2017年の日本代表春シリーズ、そしてサンウルブズ。多くのラグビーファンの記憶に鮮烈に刻まれたのは、松島幸太朗のパフォーマンスだったろう。背番号15、14、そして13。任されるポジションがどこであれ、しなやかな体躯の精悍なランナーは、常に日本代表の中心だった。
2014年に初キャップを獲得、2015年ワールドカップでは全試合にフル出場し、いまや日本のトッププレーヤー。その松島には、高校を卒業後、日本ラグビーを離れたときがあった。そして同じ時期、松島よりも一足先に日本代表に招集され、ハードワークを続けていた、同級生のライバルがいた。
同学年には福岡堅樹、布巻峻介、小倉順平……目のくらむような才能が並ぶゴールデンエイジ。2019年だけでなく、その先の日本ラグビーをも担うであろう才能集団をリードした男たちの、19歳当時の決意とチャレンジに、タイムトラベル!
「アイツが南アで頑張ってるから、僕も負けてられない」
秩父宮ラグビー場に絶叫がこだました。
6月24日。真夏の日差しを浴びて、日本代表(ジャパンXV)はフレンチ・バーバリアンズと対戦していた。昨年のW杯決勝で、ニュージーランドに僅か1点差で敗れたフランスの精鋭軍。その猛者を相手に、鮮烈な80m独走トライを奪ったのが筑波大2年の竹中祥だった。
自陣ゴール前での相手反則からの速攻で、CTBニコラスライアンのパスを受けた竹中は右タッチライン際を爆走。状態を前傾させ、フランスのタックラー2人を振り払い、薙ぎ倒し、火の玉と化して相手インゴールへ突き刺さった。4月2日の日本代表始動に招集されて以来、なかなか出場機会を与えられなかった19歳は、溜め込んでいたエネルギーを一気に解放した。
その竹中は言った。
「アイツが南アで頑張ってるから、僕も負けてられない」
「アイツ」とは、桐蔭学園時代の同級生、松島幸太朗のことだ。初めて出会ったのは中学3年のとき、東京都選抜のセレクションだった。南アフリカ人の父から受け継いだ強靱かつしなやかな体躯とバネのある身体能力を持つ松島は、竹中にとって衝撃的な存在だった。
「自分は中3で体重が85kgくらいあって、まっすぐ走るだけだったけど、松島はステップやコース取りが上手くて、気が付いたらスパッと抜けている。走ったらトライだった」