6月21-22日、2日間にわたって行われた「太陽生命ウィメンズセブンズ2025・熊谷大会」は、PEARLSが4年ぶりの優勝を果たした。灼熱の熊谷で素晴らしいパフォーマンスを見せた選手たちを、全試合現地取材を行った本誌が独自に「ドリームセブン」として選出する。
2025/06/24
文●大友信彦
タリア・コスタ(三重パールズ)45点=9T

タリア・コスタ
ワールドシリーズ100トライの実力を太陽生命デビューで爆発させた。
デビュー戦となったDAY1のアルテミ・スターズ戦の開始30秒、庵奥里愛のオフロードパスを受けて左サイドを55m独走したのを皮切りに、2戦目のPTS戦では5-12のビハインドで折り返した後半早々同点に追いつくトライと、7分のサヨナラトライ。日体大戦はDF2人をステップでかわす40m独走など2トライ。

DAY2は準々決勝の日体大戦で先制トライ。切れ味鋭いステップを披露したと思うと、準決勝のながと戦では約80m独走の豪快トライを2本。フェニックスとの決勝でも後半5分、勝利を決定づける80m爆走。トライ王こそ1差で逃したものの、全6試合でトライを取り続け9トライをスコア。パールズの優勝の原動力となりMVPに輝いた。
「日本に来てこんな経験ができるなんてとてもハッピーです。チームのために働けたのがうれしい。チーム全体の努力が証明されたと思う。ブラジルも暑いけれど、ここはもっと暑かった(笑)」

154cm55kg。小柄で細身ながら軽量スポーツカーを思わせる加速力は圧巻。
ポルトガル語しか話せず、ふだんはともに加入した英語を話せるガブリエラ・リマが通訳してくれるが、試合ではリマが不在の時間もある。
「コミュニケーションの難しさはあるけれど、チームメートがジェスチャーを見て、何をしたいか分かってくれる。たのしくできました。トライはワールドシリーズで取るのもここで取るのも同じフィーリングです」
28歳の南米超特急は今大会を席巻しそうだ。
サラ・ヒリニ(三重パールズ)5点=1T

サラ・ヒリニ
2年前にもパールズに参加したが、書類の提出が間に合わなかったことがありプレーできず。2年遅れの仕切り直し太陽生命デビューとなったが、ゲームのあらゆる局面にコミットし、「世界一のセブンズプレイヤー」という名声に偽りなしを証明した。
大会初戦となったDAY1のアルテミ・スターズ戦では後半キックオフから25秒、ノーホイッスルで⑪ガブリエラ・リマからオフロードパスを受けてトライ。得点は2日間でその1トライだけだったが、その後もタックルにリンクプレーにフルタイムでコミットし続けた。特筆されるのはディフェンスでの決定力。DAY1の日体大戦、サクラセブンズの若きエース谷山三菜子がボールを持ったところで身体ごと抱え込み、自由を奪うやボールも奪い、そのままタリア・コスタのカウンタートライへつなげた場面は圧巻。そんなサラのハードワークはチームメイトにも伝染し、止め続けるだけでなくボールを奪うディフェンスが威力を発揮した。
「これまでの経験で身につけたスキルもあるし、チームメートと一緒に練習を通じて学び続けているところでもあります」
奥野わか花(東京山九フェニックス)30点=6T

奥野わか花
昨夏のパリ五輪以降セブンズからは離れていたが、DAY1の3試合で6トライをあげDAY1トライ王になるなどさすがのトライゲッターぶりを発揮。圧巻は追手門戦の前半3分、自陣ゴール前でボールを持つと、2人のDFに囲まれながらも中央を突破して猛加速して95mを独走。熊谷大会ベストトライにあげられそうな圧巻のトライを決めると、後半5分にも80m独走するなどこの試合だけで4トライをあげた。負傷のためDAY2は欠場したが、DAY1の3試合で存在感を改めてアピールした。タリア・コスタとの対決は次回以降へのお楽しみに。早期復活を祈りたい。
チャリティ・ウィリアムス(東京山九フェニックス)40点=8T

チャリティ・ウィリアムズ
東京山九フェニックスの決勝進出の立役者と言って良いだろう。あるときはスクラムを押し、あるときはSH役となってパスアウトし、エッジに走り込んではトライを決める。ディフェンスも含めたワークレートの高さは圧巻。DAY1のプールC1位通過をかけたTKM戦では、19-14で迎えた後半6分、自陣22m線付近でボールを持つと相手DFをステップで交わすと一気に加速。80mを独走して相手トライラインに頭から飛び込むと、懐かしの青春ドラマを思い出させる「回転トライ」。

チャリティ・ウィリアムズの回転トライ
DAY2の準決勝ナナイロ戦でも10-7で迎えた後半開始のキックオフを捕ると、そこから相手タックルを受けながら突破さらに突破で70mを独走。最後はゴールポスト下に鮮やかな回転トライを決めてスタジアムを盛り上げた。
オリンピック3大会出場は世界最多タイ記録だ。
レアピ・ウルニサウ(ナナイロプリズム福岡)62点=10T 6C

レアピ・ウルニサウ
10トライでトライ王&62得点で得点王の2冠を獲得。準優勝した2023年花園大会以来の3位へとナナイロを引き上げ、2023年ワールドラグビー・セブンズプレイヤーオブ・ザ・イヤーノミネートの実力を証明した。

今季のシリーズ開幕戦となったDAY1のアルカス戦では3分、自陣22m線付近でボールを持つと、相手3人のタックルを受けながら抜群のボディバランスで体勢を保ち、細かいステップを踏みながら再加速して約80mを独走するセンセーショナルなトライ。ながと戦では自陣からの70m独走を含む2トライで前年チャンプ撃破の原動力となり、3位決定戦での再戦でも2T1C。フィジアンらしい独特の柔らかいステップ、ストップ&ゴーの緩急コントロールでビッグゲイン&トライを量産した。
内海春菜子(横浜TKM)25点=5T

内海春菜子
ワールドシリーズバンクーバー大会で世界4強入りを果たすなど世界で躍進を続けるサクラセブンズ勢は今大会、そろって質の高いパフォーマンスを披露。世界基準を大会にフィードバックし続けた。その代表格が内海春菜子だ。
初戦となったDAY1の追手門戦、開始0分の先制トライを皮切りに前半だけで4トライという固め打ちでチームを牽引。司令塔兼突破役はピッチでは161cm、60kgのサイズ以上に大きく見え、ボールを持ったときの相手に対する威圧感、視野の広さとオプションの多さには風格が漂う。
山田晴楽(アルカス熊谷)33点=5T 4C

山田晴楽
今季の開幕を告げるDAY1最初のゲームとなったナナイロ戦の開始55秒、右隅のラックから出たボールを受けるとDFと2対2になりながら間合いを見極め、パスダミーから相手の隙間をすり抜けて大会ファーストトライ。
DAY1は世界のトップ選手を呼び集めた上位チームの壁には苦しんだが、DAY2はアルテミ・スターズ戦で2T2C、追手門戦では自陣から約70mを独走する豪快トライ。ビッグゲインありアジリティを活かした狭いスペースの突破ありと獅子奮迅の働きで、アルカスを9位フィニッシュに導いた。
![]() (おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |