビー・ディーンズ監督と、2ヶ月ぶりに戦線復帰し、ゲームキャプテンを努めたPR稲垣啓太の試合後コメントを紹介する。
HIGHLIGHT
埼玉パナソニックワイルドナイツ ロビー・ディーンズ監督

ロビー・ディーンズ監督
良かったです。特にボーナスポイントを獲得し、バイウィーク(お休みの週)に入ることができて嬉しいです。 ボーナスポイントは、今日我々にとって獲得可能な最大限のポイントですからね。 まずまずのスタートを切った後、自分たちで難しい状況に追い込んだようなところもありましたが、それからの選手たちのレスポンスは良かったですね。
ジャック・コーネルセンにとっては素晴らしい週でした。 彼と(妻の)マディの2人目の子供が昨日誕生しました。さらに自身のトライで祝うことができました。私たちは出産のタイミングについて心配していました。なぜなら、(リーグには)選手が子供の出産に立ち会うために出場を取りやめることを認める規定は何もありません。もしかしたら今後はルールを変更してくれるかもしれません。ともかく、今は選手たちが当然与えられるバイウィークを楽しみにしていることでしょう。
その前に、新しいキャプテンが試合について話してくれるでしょう。(彼はキャプテンとして)今のところ100%の成功率ですね。
ーー稲垣選手の場合は経験値もあるが、ゲームキャプテンを任せた理由
とてもシンプルです。彼はマナ(人徳)を持っています。彼は非常に尊敬されています。彼は多くを語る人ではありませんが、それは実は(彼の)長所なのです。そして、彼の言葉はよく考え抜かれており、常に的を射ています。
彼は非常に多くの経験をしており、良いことも悪いことも、何度も見てきました。チームの仲間はそれを知っています。ですから、彼らは、稲垣がわざわざ話すのは、それ相応の理由があることを理解しています。そして、もしあなたが幸運にもそのハドルを見る機会に恵まれたなら、その様子を目にすることでしょう。信頼、絆、アイコンタクト。そして、そのような互いへの敬意が多くのことを成し遂げています。
埼玉パナソニックワイルドナイツ PR稲垣啓太ゲームキャプテン

稲垣啓太
キャプテンを任されている試合ですごく光栄でしたね。でもキャプテンをやることじゃなくて、別にキャプテンだから、特別なことをやらないといけないと考えてはいない。自分が思ったことを、自分がやってきたことしかフィールドに出せないので、まず自分の仕事をしっかりと行う、そういった姿勢を皆に見せるというのは大事なことです。でもそれっていつもやっていることは変わらないので、キャプテンだからといってやることは変わらない。
コイントスから初めてやりましたけど。(ディーンズ監督:勝ったの?)負けました。(ディーンズ監督:面白いね)坂手もいつも負けてるんで。僕は初めてだったんで、「じゃんけんで決めるんですか?」って(聞いて)、(レフリーの)滑川さんに笑われた。
まあそれは置いといて、キャプテンとして今日のゲームを総括させてもらうと、間違いなくタフな試合になるだろうなと思っていました。天候も含めて、こういった試合で何が大事かというと、シンプルなラグビーに徹する。いわゆる余計なことはしない。50-50のパスは絶対にしない。前半の入りは良かった。
ただそこで自分たちに少し油断が生まれて、上手くいくもんだから。そこで50-50のパスをしてしまった。結果トライチャンスを2回決められました。自分たちのミスから自陣に攻め込まれて、キックを蹴られて、自分たちのミスで得点を決められました。前半何か崩されたというわけではなくて、全て自分たちでミスをしてしまったので、修正しないといけなかった。
試合中に僕は特に技術的なことは何も言っていない。ディフェンスは(ベン・)ガンターが喋ることができるし、アタックは京平が指示することができるし、僕がやってきたことは1週間メンタルを説いてきただけなんで。このメンタリティというのはこの1週間だけじゃなくて、この試合だけじゃなくて、これからも浸透させていきたいと思います。まあ浸透させるように今まで僕は行動でやってきたつもりなので、これからシーズンも佳境に入っていって、よりそこのメンタリティを作っていくのが大事になる。そういったところを伝えるようにしています。
ーー10数年前は大学でキャプテンをやっていましたけど
12年か13年前が最後ですね。でもみんなに意外ですねと言われます。まあ正直、キャプテンやることを今週言われた時にちょっと思い出したのは、別に大学の時のことは思い出してないんです。
ワイルドナイツに入団して1年目、ロビーさんと1対1でミーティングした時のことで、「チームのキャプテンをやれって言ったらどうする?」と。僕は大学の時にキャプテンにいい思いはなかったので、だからこそ自分がキャプテンをやることで自分が成長できるんじゃないかなと。だから僕はキャプテンをやりたいですって、ロビーさんとの話を思い出しました。
結局キャプテンやることはなかったんですけど、こうやって十何年経ってゲームキャプテン任されることになって、この年になって、まだすごく勉強させてもらってるなって思った。ロビーさんに勉強させてもらってますし、僕より年齢が下の選手が入ってきて、そういう選手からも勉強させてもらっています。そういう意味で、改めて自分はいるなと感じました。
「ゲームを離れて負けたことに対して、プレーをしていない状況だとより責任感を感じる」
ーーしばらくゲームから離れている間は、ワイルドナイツをどのようにご覧になってきましたか?
ゲームから離れて、2試合負けたシーンを直接スタンドで見ていたんですけど、もちろんプレーしていた選手はすごく責任を感じると思います。それ以上にプレーをしていない状況でそういうチームの敗戦を見ると、より責任感を感じるというか、それは僕だけじゃなかったと思うんですよ。みんなの表情を見るかぎり。
いかにチーム全員が、その一つの試合に対して、チームに対してコミットしているかということを僕は感じましたし、それは離れていないと分からない経験だった。出ている選手だけが全てじゃない。出ていない選手全員が責任を感じているんだなということを僕は実感しました。
改めてこのチームの強さって何なんだろうとすごく考えさせられる時間でしたし、復帰間近の時に、ヘッドとハートという二つのグループがチームに分かれています。ヘッドが試合に出る方で、ハートは試合に出ない。頭と心臓という意味です。チームの心臓となる部分は試合に出ない選手です。
試合に出ない選手が準備をしてくれて、相手の分析をしてくれて、対戦相手のパターンをいろいろやってくれる。僕はそっちのチームに12年目で初めて入ったんですけど、すごく勉強させてもらいました。最初はね、いろいろ教えないといけないこともあるんだろうかなと思っていたんですけど、逆に僕が、彼はこんなことができる、彼はこういう考え方ができる、こんな考え方は知らなかった。すごく勉強させてもらいました。
「僕が言えるのはメンタルのことだけです」
ーー先ほどメンタルをこの週間説いてきたという話がありましたけど、どんなことをしてきたのか教えてください。
試合に対して楽しんでやろうとか、そういうのがあまり好きじゃない。なぜかというと、やることをやって結果を出さないといけば楽しくないから。楽しむが僕は先に来ないので。ましてやバイウィーク前で、ちゃんとやることをやって結果を出さなかったら、クソみたいな1週間を迎えることになるぞ、そういうことをチームに一番最初に言いました。
そう言ってチームは何をしなければいけないのか、別に特別なことはやらなくていい。自分たちが持っているシンプルなことを100%に必死にやっていく。何も特別なことじゃないです。僕自身特別なプレーができるわけじゃない。スペシャルなプレーを求めているわけでも、僕が求めているわけでもないです。
自分の与えられた仕事を、エリアで確実に仕事をする。それを80分間積み重ねることが大事だと思います。それがチーム15人全員できたら最終的に結果が出ると楽しめると思う。楽しむのもいいけどやることをやる。難しいことを言ってはいない。プロとしてやるべきことをやる。それだけを言っていました。技術的なことは一番最初に言った通り、アタックだったら京平、ディフェンスだったらガンター、ラインアウトだったらルード、彼らが技術のことを全てカバーしてくれます。僕が言えるのはメンタルのことだけです。