9月7日~13日まで北海道で、来年に延期された東京五輪に向けて男子SDS(セブンズ・デベロップメント・スコッド)が合宿を行っている。新型コロナウィルス感染拡大後、これまで東京、大分と2カ所に分かれて合宿を行われていたが、9月に入り、今回が初のチーム全体での合宿となった。
合宿に参加した選手は16人。リオデジャネイロ五輪も経験したチーム一番のベテランである坂井克行選手(豊田自動織機シャトルズ)がオンラインで報道陣に対応した。
多くの選手がセブンズから離れていったのは個人的に残念
――9月に入り、全体での合宿が始まりました
まず非常に、コロナで情勢がなかなか不安定な中で合宿できたことに感謝したいです。今回から全員で顔を合わせて合宿が始まった。午前中はフィットネステストを行いました。またきつい合宿が始まったなと思います。
――東京五輪が1年延期された感想は?
プラスの部分でいうと(延期が)1年で良かったなというのが正直な感想ですね。また4年後となると年も年ですし、今は経験をウリにしているのが、若い選手が4年間、経験を積んでしまうと坂井もう役御免と考えられるので1年で良かった。
マイナスの部分だと1年延期になり、先日も発表されたが、多くの選手がセブンズから離れていった。
個人的な思いもありますが、リオ五輪が終わった後、メンバーの招集がうまくいっていかなかった時に、そのときに力を貸してくれた橋野(皓介/キヤノン)さんがチームを離れたことは、つらいときも知っているメンバーなので個人的には残念だと思います。
東京五輪が1年延期なったことでポジティブになったことや選手が離脱するというネガティブなともありました。ラグビー的に言えば、今までちょっとできていなかった部分ができるようになった。1年準備期間が延びたと捉えることができる。
もし東京五輪が中止になったら、今のような環境、メンバーで、本当に4年後のパリ大会に向けて、しっかりとした強化体制が整えることが大事だと思います。一番大事なのは選手の意志です。セブンズをやっていた延長戦上にオリンピックがあると僕は思っているので、オリンピックに出るためのセブンズではない。自らの意志でセブンズをやりたいと思えるようなチーム作りが一番大事かなと思います。いきなり、セブンズでチームと契約できる話があればいいが、そこは僕にはコントロールできない。今いるメンバー、セブンズに興味があるメンバーが、セブンズをやりたいというチーム作りができるかが大事になってくると思います。
――まだ経験が少ない選手がいるが、経験値の高い選手の力が必要なのでは?
極論になりますが、例えば明日、東京五輪中止と決まっても、今と同じ環境、メンバーで合宿を組めるかというのが今後大事になる。リオ五輪で4位になったのに、次の合宿はメンバーはカツカツで、大学生や初めてセブンズをやるメンバーで、当時ワールドシリーズ(WS)のコアチームだったにもかかわらず、そのとき力を貸してくれたメンバーも今いない。
強化という意味では同じことを繰り返さないように、僕らベテランはしっかり今の若いメンバーにいろんなことを伝えていかないといけない。若い選手は今、オリンピックがあるということではなく、今後、自分たちがセブンズを引っ張っていくという気持ちでやってほしい。セブンズに対して誇りを持てるような環境を作るのがベテランの仕事かなと思います。
――初めて全体で集合して、合宿が始まりました。今後、練習内容深まるのでは?
まずは体を戻すということですよね。メンバーによっては所属チームでトレーニングできる人もいれば、なかなかそういったことをできない人もいる。コンタクトも今回(の合宿)から始まると聞いているので、まず、試合ができるくらいの体に戻すことが一番大事です。
今、練習で非常にこだわっているのは、ベーシックな部分です。東京五輪が1年延期されたことをプラスに捉えて、セブンズはパスミスひとつ、ディフェンスの立ち位置ひとつで失点につながるスポーツなので、もう1回そこを見直すように、コーチ陣から提示されている。(チーム内での試合は)そこはちょっと聞いていないですが、リーダーたちが何かアクションを起こしているような雰囲気は感じています。
――ベテラン選手が代表チームから離脱することになったが、誰かと話し合ったりしたのか?
桑水流(裕策)さんとは付き合い長いので、直接、本人から連絡いただいた。「1年延期になって、自分だけ前向きになれなかった」と僕も聞きました。
――リオ五輪は4位でメダルは取れなかった。前回、何が足りなかったのか、4位より上にいくために何が必要なのか?
まずリオ五輪のときに一番痛感したことは、世界の常にトップ4に入るチームと一発勝負で当たったときの強さ。具体的には準決勝のフィジー代表戦、3位決定戦のフィジー代表戦。WSのプール戦で何回か対戦したことはありますが、そのときと比べものにならないくらい強かった。日本に対してなめてかかってこなかったチームは本当に強い。当時、日本代表は5試合目、6試合目で、正直的には体力的にはかなりヘトヘトだった。3決で対戦した南アフリカは、6試合目の10分で、「このキレか」と体が動いていた。こちらも準備をしていたが、その辺の差は感じました。
リオのメンバーと今を比べると、キックオフの部分ですね。当時は(ターゲットになる選手が)桑水流さん一択で、(他に)コンタクトできる選手がいなかった。今は身長190cmくらいの選手が3人くらいですかね、ジョセ セル、トゥキリ ロテ(ともに近鉄)、副島(亀里ララボウラティアナラ/コカ・コーラ)と彼らがオリンピックのメンバーに選ばれるか別問題ですが、そういった(長身の)選手が増えてきたので、もう1回、キックオフでマイボールにするためのコンテストできるチャンスが増えてきたのは大きな差かなと思います。
セブンズのセットプレーで一番大事なのはキックオフです。レシーブもアタックもそう。もう1回マイボールになるのか、相手ボールになるかは大きな変化点かなと思います。
――チームで一番のベテラン坂井選手にとって、東京五輪に向けてのモチベーションは?
昨日(9月7日)、誕生日を迎えて32歳になりました。セブンズに関わって11年ですが、セブンズに対して前向きに協力してくれている家族、そして僕も豊田自動織機の一員ですが、トップリーグよりもセブンズを優先させいただいている会社に感謝したい。
(東京五輪に向けて)何がモチベーションになっているか、それはセブンズが好きというこの一点に尽きます。(豊田自動織機)シャトルズにも成長させてもらいましたが セブンズがより一層、自分を成長させてくれた。早稲田大学3年時、レギュラーではないときにセブンズ(日本代表チーム)に声をかけてもらい、そこから大学でもレギュラーが取れた。
そして瀬川智広さんに監督に替わったタイミングで、22、23歳の若造なのにキャプテンに選んでもらった。それと同時につらい思いもいい思いもしながら、32歳までやってこられたのは、セブンズのおかげです。セブンズが好き、セブンズに恩返ししたいという思いだけですね。
(東京五輪まで、ここを成長させたいというところは)僕の課題はずっとディフェンスだと思っているので、ディフェンスの部分に関しては永遠の課題です。ラグビープレイヤーとしてずっと伸ばしたいと思っています。その部分も変わらないですね。
――日本代表チームで桑水流選手を超えて最多キャップとなりました。
11年、僕が大学生のときにセブンズ始めたとき、当時いたメンバーも今いますが、間を空けず、ずっとセブンズに参加しているのは僕だけです。リオ組でも2~3年空けて戻ってきた選手もいますが、2~3年も空けずにセブンズに参加しているのは僕だけです。一大会一大会の積み重ねがその数字になったと思います。
身長172cmとあまり大きくないですが、昨日誕生日でしたが、ケガをしない体に生んでくれた親にも感謝したいと思います。
――あらためて、セブンズの魅力は?
セブンズは一日に3試合行われる。ラグビーW杯ですら、最短で中3日ですが、セブンズは1日3試合見られる。プラス、ひとつの会場で全チームの試合が行われる。NZ、フィジー、南アフリカ、その次に日本代表が来て、それが1日、3回もあって、プラス2日間行われる。そういったことがセブンズの一番の魅力かなと思います
(個人としては)ひとつは番狂わせ起こしやすい。僕らもリオ五輪でNZを倒したことがひとつのいい例だと思います。何か向こうの調子だとか、こっちの戦術がはまれば、世界に勝てるチャンスがあるのが大きな魅力かなと思います。そうはいっても簡単に勝てる世界ではないというのがひとつのセブンズの魅力と捉えてもいいと思います。いくら練習しても 世界の舞台に行ったら、コテンパンにされた経験もあります。WSではコアチームだと10大会あり、リベンジの機会も非常に多い。それが15人制よりも(セブンズの方が)魅力があると思っています。
――リオ五輪のNZ戦はすべてがはまった試合ですかね?
正直、勝つための準備はしました。NZだけ焦点を絞ってリオに臨んだと言っても過言ではないくらい。それがはまったのはNZ戦で、実力で勝ったかというと、「はい」とは言い切れないです。セブンズというスポーツを見ると、あれだけ準備したのに(NZとの)点差は2点差と思うと、まだまだ世界に勝つには差があると頭に入れないといけない。
――世界との差が縮まっている実感は?
コロナで中止になる前の(昨シーズンの)WSの5大会を戦って、1勝しかできなかったことをみると、まだまだ差があると捉えています。