エディー・ジョーンズHC夏ツアー総括会見全文「チームを変えるということは、若い選手たちを連れてくるということであり、彼らには時間が必要で指導が必要で、忍耐が必要」 | ラグビージャパン365

エディー・ジョーンズHC夏ツアー総括会見全文「チームを変えるということは、若い選手たちを連れてくるということであり、彼らには時間が必要で指導が必要で、忍耐が必要」

2024/07/23

文●編集部


21日のイタリア代表戦を終え、夏ツアーを終えたラグビー日本代表。チームを率いるエディー・ジョーンズHCが強化試合2試合、テストマッチ3試合、計5試合と選手たちの成長、さらに8月下旬から行われるパシフィックネーションズカップに向けた意気込みを話した。

現在の成績がチームにとって当たり前ではないことを伺わせた

イングランド戦との初戦。若いジャパンにとっては力の差を見せつけられた

イングランド戦との初戦。若いジャパンにとっては力の差を見せつけられた



――6月、7月の代表活動を総括して


厳しいスタートでした。負けてスタートするのはいつも厳しいですが、チームの方向性については本当に前向きに捉えていますし、時間が必要だと思っています。チームを作るには時間がかかります。現在(選手の総キャップは)200キャップあるんですが、そのうちの90近くはリーチ マイケルのもの。だから、チームとしてはまだ始まったばかりですし、それでもチームは十分に力を発揮したと思います。

イングランド代表戦の試合の一部、イタリア代表戦の試合の一部、そしてジョージア代表戦の試合の大半は1人少ない状態での試合は、現在の成績が、チームにとって当たり前ではないことをうかがわせるものでした。

初戦のイングランド戦と最終戦のイタリア戦では明らかにそのパフォーマンスが違った

初戦のイングランド戦と最終戦のイタリア戦では明らかにそのパフォーマンスが違った



素晴らしい若手選手も育ってきています。FB矢崎由高が大学時代に世界のトップクラスのチームとテストマッチを3試合も戦ったことを見れば、その成果はおわかりいただけるでしょう。そして、彼はこの状況に見事に対応しましたし、まだアマチュアの選手です。

(今後)30回、40回とテストマッチをこなしたときに、彼がどれだけの力を発揮できるか。彼がどれほどの選手になれるか考えると恐ろしいほどです。それに、若いFW陣もいる。イタリア代表戦では少し苦戦したが、彼らにとってはいい勉強になった。でも、彼らも時間とともに成長していくだろう。

ジャパンの新たなフロントロー、左から、竹内、原田、茂原

ジャパンの新たなフロントロー、左から、竹内、原田、茂原



だから、みんなががっかりしているのはわかります。結果には失望しているが、チームの方向性には失望していない。時間がかかることはわかっているし、この期間は難しい時間だった。(2023年)ワールドカップの後、若くないチームであることはわかっていたし、チームを変えなければならないこともわかっていた。チームを変えるということは、若い選手たちを連れてくるということであり、彼らには時間が必要で、指導が必要で、忍耐が必要です。

――強豪に勝つには今後、どのくらい時間が必要だと思いますか


それはわからない。このような若いチームを作るときに一般的に言えることは、チームとしてハードワークするということ。チーム一丸となってね。そして、どこかの試合でブレイクスルーを起こす。私の経験では、(勝利した)2012年のウェールズ代表戦がそうだった。あの試合は突破口となる試合で、チームが本当に自分たちを信じ始めた。

リーチ・マイケル

リーチ・マイケル



(今回)それがいつになるかはわからない。そのための計画を立てたいけど、計画なんて立てることができない。ただハードワークを続け、信念を貫き、適切な選手を選び、その突破口を開くだけです。その時は必ずくると思います。

――超速ラグビーの選手の理解度は?


各試合の最初の20分間を見ると、大体において、私たちがどのようにプレーしたいかということに対する選手の理解度は非常に高いです。しかし、プレッシャーがかかるとすぐに古い習慣に戻ってしまう。残念ながら、プレッシャーが古い習慣に戻してしまう。




前回のワールドカップから、世界のトップ10チームに勝てるようなチームを作りたい。でも残念ながら、プレッシャーがあると古い習慣に戻ってしまうので、やはりできることは、より良い習慣を作ることです。

これはトレーニングでやっていることで、PNC(パシフィックネーションズカップ)でもやるつもりです。でも、選手たちは、かなり自分たちがどうプレーしたいかを理解していると思います。


もちろん、彼らも他のチームと同じです。プレーの仕方に見解の相違があるのです。ゆっくりと、体系的なラグビーをしたい選手もいるでしょう。また、一方で速いラグビーをしたい選手もいる。

しかし、私がわかっていること、そしてジャパンで議論の余地のないことのひとつは、世界のトップチームに勝つためには、『(超速ラグビーで)集団的なスピードでプレーしなければならない』ということです。だから、私たちはその道を進み続けなければならない。




――ハーフ団の状況判断をよくするにはやはり時間がかかるのか?


オーストラリアでとても有名なラグビーリーグのコーチに会ったことを覚えています。彼は「私は30年間コーチをしているが、意思決定をどう指導すればいいのかわからない」と言った。そして、イングランド代表のSOマーカス・スミスを例に挙げると、

彼は今、35くらいのテストキャップだ。彼は最初の15キャップ目くらいまでよりもはるかに良い判断をしている。ただ、これはトップレベルの試合から学ばなければならない。下のレベルでは意思決定を向上させるのは難しい。時間とスペースがあるトップレベルで、それを向上させなければならない。そこからいい選手が出てくるので、試合が重要です。

マーカス・スミス

マーカス・スミス



私は負けず嫌いだが、(日本代表を率いるという)このプロジェクトについては現実的です。前回のワールドカップの後、古くなったチームを引き継ぐという難しいプロジェクトです。だから若い選手を起用しなければならない。




でも、例えば矢崎のような選手は、3回のテストに出場しただけでも判断力が向上した。試合後、私のところに来て、もっといい選手になるにはどうしたらいいか教えてほしいと言う。だから今の若い選手たちを見れば、日本が以前よりも意欲的になっていることがわかります。しかし、彼らはレベルの高いラグビーに触れる機会がなく、その経験を試す機会もない。


――イタリア代表戦で、超速ラグビーをしようとしていましたが、SO松田はボールを持って少し悩んでいるように見えました。試合の中で経験を積ませることが解決策となるでしょうか?


100%、その通りだ。だからこそエキサイティングです。だって、こんなに若い選手たちがいて、こんなに成長しているんだから。もし、こういう試合でチームキャップが500で負けていたら、僕はここに座って心配していただろうね。でも、私たちはまだスタート地点に立ったばかり。

イタリア戦で初キャップを獲得した桑野詠真

イタリア戦で初キャップを獲得した桑野詠真



まだ若い子どもたちが、このチームで自分の仕事を学んでいるに過ぎない。イングランド代表は世界のトップ4、イタリア代表は世界のトップ8、ジョージア代表は我々と同じくらいのランキングにいる。

でも、若い選手たちのことを考えると、彼らがどれだけ成長し、これから3年間、日本のラグビースタイルでプレーする機会がどれだけあるのか。だから、本当にエキサイティングなことだと思う。


――SO田村優のような経験値のある選手が必要か?


考える余地はあります。私たちはただ、適切なシニアプレーヤーを獲得することに目を向けなければなりません。今、SO田村を個人的に評価するつもりはありませんが、リーチのFWの経験は貴重です。(松田)力也と立川(理道)はBKで価値を高めてくれていますが、若い選手たちを成長させるために、シニアプレーヤーがいないわけではありません。でもいい指摘です。

立川理道

立川理道


――イタリア代表戦ではFW陣が接点でやられた影響が大きかったです。


イタリア代表は私たちにとって強すぎたが、我々はそれに向き合わなければならない。彼らは僕らにとってあまりにも素晴らしく、(セットプレーでも)フロントローがタフすぎるし、彼らのスクラムの組み方に対応できなかった。彼らはスクラムの組み方が少し違っていた。

ラインアウトの面でも、彼らは我々より前に出てくる。(でも日本代表の)フロントローは若い。原田3キャップ。竹内6キャップ。茂原3キャップ。それぞれ50キャップを持つイタリアのフロントローの経験には対応できなかった。

そう。だから、それは選手たちが受けるレッスンで、それこそが自分たちが学ぶ唯一の方法だ。ワーナーはまだ6、7キャップに満たないのでは? そう、彼はまだラインアウトのコールの仕方を学んでいるところなんだ。これらは最も貴重なレッスンだ。これがチームを作るレッスンなんだ。



だから、もちろん結果にはがっかりしているが、チームとしての方向性には失望していない。彼らは勇気とタフネスを発揮し、相手がちょっと良すぎるような試合でも粘り強く戦っていた。でも、現段階では、対戦したチームは我々よりも格上だということを認識しなければならない。魔法の粉を吹いたからといって、突然すべてが変わるわけではない。ハードワークが必要だ。どこに向かっているのかというビジョンが必要だ。

――5試合中、ハーフ団の組み合わせが4つとメンバーを固定しなかった。その意図は?


4年計画だ。最初の1年は才能がどこにあるのか、誰が選手として進歩し続ける適性を持っているのかを見極めたい。今年は、日本にどんなタレントがいるのかを見極めたい。まだコンビネーションを見つける必要はない。2年目、3年目となればもう少し組み合わせを検討すし、4年目は、もちろんベストの33人がほしい。でも今年は、いろいろな組み合わせを見て、選手たちに自分の力を発揮するチャンスを与えていく。そして本当に良い選手はその能力を発揮し、そうでない選手はどんどん後退していくのです。


3つのテストマッチで一番出場時間があったSO李承信

3つのテストマッチで一番出場時間があったSO李承信



――SH齋藤直人(トゥールーズ)はPNCに呼ぶのか、またPNCの目標は?


齋藤はPNCには参加しません。彼はトゥールーズに行くだろうし、私たちはそれを応援します。

PNCの目標は優勝すること。しかし、私たちが見たいのは、チームが進歩し続けること、日本チームのアイデンティティを持ってプレーし続けること、そしてセレクションの面でも、私たちにとって重要な時期になる。

齋藤直人はPNCには参加しない

齋藤直人はPNCには参加しない



シーズン終盤には(欧州への)ツアーがある。日本代表にとって大きな試合が3つ(オールブラックス戦、フランス代表戦、イングランド代表戦)ある。だから、(大事な試合に対して)それに少しでも近づけるようにしたい。僕らのベストメンバーは、そういった大きな試合をしていく。

修正したい点は「ターンオーバー、そしてハンドリングエラー」

エディー・ジョーンズHC「修正すべきはターンオーバーされた数とハンドリングエラーの数」

エディー・ジョーンズHC「修正すべきはターンオーバーされた数とハンドリングエラーの数」



――6月~7月のサマーシリーズを踏まえて修正したいことは

 
ゲームのスタッツを見ると、そうだ。テストマッチでは7~8つのスタッツがあり、それに基づいて99%の結果を予測する。我々はキャリーメーターに優れていますね。アタックは素晴らしい。キッキングゲームを追加する必要があるが、それはほとんど経験を積めばできるようになる。だから、それは3、4年かけて発展していくだろう。

我々の規律、ペナルティの数はかなり良かった。ジョージア戦ではレッドカードとイエローカードがあったが、概して言えば、我々の規律は良い。一貫してできなかったのは、ボールをターンオーバーされた回数だ。

イタリア代表戦では、イタリア代表の18回に対して我々は27回もターンオーバーされた。そしてそれが試合を制する差となった。その内訳は、ラインアウトで7回ターンオーバーされた。おそらく、世界で最も強力なラインアウトディフェンス・チームのひとつであろうイングランド代表とも対戦しましたが、ニュージーランド対イングランドテストマッチを見れば、イングランドが実際にニュージーランドを圧倒しているのがわかる。ワーナーは今、自分の技術を学んでいるところだから、すぐに解決するでしょう。

ゴール前のノックオンは改善しなければならないポイントの一つ

ゴール前のノックオンは改善しなければならないポイントの一つ


しかし、その他の重要な点はハンドリングエラーだ。9回もボールを相手に返してしまった。だから、その部分を改善する責任は選手たちにある。もしターンオーバーレートを減らすことができれば、試合に勝つためにもっといいポジションにつけるだろう。それから、もうひとつは、ラグビーのやり方が必要だということだ。相手のゴールラインまで行くと、15人のディフェンダーがいる。

(横幅が)60mですから、(ディフェンダー)2人の間にスペースはありません。そこで非常にオーソドックスなパワーゲームに戻ってしまった。もっと良いゴールラインアタックを考えなければならない。それには流動性が必要だし、もっと動きが必要だ。そのためにはかなり革新的でなければならない。PNCではターンオーバー(が起きた要因)を改善し、ターンオーバーを減らしたい。ゴールラインアタックも改善させていきたい。


――PNCのセレクションについて。一部の選手を休ませたり、6月~7月に呼んでいなかった選手を呼ぶのか


35歳以上の選手はお休みにします。だいたいどの選手も参加したがっているし、プレーしたがっている。どの選手にも身体的な心配はないと思っている。ただ、(35歳)リーチには休養が必要だ。彼は東芝でのケガを抱えており、リハビリが必要なので休ませます。しかし、このステージの残りの選手はセレクションに参加できます。

リーチもPNCには参加しない

リーチもPNCには参加しない

――矢崎が早稲田大学に戻ったときにやってほしいことは?


昨日、本当に真剣に話をしました。(永友)洋司の素晴らしい仕事は、大学とのより良い関係を築いたことであり、大学も私たちに選手を送りこみたがっている。だから矢崎にとっては、早稲田大に戻ることが重要です。

国際的な選手のようにトレーニングし、国際的な選手のようにプレーする。周りの選手たちにそれを示す。そしてチームを盛り上げる。だから、それは若者にとって重要な責任です。

矢崎由高

矢崎由高



彼はまだ20歳だけど、そうする必要がある。そうすることで、彼は大学ラグビーのレベルを上げることができるんだ。森山(飛翔)も東京に戻り、同じようなことをしてほしい。早稲田大主将の佐藤(健次)も東京(のチーム)に戻り、(明治大)FL利川(桐生)も東京(のチーム)に戻り、彼らは全員、より高いレベルでトレーニングを積んで、大学チームのレベルアップに貢献する。それは今後、重要なことかもしれない。そして、それは漸進的な変化に過ぎないだろうが、重要な変化になるだろう。

佐藤健次はマオリ・オールブラックス戦で初トライを決めた

佐藤健次はマオリ・オールブラックス戦で初トライを決めた



日本ラグビーの未来は、間違いなく大学の選手たちだと思います。でも今後8年間は、大学選手の育成がカギになる。ご存知のように、リーグワンでは、リーグ戦は完全にプロ化されています。だから、日本人選手の出場機会は53%しかなかった。

そのため、日本人選手の育成は大変だった。大学からの8年間の選手育成は非常に重要で、私たちは大学側のサポートに感謝しています。日本のラグビー史上、おそらくいつにも増して、大学ラグビーが重要になるだろう。

森山飛翔もトップレベルの試合を経験した

森山飛翔もトップレベルの試合を経験した



――若い選手が早めにリーグワンでプレーする可能性はある?


(永友)洋司はリーグワンの選手たちを扱わなければならない。第一に、私は大学生選手全員に勉強することを勧めたいし、きちんと勉強することは大切な規律であると同時に、リーグワンでプレーする機会もあるだろうし、海外でプレーする機会もあるだろう。

先日、矢崎選手がパソコンを見ていた。チームルームに座って勉強していると言った。僕にはインスタグラムを見ているように見えたけど(笑)。ちゃんと勉強する必要がある。それは重要な規律だ。同時に、海外でプレーする経験を積ませることもできるし、リーグワンへの二重登録の可能性もある。

――ハーフ団の状況判断は、昔はかなり決めていた部分もあったようだが、今は任せている部分が多いのか


私たちがやりたいプレーは、基本的にボールの75%をラインアウトかキックリターンから得るというもの。ポゼッションは大きく分けて2回あるので、世界のほとんどのチームと同じようにラインアウトからアタックを始めます。

山沢拓也の10番も今ツアーでは印象的だった

山沢拓也の10番も今ツアーでは印象的だった



かなり規律が良いので、選手たちはラインアウトで多くの決断を下すことはないし、それは世界のほとんどのチームにとって同じことだ。この3つのフェーズの後は、勢いに基づいて決断してほしい。今の段階では、多くの選手がそれを理解していない。

しかし、私たちはゆっくりと、ゆっくりとそれを教えている。無理強いはしたくないし、強制もしたくない。彼らは学ばなければならない。判断のいいキック1本で、相手にプレッシャーをかける場面は何度もあった。

私たちはまだそれができていないが、選手はそれを学ぶはずだ。しかし、それは一つの決断について学ぶことではありません。ゲームの原則を学ぶ。例えば、ボールを奪って前進しているのなら、プレッシャーをかけ続けたい。

そして相手のウイングが上がってきて裏のスペースを開けたら、そのスペースにキックを蹴る。サイドからサイドに展開するのであれば、キックを蹴るスペースを作らなければならない。でも、それは個々の判断というより、プレーの原則なんだ。だから、両方の要素がある。

WTBとしての存在感を見せたジョネ・ナイカブラ

WTBとしての存在感を見せたジョネ・ナイカブラ



我々はゲームの原則を教え続け、選手たちに決断させる必要がある。というのも、特にリーグワンの選手たちの多くは、非常にパターン化されたスタイルでプレーしているからだ。だから、彼らはパターン通りにプレーするだけ。私たちが彼らにしてほしいのは、ゲームに入るためのパターンがあるし、もし前進していないなら、前進する方法を見つけなければならない。だから、それが質問の答えになればいいと思っています。


2027年にむけたエディージャパンの初ツアー。勝利に貪欲でありつつ、しっかりと2027年を見据えていきたい。

2027年にむけたエディージャパンの初ツアー。勝利に貪欲でありつつ、しっかりと2027年を見据えていきたい。


記事検索

バックナンバー

メールアドレス
パスワード
ページのトップへ