あけましておめでとうございます。翔太です。
年末年始は本当にラグビー漬けで過ごしました。高校大会、大学選手権、リーグワン。その間にはフランスTOP14の解説もあり…目が回りそうな忙しさでしたが素晴らしい試合の連続で、今まで経験のないくらい濃密で幸せな年末年始を過ごすことができました。選手のみなさん、監督・コーチ・スタッフのみなさん、保護者のみなさん、ファンのみなさんに深く感謝します。ありがとうございました。ホントに楽しませていただきました。
特に印象に残った佐賀工
特に花園大会は楽しかった。今回僕は初めて、1回戦から決勝までフルに花園を見ることができました。花園大会は全体的に、チームカラーがあって面白いな、と思いました。東福岡、佐賀工、京都成章、天理、報徳……校名を挙げただけで、どんなラグビーをやりたがっているかがまぶたに浮かんできますよね。
もちろん、フィジカルもスキルも大学の方がレベルが高いのですが、戦略ベースでは高校の方が上回っているんじゃないかな? 練られてるんじゃないかな? と感じる場面が多くありました。
それも道理でしょう。大学からは試合時間が80分になる。試合時間が長くなるほど地力の差、体力の差が結果に出やすい。だけど高校は30分ハーフなので、必然的にひとつのプレー、ひとつのトライの占める比重が大きい。言い換えると、戦略性が結果に与えるインパクトが大きい。大学やリーグワンでは、一発のサインプレーでトライが取れても、それだけで試合が決まることはまずないけれど、高校ではそういうこともままあります。
それでいて、ひとつひとつのムーブ、コンビネーションに、各チームの色が出ている。京都成章なんて、リーグワンや日本代表でプレーしているOBがたくさん教えに来て、いろいろな要素を取り入れていたというのですが、プレーを見ていると借り物の雰囲気がない、自分たちの血肉になっているなと感じました。
花園では印象深いチームにたくさん出会えたのですが、特に印象に残ったチームは佐賀工です。圧倒的な強さで優勝した東福岡に対し、後半21分までリードを奪い、終了直前まで3点差の激戦を演じました。それも点数だけではない。東福岡に対してどう強みを作っていくかをよく考えて戦っているなという印象を受けました。
具体的には、展開力に勝る東福岡に対して、自分たちの武器であるモールをどう活用するかをすごく考えていた。ラインアウトだけでなくPKのタップから、フィールドプレーでモールを組んだり、ラインアウトモールでも押し込んだり、押すとみせかけて3番を走らせたり、多彩な使い方をしていました。
相手のパスをカットした場面も3本ありました。それも、東福岡が長いパスを使ってくるという予測力、判断力があってのもの。60分をデザインする中で、自分たちの武器を使おうという知性を感じたし、感激しました。
もちろんスタッフの分析、指導があってこその戦術だったとは思いますが、これは分析しただけで出来ることではありません。選手が意思を持って取り組んだ結果でしょう。本当に、東福岡を一番苦しめたチームでした。素晴らしかった。
しかし、花園では1日置きで試合があって、各チームに特色があって、準々決勝、準決勝、決勝と勝ち進んでいく上では戦い方も変えなきゃいけないんだな、次の準備も進めながら戦わなければいけないんだな、そう考えると花園の優勝ってのは本当にスゴいことなんだなと思いました。これが、1週間おきに試合をする大会だったり、リーグ戦を戦う大会だったらまた違うでしょうが、花園の特殊な条件で行われる大会では、花園で勝つための戦略性、アプローチが必要。花園を熟知しているチームが勝つんですね。
そして迎えた決勝は、東福岡が41-10のビッグスコアで報徳学園を破り、6年ぶりの優勝を飾りました。付け加えると、大学選手権決勝も決勝史上最多得点を更新するスコアで帝京大が早大に圧勝しました。僕は解説の機会などで常々「ラグビーは構造的にディフェンスが有利」とお伝えしています。しかし、今季は高校も大学も、アタックし続けたチームが勝った。これはどういうことでしょうか。
僕の解釈、見立てはこうです。