13日、ラグビーリーグワン・ディビジョン1、ここまで2勝と低迷が続くグリーンロケッツ東葛は東芝ブレイブルーパス東京と対戦。前半こそ、13-18と5点差で折り返すも、後半4トライを奪われ、終わってみれば20-49で敗れ、9敗目。勝点は9のまま。入替戦回避が至上命題となってきた。苦しいチーム状況の中、アーリーエントリーでSO吉村紘(早稲田大4年)がリーグワンデビューを果たした。ハーフ団を組んだのは日本代表75キャップを持つベテラン・田中史朗。田中自身も今シーズン初先発。「38歳でもできるということを示せた」(田中)。大学選手権決勝終了後すぐにチームに合流、怪我のリハビリで練習に合流したのは3週間前。若き司令塔の現在地は、試合後に話をきいた。
――デビュー戦は緊張しましたか。
「今週初めに先発を言われたときは緊張と不安もあったけれど、この1週間、周りの選手とできるだけ多くコミュニケーションを取って準備してきたので、今日はそこまで緊張せずにできました」
――チームへ合流したのはいつ?
「大学選手権の決勝が終わってすぐです。1月9日にはこちらに来ていました」
――それから2ヵ月かけてのデビューでした。その間は?
「大学の時のケガが思ったよりも長引いて、リハビリがあってなかなか練習に合流できなかったのですが、その間も相手の分析や、チームとのコミュニケーションを取ったりしていました。練習に合流したのは3週間前からです」
――今日の自分のパフォーマンスについては。
「良くはなかったです。最初のPGを外したし、後半もPKのノータッチがあったり。まだまだです。ただ、昔からキックミスをすると引きずってしまうクセがあったのですが、試合は80分あるので、そのあとのパフォーマンスが良くなるように切り替えるスキルは大学時代に身につけました」
――自分で切り替えられた?
「はい。でも、周りの選手たち、スーパースターの選手たちが『気にしなくて良いぞ』と声をかけてくれて、いつも以上にスムーズに切り替えられたと思います」
――ペアを組んだSHは田中史朗さんでした。
「最初は『フミさんと組むのか』と、普通に受け止めていたんですが、冷静に考えたら、あのワールドカップをテレビで見ていた選手と同じピッチでやるのか…と、ふとしたときに感慨深くなりました。フミさんはすごくコミュニケーションを取ってくれて、やりやすいと言ったら変ですけど、負担少なくプレーできたと思います」
――相手にはリーチ選手やワーナー選手など、日本代表のトップ選手もいました。
「目に映る光景として、身体が大きいなと感じたし、キックを蹴るときはプレッシャーも感じました。そこは慣れだと思うので。プレッシャーを受けてもミスを恐れずにチャレンジしていくことで、より早く慣れていけると思う」
――ワーナーにキックをチャージされた場面がありました。やっぱりデカかった?
「あの場面も、コミュニケーションエラーで僕にボールが来ちゃったんですが、でも、やっぱり大きかったです」
――同期の小西泰聖選手や槇瑛人選手が先にアーリーエントリーでデビューしました。
「情報としては入ってきていたけど、それは何とも思わなかった。僕はケガをしていたし、焦らないで、早くグリーンロケッツでチームに貢献したいという思いでした」
――大学選手権のあと、少しは休む期間を取る選手が多いですが、すぐこちらへ来たのは
「コーチの権丈さん(一昨季まで早大コーチ)には『ちょっとくらい休めよ』と言われたんですが、僕は大学選手権決勝で負けたときから気持ちがこっちへ来ていて『こんな状態ではしっかり休めない』と思ってこちらへ来ました」
――同期のみんなは卒業旅行に行ったりしていて、情報は目にしたでしょう。
「SNSとかで見たことはありましたけど、僕はラグビーをしたくてこっちへ来ていたので、それを見てもうらやましいとは思わなかったです」
――田中選手は『日本代表になれるポテンシャルがある』と話していました。
「ホントですか? 言われたことないです(笑)。でも、言っていただけるのは嬉しいけど、現状まだチームで勝てていないし、良い試合をしたねで終わらないようにしないといけない」
――効果的なキックが多かったと思います。試合開始直後の、スクラムからのロングキックはどんな狙いが。
「消極的な発想というか、ミスをしてスコアされたらまずい……という思いはありますが、試合中はそう考えず、強気マインドでプレーしようと思いました。あのキックは相手がタッチに出して、マイボールのラインアウトになったときにFWのエナジーを感じたし、あのプレーを選択して良かったと思いました」
――そのあと、自陣のラインアウトからの50/22キックも見事でした(そのあとのラインアウトから相手反則を得てPGの3点をあげた)。
「あそのは最初は違うサインが出ていたのですが、相手の立ち位置を見て、風も見て、ここは違うサインがいいとおもってみんなに伝えて蹴りました。大枠のゲームプランは『敵陣に入ること』だったし、そこは外れていないと判断しました」
――多くの方が、吉村選手のコミュニケーション力を褒めています。
「僕自身、コミュニケーションを大切にしていて、SOというポジション的にも多くの選手とコミュニケーションを取って、周りの選手の良さを引き出していくことが大事だと思っているので、練習中からうるさいと思われるほどしゃべるように心がけています」