サクラセブンズ、スリランカ7s全試合完封で完全優勝&シリーズ優勝 | ラグビージャパン365

サクラセブンズ、スリランカ7s全試合完封で完全優勝&シリーズ優勝

2025/10/22

文●大友信彦


サクラセブンズが、アジアラグビーエミレーツ・セブンズシリーズ第2戦スリランカ大会で、全試合を無失点で勝ち切る圧倒的な強さで優勝を飾った。日本は中国大会に続き、今季の2大会に全勝で完全優勝。世界4強入りを目指すHSBC SVNZ(ワールドシリーズ)、名古屋を開催地として、2018年ジャカルタ大会以来の開催となる来年のアジア競技大会に向け勢いをつけた。

FW&BK兼任選手が躍動し変幻自在「忍者ラグビー」に手応え。

スリランカ大会のメンバーは以下の通り(キャップ数順)

☆〇平野優芽 25 ながとブルーエンジェルス(47)
☆〇堤ほの花 28 日体大(35)
☆永田花菜 25 ナナイロプリズム福岡(32)
☆〇大谷芽生 25 ながとブルーエンジェルス(31)
〇三枝千晃 28 北海道ディアナ(31)
☆小出深冬 29 アルカス熊谷(24)
〇内海春菜子 25 横浜TKM(19)
矢崎桜子 21 横河武蔵野アルテミ・スターズ(7)
秋田若菜 22 自衛隊体育学校PTS(6)
松田向日葵 21 追手門学院VENUS(5)
サバナ・ボッドマン 23 東京山九フェニックス(1)
◎長谷部彩音 20 日本経済大AMATERUS(0)
◎大内田葉月 19 日体大1年(0)

※☆は東京、〇はパリ五輪メンバー ◎は初キャップ カッコ内は大会前のキャップ数

東京&パリの五輪2大会を経験した平野優芽、堤ほの花、大谷芽生らサクラセブンズのコアプレーヤーに、パリに向けたオリンピックスコッド経験者、パリ以降にスコッド入りしたメンバーをバランスよく配置。初キャップは長谷部彩音と大内田葉月の2人だ。

日本 73-0 インドネシア

サクラセブンズはDAY1のプール戦ではインドネシア、UAE、インドの3カ国と対戦。初戦のインドネシア戦は初キャップの大内田葉月が先制トライ。

この大会でキャプテンに指名された三枝千晃が2本目のトライを決めると、4分には再び大内田葉月がトライラインへ。さらに7分にはこちらも初キャップの長谷部彩音が相手キックに反応して戻って捕ると反転、カウンターアタックに出て快走トライ。さらに残り時間ゼロのキックオフからノーホイッスルで秋田若菜がトライを加え、前半だけで33-0。後半は内海春菜子が3トライ、矢崎桜子、松田向日葵、堤ほの花がトライを加え、73-0で圧勝した。

大内田葉月のトライ

大内田葉月のトライ



大谷芽生

大谷芽生



試合を通じて目立ったのはサクラセブンズのディフェンスの厳しさだ。激しく前にプレスをかける「ファイヤーディフェンス」は以前からのサクラセブンズの武器だったが、この大会では相手が持ち込んだボールのブレイクダウンをめくりあげてボールを奪うカウンターラックを多用。相手ボールを奪ってのカウンターアタック、ディフェンスで得たPKからの速攻で多くのトライを奪った。

三枝千晃

三枝千晃



日本 69-0 UAE

続くUAE戦もサクラセブンズの強さが目立った。試合開始の相手キックオフを捕った大谷芽生からパスを受けた矢崎桜子が約80mを独走する鮮やかなキックオフリターンを決めて先制。2分には初キャップの大内田葉月から2キャップ目のサバナ・ボッドマンに鮮やかなパスが通り2トライ目。3分にはボッドマンから三枝にオフロードパスが通ってトライ。

サバナ・ボッドマン

サバナ・ボッドマン


さらに矢崎のゲインから大内田、サバナがタックルで得たPKを自らクイックタップしてトライと5トライをあげ33-0で折り返すと、後半はサバナが4トライの大爆発を見せるなど6トライ。69-0で圧勝した。相手タックルを受けても突き進み、前に出たところでオフロードをつなぐ、あるいはそのままタックルを振り払ってトライを決める強さは、これまでのサクラセブンズにはなかったアクセントとして機能。今後にさらに期待だ。

大内田葉月

大内田葉月


サバナ・ボッドマン

サバナ・ボッドマン

日本 43-0 インド

サクラセブンズの強さはプール戦では別格。第3戦のインド戦はベテラン小出深冬のトライで先制すると堤、大内田、三枝がトライを重ね26-0で折り返す。後半は秋田若菜が60m独走の痛快トライを決めるなど2トライ、終了直前にはディフェンスで得たPKからクイックで仕掛けた大谷芽生もトライを加え、43-0。3試合連続で相手を無得点に抑え完勝した。

平野優芽

平野優芽

松田向日葵のタックル

松田向日葵のタックル



日本は3戦全勝でプールDを1位で通過。プールFを全勝で通過した中国は3試合で17トライだったのに対し、日本はトライ数29で失トライはゼロ。圧倒的な攻撃力を披露して翌日の決勝トーナメントに進出した。

準決勝 日本 31-0 ホンコンチャイナ

決勝トーナメントに入ってもサクラセブンズの強さは揺るがなかった。

長谷部彩音

長谷部彩音


日本は開始直後、自陣ゴール前まで攻め込まれるが分厚いディフェンスでこれをしのぎ、相手落球を誘うと、自陣ゴール前のスクラムからアタック。WTB矢崎桜子が右サイド約90mを一気に走り切って先制トライを決める。

矢崎桜子

矢崎桜子

日本はさらに矢崎、大谷がトライを加え19-0で折り返すと、後半もサバナ、大谷がトライを加え31-0で快勝。

新人のサバナと大内田がFWに入ることで、近年はFWでの起用が多かった大谷がスタートからBKに入り、攻撃のオプションが倍増。エッジの位置から真ん中へ、逆サイドへ、あるいはそのまま外へと多彩なアタックを繰り出すさまは、兼松HCが今大会を前に目標として掲げた「忍者ラグビー」の象徴に見えた。

大谷芽生

大谷芽生


その大谷のBK起用を可能にしたのはサバナ、長谷部、大内田葉月という新鋭がFWに入り、フィジカル面で他国を制圧したことだろう。大谷も昨季のワールドシリーズではFWとしてフィジカル面でトップ国と渡り合っていたが、BKに専念すればまた違ったオプションが増え、さらにフレッシュな状態で試合の終盤まで戦えるというメリットも見られた。試合中にBKとFWを入れ替わることも可能で、相手に的を絞らせない多彩なアタックはこれからのサクラセブンズの看板になりそうだ。

決勝 29-0 中国

決勝は中国大会の決勝でも死闘を繰り広げたライバル中国との連続対決となった。中国大会は24-19で辛くも逆転勝ち。しかし今回は決勝でもサクラセブンズの強さが際立っていた。

大内田葉月

大内田葉月


序盤は中国が日本陣深くまで攻め込むが、日本は裏に蹴られれば堤が快足を飛ばして戻り、再度突破をはかればFWのサバナ、三枝、大内田が頑健にタックル。こぼれ球にもサバナが先頭でセービングに飛び込むなど、体を張ったひたむきなプレー、ハードワークの面でも日本は隙のないパフォーマンスをみせた。

大谷芽生

大谷芽生


スコアが動いたのは前半5分、ハーフウェー手前で内海のジャッカルでOKを得ると内海がクイックスタート。その横へ猛然と走りこんだのがこの大会で主将を務める三枝だ。トップスピードでショートパスを受けた三枝は初速でDFを一気に抜き去り50mを爆走。ポスト下に転がり込んだ。内海がコンバージョンを決め、日本は前半を7-0とリードする。

三枝千晃

三枝千晃



後半に入ると、日本のアタックはさらに加速する。

2分、サバナ―堤―大谷と鮮やかなパスがわたりトライ。4分には大谷のタックルでPKを奪うとサバナがクイックで仕掛け、いったんはファンブルでボールを下げるがそこから矢崎が出てくる相手の逆を突いてゴール前まで前進。相手タックルを受けてダウンボールしたところへ堤が走りこんでピックするとそのままトライ。17-0とリードした日本は、ラスト2分にも矢崎、ロスタイムには松田のタックルPKクイックスタートから永田がトライ。29-0までリードを広げて試合を終えた。

日本は5試合すべてで相手をゼロ封。すべての試合で5トライ以上をあげ、危なげない優勝を飾った。

兼松 由香 HC「これから始まるワールドシリーズのスタートライン」

「今大会もたくさんの応援ありがとうございました。前回の中国大会からより早さと速さを追求し、その成果が全試合完封勝利と245得点に結びついたと思います。どんな状況でも、1戦1戦自分たちのやるべきことに集中し、アグレッシブに戦い抜いた13名の選手たちとサポートしてくれたスタッフを誇りに思います。このシリーズ優勝は、これから始まるワールドシリーズのスタートラインです。自分たちの強みを超強みに変え、サクラセブンズ全員で進化し続けます。これからもサクラセブンズの応援よろしくお願いいたします。最後に、現地で多大なるご支援をいただきました日本人会の皆さん、また、連日大声援を送ってくれた日本人学校の子どもたち、本当にありがとうございました。」

三枝 千晃 キャプテン


「温かい応援ありがとうございました。現地でも多くの日本人の方にスタジアムで応援していただき、またたくさんのサポートをしていただき2日間全員で戦い抜くことができました。心から感謝しています。今大会では忍者をテーマに早さにこだわって国内合宿から準備しました。目標としていたシリーズ優勝を達成し、次のワールドシリーズに繋げられることを嬉しく思います。まだまだチームとして追求できる部分があるので、このアジアシリーズでの経験を土台にして、ワールドシリーズに向けてレベルアップできるよう、いい準備をします。応援ありがとうございました。」

大内田 葉月(初キャップ)

「いつもサクラセブンズの応援ありがとうございます。チームで目標としていたシリーズ優勝を達成できうれしいです。今回のテーマの「忍者」を13人で体現できた結果だと思います。また、現地でのたくさんの日本人関係者の応援も力になりました。個人としてもファーストキャップを獲得でき、うれしかったです。今大会を通して、たくさんチャレンジしたことや、学んだことを、次に生かせるようにこれからも頑張っていきたいと思います。今後も、サクラセブンズの応援よろしくお願いいたします」

大内田葉月

大内田葉月

長谷部 彩音(初キャップ)

「サクラセブンズへのご声援ありがとうございました。個人としては1stキャップを取れたこと、憧れのチームの一員としてプレーができたことをとても嬉しく思います。課題が多く見つかった大会だったのでこの経験を活かし成長できるよう努力していきます。今度ともサクラセブンズの応援よろしくお願い致します。」

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。ラグビーマガジンなどにも執筆。

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