21日、秩父宮ラグビー場では第61回全国大学ラグビー選手権大会、準々決勝が行われた。全勝で関東対抗戦を1位通過した早稲田大学は、近畿大学(関西リーグ戦3位)と対戦した。
2024/12/22
文●編集部
レギュラーシーズンが終わって、実戦まで時間が空き、ノックアウト方式の選手権初戦ということで調整面で難しいところもあったが、早稲田は佐藤健次キャプテンの2トライを含む3つトライで近大の出鼻をくじいた。
日本代表FB矢崎由高に代わり先発した植木太一もトライを決め、早稲田が勢いを掴んだ。
近大はセブンズ日本代表のWTB植田一磨のトライで反撃の狼煙をあげるも、前半終了間際に1年生ながら対抗戦トライ王の田中健想が自陣でパスインターセプト。一気に走りきりゴール中央にトライを決め、近大に流れを渡さなかった。
後半も早稲田の勢いは止まらず、4トライを決め近大を引き離した。今シーズン、早稲田の強みとしているディフェンスがこの試合でも機能し、攻撃力のある近大を2トライに封じ込め快勝。53‐10で勝利し、準決勝進出を果たした。
早稲田大学 大田尾竜彦監督
関西リーグ戦で非常に勢いのある、強みがしっかりしているチームで勝利を重ねてきた近畿大学さんに対して、前半スコア的にしっかりとした形で折り返すことができた。自分たちのディフェンスを含め、まだまだ課題はあると思いますが、しっかり勝利できたことは非常に良かった。次の準決勝、明日どっちが勝つかわかりませんけれども、しっかり準備して準決勝の舞台に向かいたい。
――早明戦後、日程の難しさはありますか
難しさはありましたけど、近大さんが非常に良いチームでした。コンタクトもしっかりしていましたし、彼らはスクラムを強みにしていて、バックスリーにスピードがあって、CTB体強くて。
対抗戦の序盤からSO服部亮太が新しく加入して、彼のゲームメイクというか、キックでかなりエリアマネジメントを含め、今までとはちょっと違うようなラグビーがはじまって。表現が合っているかどうかわからないんですけども、やっぱり楽なんですよね。
先に三本取ったことでいつものように服部に任せたらというところで、ちょっとアタックのマインドというものが少し薄くなったかなと思います。
実際に前半の戦い方もあれは、風上の戦い方なんですよね。それをずっとやるもんだから、FWは結構きつかったんじゃないかなと思います。でもFWは全然崩れることがなかったし、そこは自力がついてきたかな。健次中心に本当にディフェンスもまとまっていたし、積み重ねてきたものについてはすごく手応えを感じています。
あの辺の戦い方はもう少し細かくコーチングしないといけないかな。ただ、詰め込みすぎても駄目なのですが。これから負けられない戦いの中で、厳しい相手から課題をもらえた。悪いことばかりでは全然ないので、久しぶりに関西のゲームとして、こんな感じだよねというは僕のんかでもあるんです、次にむけていろんな引き出しをもちながらやっていきたい、
――FBで矢崎由高選手が出ていないところと植木選手の評価
その時一番いい状態の選手を起用するというのが、私のポリシーで、それによってチームも活性化しますし、今日はその一環で、矢崎よりも植木の方がよかったということです。植木についてはスピードが非常にありますので、今日1本トライを取ってくれたところは良かったですね。
彼は日本代表活動もやったりしていますので、他の選手に比べるとダメージというのは対抗戦時点でもありました。そこを加味して、現状を考えるとコンディションは植木の方がいい状態で、プレーができないということではないです。
早稲田大学 佐藤健次キャプテン
勝負の世界なので、まず勝てたことは良かった。(プレーの)精度とか、自分たちのがこだわっていたところができたのかと言われたら全然そうではなく、すごく課題が残る試合でした。来年1月2日に向けてもう一回チャレンジャーとして良い準備ができるようにしていきたい。
――課題とは
アタックでいえば、22m内に入るシーンが多かったと思うんですけど、そこでのラインアウトのミスであったり、パスミス、キャッチミスがすごく多かったなという反省があります。風が強かったのにもかかわらず、今まで通りの幅や深さでラグビーをしてしまったり、ラインアウトでも今まで通りのサインを出してしまって風に左右されてしまいました。
今日のような風が強い中での戦い方とか、距離を寄せるとか、深くするとか、そういうところまでこだわっていきたい。
スクラムでは、関西のチームと初めて組んで、間合いの取り方とか、相手の(力の)かけ具合とかが、前半は全然うまくいっていなかったのですが、後半は修正できたのでスクラムは悪かったですけど、修正できたという点だけで言ったら良かったかなと思います。
――4強からの戦い方で大事になってくること
大学選手権で準決勝に行ったのが、2年生のときしかないんで、難しいんですけど、一個一個の精度のところ、今日みたいな軽いミスをしてファーストタッチを許したら、一気に負ける要因となるでしょうし、(準決勝を)経験しているのは3年生、4年生だけなので、どういうところなのか、こういうミスをしたら負けてしまうとか、厳しさのところ、3、4年制を中心に言い続けて、もっともっとミスのないアタック、ディフェンスができればいいなと思っています。
――後半どのあたりをスクラム修正しましたか
対抗戦のチームではあまりないような、僕達に寄りかかっているじゃないですけど、そのくらいの圧力があって、そういう相手に自分たちが待ってしまって、前半やられてしまったので、先に仕掛けて、先手取れてスクラム組めたのがよかったのかなというのと、今後多分そういうチームも増えてくると思う。
そこに対して、ファーストプレーからもそうですけど、二本組んだあたりからアジャストできるようにしたい。スクラムマネジメントは僕の責任だと思っているので、練習中からもゲームライクにそういう状況に対応できるようにしていきたいですね。
――試合終了間際、スクラムペナルティを獲得した後もスクラムを選択したのは?意地?どんな心境だった?
スクラムでやられっぱなしは嫌だなと。最後二本、スクラムでペナルティ取れて良かったんですけど、最後はまた相手の圧力に飲まれてしまいましたが。意地ですね。
――ディフェンスの熟成度合い
SH細矢聖樹がディフェンスマネジメントしているので、彼への信頼も厚いですし、今、3本トライを取られるか取られないかというくらいのディフェンスの整備を聖樹がしてくれるので、FWとしてはノーストレスというか、彼に声を聞いて、コンタクトすればいい、そういうシーンが多いですね。
近畿大学 神本健司監督
早稲田大学さんのようなセットピースも展開力もあるチームに対して、うちの強みであるスクラムの面でいかに勝てるか、まずチームとしてその部分を掲げていました。速い展開についてはファーストタックルの精度、セカンドタックラーの精度、そこで粘り強く入って我慢し続けていこうと思っていました。
スクラムについては前半、思い通りの形ではいったのですが、ラインアウトからのモールのところで止められずスコアされるという展開が前半ちょっと響いたかなと思います。全体的に早稲田大学さんは、全てにおいて上だったというのが正直な感想です。
少しでも相手の流れを崩して良い展開に持っていけたらと思っていましたが、完敗でした。この4年生は本当に新チームから常にリダーとスタッフを含めて、ミーティングと練習を重ね、すごくいいチームになったと思います。チームが始まった当初は、こういった僕らなりのいいラグビーができるとは思っていませんでした。ただ、横にいる中村キャプテンと一緒に1年間やってこれて幸せだったと思います。また彼の姿を後輩たちが見て、またいいチームを作って、ここに戻ってきて、次は勝利したいと思います。
近畿大学 FL中村志キャプテン
まず近畿大学としては、セットプレーの部分でしっかりチャレンジしていこうと言って臨みました。今年のチームの目標は、関西1位、全国総合ベスト4入り、FWの部分では日本一を掲げて新シーズンからはじめました。セットプレーの部分ではスクラムだけでなくラインアウトもこだわってきて、積み重ねてきたことの集大成を今日の早稲田大学戦にぶつけるためにしっかり準備してきました。
結果はこういった形で負けてしまいましたが、自分たちの集大成をぶつけられたと思っています。一番頼りになる周りの4年生もそうですが、下級生の存在もあって、いい下級生はまだ近畿大学にはいますので、必ず次の新チームもこの舞台に上がるために努力してくれると思います。これからも近畿大学に注目してほしいです。