サクラセブンズ・銅メダルのフィジーから7トライを奪い快勝―東京オリパラ1周年記念イベントに男女セブンズが登場 | ラグビージャパン365

サクラセブンズ・銅メダルのフィジーから7トライを奪い快勝―東京オリパラ1周年記念イベントに男女セブンズが登場

2022/10/18

文●大友信彦


10月16日、国立競技場で、東京オリンピック・パラリンピック開催1周年記念イベント「Thank you Tokyo!」というイベントが行われた。
当日のセレモニーには、陸上競技やり投げの北口榛花選手、田中希実選手ら国内外のトップアスリートが参加したが、そこでスペシャルマッチという名称で本気の勝負を披露したのが男女の7人制ラグビーだった。

セレモニーでは国内外のトップアスリートが登場した

セレモニーでは国内外のトップアスリートが登場した


参加したのは男女の日本代表とフィジー代表。

日本女子は、南米チリの昇格大会~帰国~南アのW杯と地球をまたいで戦い抜いた過酷な1ヵ月が記憶に新しいが、1週間後の22-23日にはアジアシリーズ第1戦のタイ・バンコク大会が控えるだけに、貴重な実戦の機会として今回のスペシャルマッチを活用。

女子のレフリーを務めたのは桑井亜乃さん。選手として目指した国立をレフリーとして駆けた

女子のレフリーを務めたのは桑井亜乃さん。選手として目指した国立をレフリーとして駆けた



12日から熊谷で行っていた「女子セブンズ・デベロップメントスコッド(SDS)熊谷合宿メンバー15人が出場(HC同士の合意により出場枠拡大の特別ルールで行われた)。男子も、14日から同じく熊谷で始まったSDS参加メンバーから12人が出場した。

試合前には男女の日本とフィジーがそろって入場

試合前には男女の日本とフィジーがそろって入場

相手のフィジーは1年前の東京五輪で男子は金メダルを、女子は銅メダルを獲得。さらに1ヵ月前のW杯でも男子は優勝、女子は5位の成績を収めていた。今回は公式の大会ではなく、男女ともベストの布陣ではなかったが、東京五輪のメダリストが男子1人、女子2人、9月のW杯メンバーが男子5人、女子は3人含まれていた。

両国国歌斉唱

両国国歌斉唱

両国国歌斉唱に続いて始まったのは女子の日本vフィジー。
日本女子のメンバーは以下の通り(★は9月のW杯メンバー)

サクラセブンズにとっては初めての国立競技場だった

サクラセブンズにとっては初めての国立競技場だった



1★大谷芽生(アルカス熊谷)
2★梶木真凜(自衛隊体育学校)
3 末 結希(三重パールズ)
4★水谷咲良(東京山九フェニックス)
5★三枝千晃(北海道ディアナ)
6 保井沙予(三重パールズ)
7★平野優芽(ながとブルーエンジェルス)
8★バティヴァカロロ・アテザ優海(ながとブルーエンジェルス)
9★原わか花(東京山九フェニックス)
10★永田花菜(日体大)
11 吉野舞祐(日体大)
12★須田倫代(追手門学院大)
13 松永美穂(横浜TKM)
14 磯貝美加紗(ながとブルーエンジェルス)
15 内海春菜子(横浜TKM)


W杯メンバーから中村知春、大竹風美子ら数人がコンディションやスケジュールの関係で抜け、新たにこれまでトレーニングメンバーなどで合宿にスポット参加してきた選手がスコッドとして加わった。

トレーニングメンバーなどで合宿にスポット参加してきた選手がスコッドとして加わった。鈴木貴士HCは「太陽生命シリーズをずっと見て、この前の国体も視察して、活躍している選手を加えました」という。栃木国体で出色の働きだった保井沙予、末結希、内海春菜子のメンバー入りは(それ以前からスコッド入りしていたが)納得のセレクションだ。

開始2分須田倫代がトライ

開始2分須田倫代がトライ

試合はサクラセブンズの勢いがよく出た展開だった。
日本の先発は梶木、水谷、三枝、アテザ、原、永田、須田の7人。
先手を取ったのは日本だった。開始2分、原がハーフウェー付近のジャッカルでPKを獲得し、自らクイックスタートしてビッグゲイン。パスを受けた須田が先制トライ。
対するフィジーも3分、ハーフウェーから独走トライを返し、ゴールも決まり7-5と逆転する。

前半4分、原わか花が右隅を走り抜ける

前半4分、原わか花が右隅を走り抜ける


しかし日本はそこからラッシュに出た。4分、アテザー梶木とパスをつなぎ「新幹線わかば号」ことエース原が右隅を走り抜け、回り込んで逆転トライ。須田がコンバージョンを決め12-7とすると、6分にはスクラムから再び新幹線わかば号が発車。

6分、原が今度は左へ、連続トライ

6分、原が今度は左へ、連続トライ



タフにハードワークを重ねたアテザ優海

タフにハードワークを重ねたアテザ優海


力強いゲインを見せた水谷咲良

力強いゲインを見せた水谷咲良


今度は左隅を走り抜けて連続トライを決める。さらにホーンがなったあとのロスタイムも日本は攻め続け、9分に永田が相手タックルを外して走り抜けトライ。須田のゴールも決まり、日本は24-7とリードして前半を終えた。

ロスタイムの9分、永田花菜のトライ

ロスタイムの9分、永田花菜のトライ

後半、日本はメンバーを総入れ替え。大谷、末、保井、平野、吉野、松永、内海の7人でスタート。

前半のメンバーはベンチから応援

前半のメンバーはベンチから応援



日本のキックオフで始まった後半は、日本がそのまま敵陣ステイに成功。相手陣でボールをつなぎ続け、2分に大谷がポスト左にトライ。内海がコンバージョンを決め、31-7とリードを広げる。

後半、大谷芽生のトライ

後半、大谷芽生のトライ

保井沙予は国体に続き好調ぶりを発揮

保井沙予は国体に続き好調ぶりを発揮



スピードをアピールした吉野舞祐

スピードをアピールした吉野舞祐



続く5分には左サイドを保井が前進したところから右にワイドに振り、吉野-平野のゲインから、外に開いた内海にパスが渡り、鮮やかなトライ。

平野優芽から外に開いた内海春菜子へ絶妙のパスが渡る

平野優芽から外に開いた内海春菜子へ絶妙のパスが渡る

6分、フィジーが自陣から一瞬のステップで裏に出てそのまま独走トライ。14-36とするが、終了直前のラストプレーで日本は自陣からアタック。

終了直前、磯貝は自陣からタックラー2人をステップでかわす快走トライ

終了直前、磯貝は自陣からタックラー2人をステップでかわす快走トライ



途中出場でピッチに入っていた磯貝が相手DFのギャップを突いて約60mを走りきってトライ。内海のコンバージョンも決まり、日本が43-14で快勝した。

2トライをあげた原わか花

「この試合があることは10月の合宿に来て聞かされました。東京五輪は夢観客試合だったので、今回、初めて国立競技場で、多くの人に見ていただく中でプレーできて嬉しかったです。

(国立は)緊張もしたけれど、会場に入ったときからワクワクしたし、東京では最下位に終わったけれど、そこから強くなった姿を見せられたらいいなと思って臨みました。しっかりとジャパンのラグビーをみせられたと思います」




平野優芽主将

「来週からのアジアシリーズでしっかりチャンピオンを取って、12月からのワールドシリーズではベスト8以上の結果を1つでも多くの大会で残すという目標を立てて合宿に臨んでいます。W杯からメンバーも少し変わっている状況で、アジアシリーズへ行く前に強豪のフィジーと、こういう環境で試合ができることに感謝しています。
国立競技場でプレーできたことは嬉しかった。なかなか国立でプレーする機会はありませんし、オリンピックのときは叶わなかった、観客の声が聞こえる中でプレーすることができたのは良かった。今回は準備期間も短くて、まだまだ完成していないけど、新しいメンバーともしっかりコミュニケーションをとってプレーできました。新しいメンバーも必死でプレーしてくれたし、同じチームだったり前に合宿に来ていたり、よく知っている選手ばかりなので違和感なくラグビーできています」

鈴木貴士HC


「W杯のあと、大事なアジアシリーズに向けて再スタートというときに、フィジーという強い相手と試合ができたのは良かった。フィジーはW杯で負けた相手だし、今回はW杯のチームから何人か15人制のW杯に行っていたようですが、トップ選手も何人か残っていたし、その相手に勝てたのは良かった。

昨シーズンはディフェンスを軸にチームを作りましたが、今シーズンはアタックに注力しよう、自分たちの意図を持ったアタックをしようと言ってスタートして、今日はその意図を持ったアタックをしてくれた。スペースをうまく作って、そこへボールを運んでくれた。ディフェンスも引き続き強みにしていきたいし、しっかりやってくれたと思う。


新しいメンバーはみんな良かった。自分の持ち味を出していました。磯貝さんは9月のはじめまで15人制の活動をしていて、セブンズをやるコンディションはまだまだだと思うけれど、その中でも最後にトライを取りきってくれた。太陽生命シリーズも国体も見せてもらいましたし、これから始まる15人制の試合も見せてもらって、セブンズの適性のある新しい選手を見つけて、入れて行きたいと思っています」

サイモン・エイモー新HCでの再出発を図る男子セブンズ日本代表

男子のメンバーは以下の通り(△はトレーニングメンバーで参加)
1△丸尾崇将(神奈川タマリバ)
2 中川和真(横浜キヤノンイーグルス)
4 古賀由教(リコーブラックラムズ東京)
5△薬師寺晃(横浜キヤノンイーグルス)
6 福士萌起(日野レッドドルフィンズ)
7 加納遼大(明治安田生命ホーリーズ)
8 野口宜裕(セコムラガッツ)
9 朝永 駿(日野レッドドルフィンズ)
10 盛田 気(ツグアンドカンパニー)
11 津岡翔太郎(日本ラグビー協会)
12 石田大河(浦安D-Rocks)
13 吉澤太一(NTTドコモレッドハリケーンズ大阪)

男子は序盤から積極的に攻撃を試みるが、フィジーは個々のディフェンスレンジの広さで日本を追い込み、日本のパスやボール保持の精度がわずかに乱れたところに着実にプレッシャーをかけてボールを奪うと、そこから速やかにトライを重ねる。

フィジーは日本のアタックに執拗にプレッシャーをかけた

フィジーは日本のアタックに執拗にプレッシャーをかけた



今回はベストメンバーでの来日ではなかったようだが、リオと東京の五輪を連覇し、今年9月のW杯でも頂点をつかんだセブンズ王国の切れ味は変わらなかった。2分に先制トライを奪うと、3分には自陣のターンオーバーからカウンターアタックで一気に切り返してトライ。

福士が自陣からビッグゲイン

福士が自陣からビッグゲイン



5分には日本が必死のディフェンスで食い下がるが、後ろに転がしたボールをサポート選手が拾ってトライ。日本はハーフタイム直前、自陣のPKをクイックスタートして福士がフィジー陣10m線付近まで前進するが、相手陣丸尾へのパスが繋がらず、無得点で前半終了。

福士から丸尾へのパスはフィジーにカットされる

福士から丸尾へのパスはフィジーにカットされる


吉澤太一のジャンプステップ

吉澤太一のジャンプステップ


ハーフタイムのハドルで選手に指示を出すエイモーHC

ハーフタイムのハドルで選手に指示を出すエイモーHC


このイベントはラグビーファンにはほとんど告知されず、観戦申し込みも8月に締め切られていたため、ほとんどの観客はラグビーにはなじみがなかった様子だが、フィジーのダイナミックなステップ、魔法のようなロングパス、逸機の加速力は強いインパクトを与えたよう。ラインアウトでは長身ジャンパーと長身リフターが絶妙な呼吸で掲げる驚異的な高さのリフティングに観衆がどよめく場面もあった。

フィジーのラインアウトの高さには観客がどよめいた

フィジーのラインアウトの高さには観客がどよめいた

セブンズ王国フィジーのパフォーマンスは、ラグビー観戦経験の多くない観客にもラグビーの面白さ、ダイナミックさを存分にアピールした。

0-24で迎えた後半は開始早々、中川と朝永が相次いでシンビンを受けてしまう。日本は2人足りない状況に追い込まれ、2分、フィジーが易々とトライ。ここでフィジーのベン・ゴリングスHCから「もういいから戻してやれ」というリクエストが発動。

フィジー選手と競り合ってボールを摑む薬師寺

フィジー選手と競り合ってボールを摑む薬師寺


公式戦ではないのだし、フィジーにとっても、対等な条件で戦った方が収穫があるという意思表示だ。

7人に戻った日本は反撃開始。何とかボールをつないでフィジーゴール前に攻め上がるが、フィジーのDFは懐が深い。5分にはゴール前に攻め込まれたピンチで日本のパスをインターセプトし、そのままカウンターでトライ。36-0までリードを広げる。

相手タックルをステップで外す盛田

相手タックルをステップで外す盛田

それでも日本は意地の反撃を反復。7分に右タッチライン際で相手タックルに耐えた盛田が初トライをあげると、観客席からは大きな拍手が。さらにホーンがなったあとのキックオフも、丸尾が鮮やかにキャッチしてそのままアタックし、薬師寺がトライ。

後半7分、盛田がようやく初トライ

後半7分、盛田がようやく初トライ



ホーン後のキックオフを丸尾が摑む

ホーン後のキックオフを丸尾が摑む


丸尾からパスを受けた薬師寺が前進

丸尾からパスを受けた薬師寺が前進


さらに野口が前に出て

さらに野口が前に出て


薬師寺がトライ

薬師寺がトライ




ファイナルミニッツに、トレーニングメンバーとして合宿に参加している新鋭2人がつないでトライをあげたことは、サイモン・エイモー新HCのもと再出発を図る男子日本の明るい材料かもしれない。

健闘を称え合う両チーム

健闘を称え合う両チーム


両チームの選手たちが交互に並び、観客席へあいさつ

両チームの選手たちが交互に並び、観客席へあいさつ


日本のエイモーHCとフィジーのゴリングスHCはイングランド7s代表のチームメート

日本のエイモーHCとフィジーのゴリングスHCはイングランド7s代表のチームメート


レフリーチームのみなさん。桑井レフリーはこのあとアジアシリーズへ向かう

レフリーチームのみなさん。桑井レフリーはこのあとアジアシリーズへ向かう

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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