太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2024の開幕が目前に迫った。全大会16チーム参加で行われた昨季から今季は12チームによる大会に戻り、第1戦は初の九州開催となる北九州・小倉のミクニワールドスタジアムで開催され、以後熊谷・鈴鹿・花園の計4大会を実施する。
今年はパリ五輪を控えていることも考慮されてか、開幕が繰り上げられ4月6日に開幕。過去最も早く開幕したのは2015年の保土ケ谷大会と2022年の熊谷大会の4月23日だったから、2週間以上も更新することになる。
RJ365では開幕に先立ち、太陽生命シリーズ参加各チームの新戦力情報を複数回に分けてお届けする。第3回は三重パールズ、横浜TKM、ながとブルーエンジェルス。
三重パールズ
・村田彩乃 SH/CTB 22歳 吹田RS―追手門学院高―追手門学院大(主将)158/58
・中村沙弥 LO 22歳 京都JOINUS―石見智翠館高―四国大 178/71
・甲斐早智子 PR 22歳 福岡・鳳凰高―日経大 168/69
・勝島朱夏里 WTB 18歳 四日市JRFC―四日市メリノール/パールズジュニア
・佐藤礼那 FL 18歳 浪花闘球娘―四日市メリノール/パールズジュニア
・グレイス・オクル ケニア7人制代表
・モニーク・コイ カナダ代表
・ニア・サザーランド U18NZ代表
・リオーシャン・マイウ U18NZ代表
15人制全国女子選手権準優勝の三重パールズに、すでにアーリーエントリーで出場したのが追手門学院大の司令塔として活躍した村田彩乃。2021年の大学女子セブンズではサクラセブンズ須田倫代とともに追手門学院大を優勝に導き、MVP、得点王(45点=5t10c)。2023年大会でも得点王(46点=4T13C)に輝いた決定力とキック力が楽しみだ。

村田彩乃
さらに新卒加入が四国大から中村沙弥、日経大から甲斐早智子、四日市メリノール/パールズアカデミーから勝島朱夏里、佐藤礼那の4人。中村と甲斐はサクラ15候補合宿経験者。中村は身長178cmと国産女子最長身選手の一人でポテンシャルは抜群だ。勝島は中学時代陸上競技で県大会2位になったスプリンターで、昨年のチャレンジチームで太陽生命4大会に出場し、鈴鹿大会では4T。四日市メリノールで出場した昨秋のU18女子セブンズでも4Tをあげたスプリンターだ。
今季は太陽生命シリーズとサクラ15の活動時期が重なるため、太陽生命シリーズでは外国出身選手4人も含め、ルーキーが出場するチャンスも増えそうだ。
横浜TKM
・森永菜月 LO 22歳 スウィーティーレディーベアーズ/九州学院高―日体大 167/71
・高橋沙羅 SH 22歳 鎌倉RS―東京フェニックス/千葉ペガサス/湘南工大附高―日体大 154/59
・鎌田梨音 PR/LO 22歳 鹿児島オールブラックスー鹿児島工高―流経大 170/74
・河村爽月 PR 22歳 追手門学院高―四国大 156/58
・熊澤彩乃 PR 18歳 相模原RS―開志国際高 164/65
・磯貝美加紗 WTB 28歳 追手門学院大-北海道ディアナ-ながとブルーエンジェルス 165/61
・オータム・ロシセロ 米国
・ルイザ・ツバイラギ NZマッセイ大
・グレイス・スチュワート NZマッセイ大
昨季は熊谷と鈴鹿で5位に入ったのが最高で、前年は全4大会で食い込んだ4強入りを果たせなかったTKM。年間順位も前年の3位から6位に後退した。
新加入選手の目玉は追手門学院大―NZ留学を経て北海道ディアナーながとブルーエンジェルスでフィニッシャーとして活躍してきた磯貝美加紗だ。

磯貝美加紗
太陽生命シリーズには大会が創設された2014年から出場しており通算トライ80はニア・トリバー、堤ほの花に次ぐ歴代3位。新主将の小島碧優や角川穂乃花ら決定力あるランナーを擁しながら壁を破れないチームに、常勝ブルーエンジェルスの勝利のメソッドを注入するか?

高橋沙羅
大卒新人で注目は日体大から加入の高速SH高橋沙羅。太陽生命シリーズにはこれまでフェニックス、ペガサス、日体大で登場しており、こちらも太陽生命シリーズ4チーム目でのプレーとなる。セブンズは得意なだけに、FWの新人4人より早く太陽生命デビューを飾るか?
ながとブルーエンジェルス
・新野由里菜 CTB 22歳 長崎レディースー大村工―日体大(主将) 163/68
・東あかり WTB 22歳 桜井少年RS―北神戸RC―神戸甲北高―日体大 160/60
・カーリ・ヘンウッド PR 24歳 オーストラリア代表 172
・ソフィー・ダフ PR 20歳 オーストラリアA代表 172
・アマーリ・ハラ WTB 18歳 オーストラリアA代表 165
・ジラワン・チュトラクン WTB 23歳 タイ代表―ナナイロプリズム福岡 172/66
・ルシーラ・ナガサウ PR 36歳 フィジー代表
・ニア・トリバー 25歳 米国代表 北海道ディアナ-東京山九フェニックス 167/75
昨年、4大会完全優勝を果たしたながとブルーエンジェルス。今季は五輪イヤーとあって、サクラセブンズ主将の平野優芽をはじめライチェル海遥、大谷芽生、田中笑伊、辻崎由希乃ら主力の出場は難しそう。選手層は決して厚くないだけに、気になるのは新戦力だ。

新野由里菜
新卒は3大会で決勝を戦ったライバル日体大からの2人だ。キャプテンとして日体大をリードしたCTB新野由里菜とWTB東あかり。新野はスペースを見つける巧さとランニングスキルが秀逸で、トライゲッターの堤ほの花や東あかりらとともに4大会すべてでトライ。キッカーとしても活躍し、昨年のシリーズ137得点で得点ランク5位に食い込んだ。

東あかり
さらに外国人選手がオーストラリアからアマーリ・ハラ、カーリー・ヘンウッド、ソフィー・ダフ、フィジー代表東京五輪主将のルシーラ・ナガサウ、そして昨季はナナイロプリズム福岡で活躍したタイ代表のジラワン・チュトラクンの5人。と情報をまとめていたところ、開幕2日前になってビッグニュースが飛び込んできた。ながとブルーエンジェルスの新加入選手に、昨季まで東京山九フェニックスのトライゲッターとして活躍したニア・トリバーの電撃加入が発表されたのだ!

ニア・トリバー
ニアは北海道バーバリアンズディアナに在籍した2019年に大会新記録となる年間30トライを樹立。150得点をあげており、東京山九フェニックスに移籍した2022年は記録を更新する42トライ210得点、2023年はさらに塗り替える50トライ250得点で2季連続でトライ王、得点王の2冠に輝いた。太陽生命シリーズ通算133トライ、665点も堤ほの花の120トライ、606点を抑え通算トップに君臨しているシリーズのスコアリングリーダーだ。昨季途中、フェニックスを退団して米国に帰国したが、その後に日本でのプレー復帰を希望し、ながと入りを選択したという。太陽生命シリーズでの古巣との対決が注目される。
※さらに、横河武蔵野アルテミ・スターズを退団した小西想羅も追加で登録されたことも5日、分かった。2015年東京大会に高校1年でラガールセブンに参加し、杉並RSから同期の平野優芽とともに15歳で活躍。高2でサクラ15に選ばれ、国学院栃木高3年の全国選抜で優勝も経験した大器はその後ケガに苦しんだが、西の新天地で再出発を期すことになった。太陽生命セブンズでの再デビューはあるか?
昨季限りの退団選手はパラキゆきと磯貝美加紗。パラキゆきは2017年のチーム立ち上げ時からブルーエンジェルスのカルチャー確立に貢献してきたチーム功労者。ブルーエンジェルスも今季からはチームの歴史の第2章に入っていくことになる。
気になるのがワールドシリーズやリーグワンなど他大会とのバッティングだ。特にサクラセブンズが出場するワールドシリーズの香港大会が第1戦の北九州大会と、シンガポール大会が第3戦の鈴鹿大会と重なっていて、代表選手はこの大会に出場するのが難しい。せっかくレベルの高い大会を設定して経験値を高めるチャンスを作っているのにそれを活かさないのはあまりにもったいない。さらに、年間王者が決まる最終戦の花園大会がリーグワンファイナルと重なっているのはファンに対してもメディアに対してもあまりに酷。これでは観客も報道露出も高めようがない。女子ラグビーの発展を本気で願っているのかどうか。これは女子の担当者だけの問題ではない。女子ラグビーを発展させる覚悟が本当にあるのか。日本協会の姿勢が問われていると思う。
選手のみなさんには、大会の価値を高めるような、そして日本協会が取り組みに抜本的な改革を迫るような素晴らしいパフォーマンスを期待したい。
![]() (おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |