2007年のラグビーワールドカップ(以下、RWC)フランス大会に取材に行く前、フランスのラグビー観戦にすごく違和感があった。テレビで試合を見ていると、実況アナウンサーや解説者の声の向こうにブラスバンドの音がブンチャカ入って、「うるせえな!」と思っていたのである。
現地で聞いたブラスバンドはとても心地よかった
高校生の頃にNHK地上波で食い入るように5カ国対抗(当時の表記)を見ていた人間にすれば、ブリテン島やアイルランド島で行われる試合で自然発生的に歌声が聞こえるのは重厚な“本場感”があって好ましかったが、ブラスバンドは、「ラグビーは紳士のスポーツ」といった神話を信じ込まされていた私にとって、チャラけているとしか思えなかった。以来その後も、RWCに何度も取材に行ったくせに、あのブラスバンドだけはどうにも許し難かった。
しかし、百聞は一見にしかず。現地で聞いたブラスバンドはとても心地よかった。
何より、タイミングが絶妙で、まったくプレーを妨げない。
しかも、タイトルはわからないけど、フランスのラグビーソングとして有名な歌があって、負傷者がストレッチャーに乗せられてピッチを去るときによく演奏されていた。これが、何とも哀愁があって、いいんですね! ボルドーでジャパンがカナダと引き分けた試合直後に4万人の観衆がこの曲を歌ったときは、ジーンと感動が込み上げてきた。フランスのラグビーソングは、国歌『ラ・マルセイエーズ』だけと思い込んでいた私には非常に新鮮な発見だった。
この曲の題名を知ろうと、パリで行われた試合で隣に座っていたフランス人記者に曲が流れた瞬間に「なんていう題名?」と尋ねたが、どうもあまりラグビーに詳しい記者ではなかったらしく、返ってきた答えは「なんか南部でよく歌われるラグビーの歌だね」だった。
残念。
同じように、曲名は知っていたものの「なぜ、この歌がここで?」と疑問に思った曲もあった。