6年目を迎えた太陽生命ウィメンズセブンズシリーズが、4月28-29日の秋田大会(秋田市・あきぎんスタジアム)で開幕する。
今年は第1戦秋田大会のあと、第2戦の東京大会が5/18-19日に秩父宮ラグビー場で、第3戦の鈴鹿大会が6/8-9日に三重交通Gスポーツの杜で、第4戦の富士山裾野御殿場大会が6/29-30日に裾野市運動公園陸上競技場で行われる。
過去2年は春に2大会、秋に2大会という分割開催だったが、今年はワールドカップとの重複を避けるために春に4大会をまとめて開催することとなった。短期決戦だけに、ケガをしない体の強さと、ケガ人が出ても動じない層の厚さがものを言う大会になりそうだ。
RUGBYJAPAN365では、4月24日に行われた会見から、昨年の上位3チーム(日体大、三重パールズ、追手門学院大)&注目の新昇格2チーム(自衛隊体育学校、横河武蔵野アルテミスターズ)のコメントと、各チームの新戦力などを展望する。
日本体育大学女子ラグビー部(昨年・優勝)
昨年は4大会中2大会に優勝、残る2大会も準優勝し、年間ポイントで総合優勝。15人制でも全国選手権を制し、7人制と15人制の完全制覇を達成した。そのメンバーから、年間MVPの山本実、伊藤優希、庵奥里愛(三重パールズ)、櫻井綾乃、名倉ひなの(横河武蔵野)、新原響(横浜TKM)ら主力がごっそり卒業。
それでも堤ほの花、大竹風美子、立山由香里、田中笑伊、平野優芽という大量5人をサクラセブンズに送り込んでいるが、昨年同様、代表勢の太陽生命シリーズ参加可否は微妙だ。
しかも大竹、立山、田中と清水麻有は負傷中。4-6月の4大会は、代表組不在を想定。副将の清水麻有は「今年は足の速い選手も体の大きい選手もいないし、スター選手がいない分、チーム力、組織力で勝負したい」と話した。
注目はチームキャプテンの鵜川志帆(4年、和光)。「仕掛けも上手いし、走りきる走力もある。ラグビースキルも高い」と清水。フィジカル面での期待は永井彩乃(4年、石見智翠館)、山本和花(3年、門司学園)、そして過去2年は負傷に泣いた中山潮音(3年、宮崎北)。
「去年までは、パワーが強すぎてケガが多かったけど、トレーニングを積んで自分のパワーをコントロールできるようになった」(清水)という。高3で日本代表入りした大器のブレイクが楽しみだ。
【三重パールズ】(昨年2位)
昨季はコアチーム昇格1年目ながら2大会に優勝。総合優勝も視界に入れていたが、最終戦の鈴鹿大会では準決勝でアルカスに敗れた。2017年ワールドカップでサクラフィフティーン主将も務めた齋藤聖奈主将(大阪体大)は「総合優勝を逃したことよりも、地元・鈴鹿の大会で勝てなかったのが残念。ただ、地元の大会での緊張感や、カードが2枚出てしまったときにチームが動揺してしまったこと、前の試合が延びて、キックオフまで待たされたときに平常心を保てなかったことなど、たくさんのことを勉強できた」と前向きに捉えている。
新加入は日体大から昨季の年間MVP山本実、サクラセブンズのパワーハウス伊藤優希、冷静沈着なFB庵奥里愛のトリオ。昨年はコアチームとしての1年目。遠征や連戦などすべてが初めての経験だったが、チームとしても経験を積んだ今季は次のステージを狙う。
【追手門学院大VENUS】(昨年・3位)
昨季の主将、藤﨑春菜は大学を卒業して「ながとブルーエンジェルス」へ。高校を卒業した西村蒼空、藤殊華は立正大に進学し関西を離れたが、楽しみなフレッシュウーマンが室越香南(かな)(追手門学院大1年、追手門学院高)だ。今季主将の阪本結花(追手門学院大4年、石見智翠館高)は「自分で抜く力、相手を引きつけて味方を抜かせる力を持っている」と絶賛する。
注目選手は昨年の太陽生命シリーズで活躍し、サクラセブンズ入りした新崎麻未(追手門学院大3年、追手門学院高)、決定力抜群の高木愛実(追手門学院大3年、追手門学院高)。阪本主将の兄・圭輔さんは東海大-サントリーで活躍したSO。
※新昇格チーム【自衛隊体育学校PTS】
走力抜群のFW石井寿依主将、キッカーでもあるBK平山愛、身長172センチの大型ランナー葛西杏奈、パワーを誇るFW星野恵というサクラセブンズ/サクラフィフティーン候補に選ばれているメンバーが中軸となる。メンバーは自衛隊入隊後にラグビーを始めた初心者が中心だが、国内では唯一と言って良いフルタイムでラグビーに打ち込める環境で、昨年は年間100試合をこなして経験値を高めた。
ユース日本代表歴のある梶木真凛(福岡工大城東)は2年目を迎え、ブレイクに期待。研修のため今季の出場は難しいが、東京フェニックスから移籍の山本久代、アナン学園から入隊した黒田美織という新人も頼もしい。「チームの目標は総合5位です」(石井主将)
※新昇格チーム【横河武蔵野アルテミスターズ】
チームとして実質的に活動開始したのは昨年の4月末。そこから1年で、セブンズではコアチーム昇格、15人制でもアルカスとの合同チームながら全国選手権出場と、レベルをあげてきた。
新戦力は日体大から加入したFW櫻井綾乃、BK名倉ひなの、昨季は千葉ペガサスでプレーしていた高木萌結、関東学院六浦から東京学芸大に進学した小川すみれ子。特に高木は「若いけど抜群のラグビーセンス、ゲームメークでチームを活気づけています」
新興チームは外国人選手を採用して強化を急ぐチームが多いが、アルテミスターズはスティーブ・タイナマンHCの「時間はかかっても、今いる選手たちを育てて強くなっていこう」という考えで、国産選手による強化を目指す。
「今年の目標は総合8位。来年は6位、その次は4位。ステップアップしていきたいと思います」(南主将)
【他チームの戦力情報】
・昨季総合4位に躍進した横浜TKMには、日体大からSH/WTB新原響が加入。
・昨季5位のながとブルーエンジェルズには追手門学院大からキックの名手・藤﨑春菜が加わったほか、アルカスから藪内あゆみが移籍。
この両チーム陣はニュージーランドからの助っ人も加入しており、シリーズの台風の目になる可能性も十分だ。
・昨季は6位と不振だったアルカスには、追手門学院高から西村蒼空、藤殊華、石見智翠館高から杉本七海、大谷芽生というポテンシャル抜群のルーキーが加わった。
・やはり昨季7位と不振だった東京フェニックスは、東京山九フェニックスとチーム名を変更。今季もNZ、香港から即戦力の外国人選手を獲得したほか、昨季はながとでプレーしていた加藤(上運天)あかり、千葉ペガサスで登録されていた増田結(麗澤大1年)、金島珠璃亜(駒大4年)、笠原きらら(東洋大2年)らも加入した。
・昨季8位の北海道ディアナには。アルカスからSO佐藤優、追手門学院大からWTB磯貝美加紗が加入。ボブスレーから転向し、抜群のポテンシャルでサクラセブンズ練習生となった押切麻李亜にも、シリーズを通じて試合経験値を高めていってほしい。
・昨季10位のRKUグレースは、他チームからの移籍はなし。身長145センチと小柄ながら攻守に体を張る町谷文海・文栄の双子姉妹(ともに流経大1年・石見智翠館)ら大学1年生の成長に期待したい。
※昨季9位のチャレンジチーム(協会推薦強化チーム)は、高校生でSDS(セブンズ・デヴェロップメント・スコッド)に選ばれている選手を中心に編成するが、サニックスワールドユースが同時期に行われるため、昨年のU18女子セブンズ女王・石見智翠館や関東U18セブンズ女王・関東学院六浦勢の出場は微妙だ。
大友信彦 (おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |