リーグワン1部で不振に喘いでいたトヨタヴェルブリッツが第10節の浦安D-Rocks戦に33-28で競り勝ち、連敗を脱出。今季2勝目をあげた。
ヴェルブリッツは前節の神戸スティーラーズ戦に21-63で大敗。司令塔のSO松田力也も負傷交替し、股関節と骨盤を手術して今季の復帰は絶望となった。姫野主将に続く大黒柱の離脱。FWアイザイア・マプスアとCTBニコラス・マクカランも肩を負傷。この日の浦安戦では、先発7人を変更する布陣で臨んだ。

第9節の神戸戦で負傷交代したSO松田力也は今季絶望

試合が行われたJヴィレッジスタジアム
試合は序盤、ヴェルブリッツがLOディクソンの先制トライ、HO彦坂圭克の連続トライで開始11分までに21-0と大きくリード。後半9分には彦坂が3トライ目をあげたが、マッガーンが右隅からのコンバージョンを決めたあとでTMOが発動。その結果オフサイドタックルを受けてのダブルムーブメントと判定され、浦安LOパーソンズにYCが出された上でペナルティートライ。ヴェルブリッツが28-0までリードを広げた。

前半1分、ヴェルブリッツのLOディクソンが先制トライ

飯沼蓮

マッガーンは5度のプレースキックを4度成功した他右隅から幻のゴール成功も
しかしそこからD-Rocksが反撃開始。13分にWTBカヴバティが初トライを返すと16分、18分とSH飯沼が連続トライをあげ21-28と追い上げる。
ヴェルブリッツは28分にWTBヴィリアメ・ツイドラキのトライで33-21と引き離すが、D-Rocksも31分にCTBシェーン・ゲイツがトライ。SOオテレ・ブラックのコンバージョンも決まり28-33と再び5点差に。そこから両者PGを決めあったが、最後は自陣から逆転を狙ったD-Rocksがアクシデンタルオフサイドの反則。ヴェルブリッツが36-31で逃げ切り、第4節以来となる今季2勝目をあげた。

ツイドラキがトライ。

この試合で、帝京大を主将として大学選手権4連覇に導いた青木恵斗が後半21分から途中出場でリーグワンデビュー。得点にはからまなかったが、タフな攻守で勝利に貢献した。
青木がNo8ラウタイミに代わってピッチに入ったのは後半21分。28-0の大量リードから、この日2枚目のイエローカードが出て3連続トライを献上。28-21まで追い上げられた場面だった。

後半21分、青木がピッチへ。待望のリーグワンデビュー

後半28分、モールの先頭に立って相手を押し込む
「緊張する場面での出場だったし、緊張しました。意識したのは自分自身の強みを出すこと。フィジカルの強みを出そうと考えました」
「良い流れでホッとして見ていたら、自分が出る頃には追い上げられて、ドキドキしながらピッチに入りました」
FLに入った青木だったが、この日のヴェルブリッツではCTBに入ったシオサイア・フィフィタらボールキャリアーが多く、ボールキャリーの機会は少なかった。それでも35分には右ラインアウトからの2次攻撃でボールキャリー。相手LOパーソンズにヒットした場面で相手反則を獲得し、勝利を決定づけるマッガーンのPGにつなげた。
「最初のコンタクトで、相手は外国人選手だったけど、うまくずらせて、自分が相手に良い形で乗っかることができた。体を当てるシーンはあまり多くなかったけど、思ったより行けたと思います。ブレイクダウンでも、大学の時よりは絡めて行けてると思う」
大学時代はチーム内の役割分担でアタック役にほぼ専念していたが、リーグワンではそうもいかず、ディフェンスやブレイクダウンでもハードワークが求められる。それは本人も望むところだ。

顔が見えないほど低い姿勢で突進する青木
「ボールを持つ回数は少なかったけれど、コンタクトで負けてるシーンはなかったと思う。ブレイクダウンでも、相手の選手はみんな体が強くて硬かったけど、自分が良い形で入れれば必ず勝てると分かった。出場時間は短かったけど、自分にとってはプラスになる、自信になる時間でした」
試合が終わった場面もそうだった。D-Rocksが5点差に追い上げ、時計が80分を回り、ヴェルブリッツのキックオフから始めたカウンターアタックで、エースのCTBケレビがボールを持つ。青木が追い、手をかけたところでケレビがHO16金正奎にパスすると、青木はターゲットを切り替え、そのまま金へタックルしようとする。
そのとき、間にいたD-RocksのLOパーソンズが挟まってしまい、金の進路を塞いでしまった。結果、青木のタックル機会を妨害したことでアクシデンタルオフサイドと判定され、試合は終わった。最終的に、青木のワークレートの高さが試合を終わらせた。クローザー、フィニッシャーとしての役目を全うした形だった。

帝京大の先輩「アキトくん」こと奥井と勝利の握手
「リザーブは初めてだったのでちょっと難しかったです。高校大学とずっとスタートで出ていましたし、ああいう状況で、緊張感のあるゲームを自分が崩すわけにはいかない。初めて感じるプレッシャーがありました。コンタクトも、少し高く当たってしまうと食い込まれてしまう。キャリーでヒットするときも、タックルするときも、上体が起きないように意識していかないと」

青木恵斗、試合後のミックスゾーンで

ハンセンHC
ヴェルブリッツのチームにとっても大きな勝利だった。
ハンセンHCは「勝ててハッピーです。今シーズンのベストゲームをしてくれた」とチームを讃えた上で、青木と、その3分後に投入され、やはりリーグワンデビューを飾った小村真也の2人について「若いけれどチームとして信頼している。あの時間帯に投入できたことについては満足しているし、2人のパフォーマンスを誇りに思う」と称賛した

彦坂圭克ゲームキャプテン
ゲームキャプテンを務め、2トライをあげて(実質的にはPTも含め3トライ)POMに輝いたHO彦坂は「1週間の準備を通して、トヨタのラグビーを体現しよう、誰かがじゃなく1人1人が激しさを出していこうとした結果」と胸を張った。今季2度目の先発ながらハードタックルと素早い仕掛けで勝利に貢献したSH茂野は「負けが続くとベクトルを外に向けてしまいがちになるけれど、そうじゃなく自分たちに向けていこう、自分のやるべきことをしっかりやりきろうと話して試合に臨みました。今日はスタートだったけど、スタートでもリザーブでも変わらず自分の役目をやりきるだけでした」と話した。

今季2戦目の先発出場、茂野
ヴェルブリッツはこれで2勝7敗1分、勝点15として前節の11位から10位に浮上。ここまで負けても7点差以内のBPを4獲得しており、巻き返せばプレーオフ進出は十分に射程圏。ハンセンHCは「私たちは結果よりもプロセスを大事に考えている、1試合1試合、前の試合よりもよくなるよう成長を続けたい」と話す。次節は豊田スタジアムに、昨季王者のブレイブルーパスを迎える。BYE WEEKをはさみ、どんな成長ぶりを見せてくれるか。