「自分のやってきた10年は、間違いじゃなかった」
観客の喜びと落胆。勝者が敗者をねぎらい、敗者が勝者を称える光景。それはピッチだけでなく、観客席にも存在した。
大畑大介氏が観客席から初めて見た、感じたW杯
「ワールドカップって、前からこんな開会式をやってたんですか?」
ラグビーワールドカップが開幕した9月8日、そう言ったのは、テレビ解説のためにイーデンパークを訪れていた大畑大介さんだ。
それから2週間あまり、ニュージーランド(NZ)の各地を巡り、試合や練習を連日取材した大畑さんは、トンガ戦を終えるまでNZに滞在して、帰国する前に言った。
「こういう立場で初めてワールドカップへ来て、日本以外の試合もたくさん見て、改めて『ワールドカップはすごい大会だな、素晴らしい大会だな』と思いました」
選手のときは、他国の試合をテレビで見ることはあっても、現場で見ることはなかったという。行動範囲は練習会場と試合会場の往復がほとんどで、試合に向けてチームスケジュールに従って行動した。
オフがあっても、試合に向けてコンディションを整えるのが目的だから、休養を取ることが大前提。行動範囲も自然と限られる。個人で外出して、もしも交通渋滞に巻き込まれたら、リフレッシュの狙いも逆の結果になりかねない。試合に向けて、不確定要素は可能な限り遠ざけよう――。
大畑さんにとって、ワールドカップとは、それだけ集中して臨むのが当然なものだった。それだけの対価を払って、この舞台に立つために、この舞台で世界のトップ国と戦い、勝利という結果を掴むために、時間を費やしてきたからだ。
「僕はワールドカップというものに、すごく思い入れを持ってやってきた。今回、違う立場でワールドカップに来てみて、そこにいられたことが本当に幸せだったんだな、と改めて思った。前評判とは関係なく、力を出し切る。特に、下位の国が上位の国に抗っている。グルジアがイングランドを苦しめた試合は、最後は点差が開いたけれど、ものすごく自分たちの存在意義を出していた。素晴らしいですよね」
ピッチではなく、観客席から試合を見ることで、選手時代とは異なる種類の感動を味わえたという。