サクラセブンズ、ポーランドとの決定戦に勝利し歴代最高の9位 | ラグビージャパン365

サクラセブンズ、ポーランドとの決定戦に勝利し歴代最高の9位

2022/09/12

文●大友信彦


南アフリカ・ケープタウンで行われているラグビーワールドカップセブンズ(RWC7s)で、サクラセブンズこと女子日本代表が、チャレンジトーナメント(9-16位決定戦)決勝でポーランドを破り、同大会における男女を通じて日本の最高成績となる9位を獲得した。

ポーランドとは8月のワールドラグビーチャレンジャーシリーズ(コアチーム昇格大会)決勝でも対戦し、日本が17-0という予想以上のスコアで完勝していた。

だが「あのときはポーランドの強みがまったく出ていなかった。今度はリベンジに向かってくるはず」と、日本の平野優芽主将は警戒感を強調していた。


その言葉通り、試合はポーランドの猛攻で幕をあけた。

日本の激しく前に出る「ファイヤーディフェンス」に対し、直線的に前に出ながら激しいコンタクトで日本のタックルに立ち向かう。最初の3分間はほぼ互角の時間が続いたが均衡が崩れたのは4分だった。

ハーフウェー付近右中間のスクラムから、ポーランドはオープンに振るとみせかけてショートサイドの④コルデイへ。チリのチャレンジャーシリーズでもトライを量産した豪脚は、日本ディフェンス(DF)と1v1の勝負を外に振り切って先制トライ。さらに7分には、日本陣でのアタックで一度はボールコントロールを失いながら(ノックオンにも見えたがレフリーはノックバックと見て流した)、⑦グロホウスカが日本DFの隙間を抜いてトライ。⑩ドルズガワのコンバージョンも決まりポーランドが12-0とリードを広げる。


しかしサクラセブンズは焦らなかった。
前半終了を告げるブザーが鳴ったあとの8分、日本はハーフウェー付近で須田、大竹、中村、大竹、須田が相次いでミッドフィールドをえぐり、ディフェンスの意識を集めておいて左へ展開。梶木真凜のパスを受けたエース原わか花が約50mを走りきってトライ。5-12と追い上げて前半を終えた。

そして迎えた後半。
「向こうFWバテてるよ」
ピッチから大きな声が響いた。
「本当にバテてたかどうかは分かりませんが、ポーランドに焦ってる感じがあったし、プレッシャーが薄れてきた感じがあったので、自分たちはうまくいってるぞ、と自信を持たせるために、大竹選手が声を出して励ましてくれたんだと思います」(平野主将)


そこからの展開はまさしく日本の狙い通り。
11分、ハーフウェー付近のラインアウトで、ポーランドが投入したボールを日本は中村知春がみごとな読みとジャンプでスチール。原、大谷、原と繋いで前にボールを運び、相手ゴール前でPKを得ると原がクイックスタートして相手DFを抜き去り右中間にトライを決め10-12の2点差に迫る。


日本は次のキックオフからも敵陣ステイに成功。ポーランドは自陣でPKを得るが、キックで陣地を進めるのでも、クイックで攻めるのでもなくスクラムを選択。時間を使って逃げ切りを図ったが、そこからのムーブで落球。リカバリーしようとしたところに日本選手が襲いかかってノットリリースザボールのPKを得ると、すかさず平野がクイックタップを仕掛けて左中間に逆転トライ。

逆転されたポーランドは、ボールを繋いで攻め口を探すが、日本はベンチからフレッシュレッグスを次々に投入し、ファイヤーディフェンスをさらに加速させる。ポーランドはタイムアップのブザーが鳴ったあと、自陣でPKを得るとスクラムを選択したが、そこからのアタックでも活路を見いだせないままイチかバチかのロングキック。しかし日本は原が素早く反応して戻り、相手のチェイスを抑えて追いつくとタッチへ蹴り出しノーサイド。

日本女子は「8強入り」という当初の目標は果たせなかったが、初戦のあとは全試合に勝利。前回大会で女子が記録した10位を上回り、日本の男女を通じてワールドカップセブンズ最高成績となる9位で大会を終えた。

「今回こういう結果が出たことで、次のワールドシリーズやオリンピックに向けて自信を持っていける」平野優芽主将


「相手よりも走り勝てるという自信を持って試合に臨んだことが、後半の逆転勝ちに繋がったと思う。決勝の相手は8月のチャレンジャーシリーズで一度勝ったポーランドが相手で、正直やりにくいかな? という気持ちもあったけど、そういう相手にキッチリ勝てたことはチームの成長かなと思います」

――ポーランドが後半走れなくなることなどは事前の研究から?


「試合前は、そんなに詳しく見たわけではないのですが、相手の癖やセットプレーを確認したりしていました。私たちのファイヤーディフェンスは、相手もいやがっていたんじゃないかと思うし、試合前も、相手は後半走れなくなるだろうけどこっちはしっかり走り続けようと話したし、そういう展開に持って行けた」

――この結果は今後に向けてどんな意味を持つか。


「今回は、ワールドシリーズをコアチームで戦っているブラジルに、ホームの南アフリカに、そして一度勝っているポーランドに、と勝つのは難しい状況の相手にこれだけのプレーができて、自信になりました。これまでサクラセブンズはなかなか自信を持てるような結果を出せていなかったので、今回こういう結果が出たことで、次のワールドシリーズやオリンピックに向けて自信を持って行けると思います」


「今はメンタルフィットネスが高い」中村知春選手兼コーチ

「このチームは切り替えが上手。初戦にすべてをかけるつもりで準備してきたけどそこで負けた、こういうとき、以前のサクラセブンズはズルズル自滅してしまうこともあったけど、今のチームは過度に期待しないというか(笑)、『仕方ないね、じゃあ次』と切り替えることで、確実に今の力を出せたと思います。先に点を取られても焦ることなく戦えたのは、ディフェンスのファイヤーという立ち返る場所を持っていたからだと思います」

――タフな準備という点では以前のサクラセブンズもかなりやっていました。当時と今の厳しさの違いは?

「フィジカル、フィットネスの厳しさはリオまでの浅見HC時代も相当要求したけれど、今はそれ以上にメンタルフィットネスが高いと思います。うまくいかないことがあっても、焦るんじゃなく『こういうこともあるよね』と受け入れて向き合うことができる。メンタル面ですごく成長したと思う」

「思ったことを何でも口に出してよいという雰囲気があって、最後の試合でも団結力につながった」須田倫代

須田倫代

須田倫代


「最初に負けてしまったけれど、そういう結果を引きずらず、1戦1戦目の前の相手を倒していくという意識で臨めたことが、フィジー戦のあとも勝ち続けることができた理由だと思う。私自身、最初のフィジー戦のときは会場の雰囲気、ワールドカップという舞台の大きさに圧倒されてしまったけれど、そのあとはチームみんなでそういう雰囲気を楽しめた」

「このチームの良さは、みんなお互いに言いたいことを言い合える雰囲気があること。プレーヤーミーティングでも、思ったことを何でも口に出して良いという雰囲気があって、そういう時間を過ごしてきたことが、最後の試合でも団結力につながったと思う」


「世界の中での立ち位置は理解することができた」鈴木貴士HC

「ベスト8に入ることを目標に置いていましたが、これは思っていた以上に壁が高くて、自分たちの良い部分を出せなかった。でもそこで落ち込まず、もう一回自分たちがやってきたことをやりきるという姿勢で最後まで戦えたと思います」

――選手たちは口を揃えて『フィットネスには自信があった』と言っています。


「普段の練習がものすごくキツいんだと思う。選手たちはそれだけ練習で自分たちを追い込んでくれたから、強いんだと思います」


――そのフィットネスはどんな練習でつくったのでしょうか。


「僕が意識しているのは大会をイメージしたスケジュールで練習すること。3日間、6試合を戦うイメージで練習を組み立てて、練習メニュー自体も試合と同じか、試合以上の強度になるようにやっています」


――コミュニケーション力の向上には中村知春さんがプレーイングコーチという新たな立場で入ったことも影響していますか。


「中村さんにはすごく感謝しています。コミュニケーション面だけでなく、ラインアウトで相手ボールをスチールしたり、セットプレーで活躍してくれた。今回ついてくれている桑水流コーチとも連携して、コーチ陣が考えていることを伝えてくれるし、試合では身体を張ってくれた」

――2024年パリ五輪に向けて


「今回は目標にしていた8位以内にはたどり着けなかったけれど、世界の中での立ち位置は理解することができた。このあとはワールドシリーズで、上位チームと対戦できるので、24年のパリ五輪に向けて準備していきたい」



大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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