嵐の中、ドバイへ。 | ラグビージャパン365

嵐の中、ドバイへ。

2012/11/02

文●大友信彦


過去、ワールドカップセブンズ5大会すべてに出場している男子日本代表。しかし、その夢舞台をかけた戦いは、決して易々と掴めたものではなかった。前回大会となる2008年、男女アベックでアジア王座を掴んだ香港での予選も、苦闘の末に掴んだ勝利だった。
アジア王者としてワールドカップに乗り込む使命を負って予選に臨むセブンズJAPANの必勝を期して、
4年前の劇的な勝利へタイムトラベル!

 

石つぶてと化した雨が人工芝を叩き続けた。吹き荒れる猛烈な風に、折り畳み傘の骨はひとたまりもなく折れた。滝のように降り続ける雨の幕が、カクテル光線を浴びてオーロラのように輝く。自分がずぶ濡れになっている現実を一瞬、忘れてしまいそうになる幻想的な光景。

ピエイ・マフィレオは、豪雨のカーテンに霞む彼方から走り始めた。

日本の関係者や、すでに戦い終えた女子選手たちが陣取るバックスタンド北側にいた記者からは、どこから走り始めたか確認できなかった。

確かなのは、直前にPGを決めた香港が3点をリードしていたこと、そして残り時間が30秒を切っていたことだ。プレーが切れれば日本の敗北が決まる。全身ずぶ濡れ。足には乳酸の重い塊。嵐は絶え間なく吹き荒れている。

嵐の中で行われた香港との決勝、3点ビハインドの後半ロスタイム、自陣ゴールライン上からマフィレオが独走

嵐の中で行われた香港との決勝、3点ビハインドの後半ロスタイム、自陣ゴールライン上からマフィレオが独走

そんな極限状況で、マフィレオは走った。ステップを切る。水しぶきが上がり、紺のジャージーを着た香港のタックラーが踏ん張れずに倒れる。前進。またステップ。右手で掴んだボールは一度も持ち替えていない。ハンドオフもしたくない。ボールが滑るからだ。大きなステップでまたタックラーをかわす。途中出場の徐吉嶺がサポートに追ってきた。だが、レオはパスをしなかった。ハンドリングミスのリスクを冒すよりも、自分の脚に残る最後のエネルギーを信じた。7度目のステップ。追いすがってきた最後のタックラーが消えた。レオは、白いトライラインを超えると、スローモーションのようにピッチへ倒れ込んだ。赤白のジャージーが次々に駆け寄り、抱きつき、肩を叩く——。

吹き荒れる嵐の中、終了直前、ほぼ100mを切り返した逆転サヨナラトライ。ほんの20分あまり前に終わった女子決勝も、終了1分前のトライで日本が逆転優勝を決めていた。

日本は、これ以上考えられないシビれる展開の末に、男女アベック優勝でドバイW杯の出場を決めた。

 

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