翔太です。
サクラXVのアメリカ戦は良い試合でした。もちろん勝てなかったのは残念ですが、それ以上によく頑張ったな、良い試合をしたな、という思いが強いです。特に素晴らしかったのはディフェンス。相手にプレッシャーをかけるだけでなく、最後の1歩で差し込めていた。
僕はコーチングするとき、ディフェンスでは「ラスト1m」という言葉を使います。距離を詰めてプレッシャをかけることは大事だけど、実際にミスを誘えるか、ボールを奪えるかどうかは、実際のコンタクトに至る最後の際、最後の1mをどちらが仕掛けるか=制するかで決まります。この日のサクラXVは、素早く間合いを詰める出足でプレッシャーをかけた上で、最後のタックルにもしっかり刺さっていた。とても理にかなったDFをしていたと思います。それは、効率のいい、身の丈にあったラグビーといってもいい。
野球でいえば、バッティングは、めちゃくちゃうまい選手がどんなに頑張っても打率4割に達するのは難しい。4割、5割を目指すのは無駄だとは言わないけれど、それを達成するためには途轍もない労力が必要で、それでも達成するのは難しい。その目標は身の丈に合わないんです。打率4割、5割を目指すよりも、打率3割でどう得点するか、守備も含めてどう勝つかを考える方がはるかに現実的です。
ラグビーではそれがディフェンス(DF)です。ラグビーではアタックを放棄する(ボールを相手に渡す)ことはできるけれど、ディフェンスは放棄することができない。アタックは15人のうち限られた数人の選手で組み立てることはできるけれど、DFは15人全員が機能しなければ勝てない。アタックはいくら練習しても、試合でまったくボールを持てなければ練習したことを出せないけれど、DFは練習したことを間違いなく出せる。
そういう事情も含めて、僕に言わせれば「女子ラグビーはDFとキックがキモ」なのです。DFでプレッシャーをかけて、ボールを奪ったらキックで陣地を進めてプレッシャーをかけて、ミスさせたらまたキックで陣地を進める。PKを奪えばショットで得点もできる。その基本構造は男子でも変わらないけれど、女子の場合は男子よりも筋力、骨格などが男子より小さいにもかかわらずボールは同じ大きさ、重さなので、どうしてもハンドリングエラーは増えるしパスやキックも距離は減る。必然的にアタックの成功率は下がり、ミスの発生率は増える。男子以上に「DFで勝てる」構造なんです。
そして、この試合でサクラXVはDFとキックが冴えていた。