ワールドカップはいよいよ残り2試合になりました。
今回は「増刊号」ということで、決勝の注目点僕なりに解説してみたいと思います。まず、準決勝までの戦いを見て、決勝に進出した両チームはいったいどんなチームなのかを、僕なりに整理してみました。
ニュージーランド(NZ)の強さは「カオス」
まずNZですが、このチームの強さは「カオス」だと思います。
カオスという言葉には「混沌」とか「無秩序」とかいうニュアンスがありますが、実は関連する言葉に面白いものがあるんです。それは「オーガナイジング・カオス」と言って、和訳すると「統率された混沌状態」。単に無秩序でぐちゃぐちゃしているんじゃなく、個々の構成員は一定のルールで動きながら、なおかつ何にも縛られてはいないという状態です。
一例をあげると「イワシの群れ」です。
明確なリーダーも、指揮系統もないけれど、集団が統制のとれた動きで連動できる。
これを研究した人によると、イワシの群れには3つの本能的な法則があるのだそうです。
ひとつは、互いがぶつからないようにする「分離」
二つ目は、誰かと行動をともにしたいという「整列」
三つ目が、ぶつからない程度には仲間と近くにいたいという「統合」
この3つの法則に従って、リーダーがいなくても、魚同士は周りの個体の動きを感じ取りながら動く。
これがオーガナイジング・カオスだというのです。
オールブラックスの最大の強みは、これと同じようなものだと考えています。
ハンセンという優れた監督と、マコウというカリスマ的なキャプテンはいるけれど、オールブラックスというチームは絶対的な意志決定者の存在を感じさせないんです。
僕が考えた定義は、
「リーダーの決定に従ってチームが動くのではなく、グラウンドに居る15人による、能動的なリアクションの連鎖によって、自在に形を変えることが出来るチーム」です。
オールブラックスは「個人の能力が高い」とよく言われますが、今回のワールドカップで感じるのは、そんな表現では足りない。「世界最高の個が集まることで、もはや個ではない、ひとつの生き物と化している」という感じです。イワシの巨大な群れが、ひとつの魚になって動くようなものです。