11月4日、OTOWAカップ第34回関東女子ラグビーフットボール大会が開幕。代々木公園ラグビー場で、昨季の全国大会優勝チーム、東京山九フェニックスとOBL(弘前サクラオーバルズ、国際武道大、ブレイブルーヴの合同チーム)が対戦した。
試合会場となった代々木公園ラグビー場は、原宿駅から至近の距離。この日は公園で「ふるさと渋谷フェスティバル」が開催され、3on3のバスケットボールなど多くのイベントが行われ、好天に恵まれたこともあり、家族連れなど多くのファンが観戦した(公式記録の観客数は500人)。
しかし試合は、そんな差を感じさせない熱戦となった。OBLはサクラXV候補にも選ばれたPR井草彩野を中心にスクラム、ラインアウトのセットプレーで安定したボールを確保し、フェニックスにプレッシャーをかけ、9分にNO8片岡瑞帆がのトライで先制。FB中村紘子のコンバージョンも決まり、OBLが7点を先行。フェニックスも16分にWTB山本侑衣菜がトライを返し、右隅の難しいコンバージョンをFB大黒田裕芽が成功。7-7の同点に追いつくが、OBLは25分にラインアウトモールを押し込んでPR1五月女莉緒、31分には相手ゴール前のスクラムからNO8片岡がサイドを突き、ピックしたPR3井草彩野が左中間にトライ。19-7までリードした。

OBLのセットプレーを支えた井草彩野
しかもフェニックスは30分にFL高橋李実が危険なプレーでイエローカードを受け、数的不利な状態に。しかしここからフェニックスは逆に反撃に出る。36分、右ゴール前に攻め込むとラインアウトモールを押してHO塩崎優衣が右中間にトライ。さらにロスタイムの42分には相手ゴール前でWTB11鹿尾みなみが相手キックをチャージしてそのまま左中間にトライ。大黒田裕芽がともにコンバージョンを決め、21-19と逆転して折り返す。

前半35分、フェニックスは数的不利からモールでトライ

大黒田裕芽

ハーフタイムのフェニックスの円陣。負傷で欠場したキャプテン鈴木実沙紀からアドバイスが出される
そして迎えた後半、フェニックスは攻勢に転じる。
5分、左右にボールを大きく動かしてゴール前のラックから途中出場のPR髙木恵がトライ。9分にはやはり左右にワイドにボールを動かし、WTB11鹿尾が左隅へトライ。14分にOBLのSH渡辺貴子が危険なタックルでイエローカードを受け、数的優位を得たフェニックスは15分、ハーフウェー付近のスクラムでPKを得るとあえてスクラムを選択。ブラインド側WTB鹿尾のラインブレイクからFB大黒田がビッグゲインし、最後はWTB14山本侑衣菜が右隅へトライ。38-19までリードを広げる。

4トライをあげてスター・オブ・ザ・マッチに選ばれた東京山九フェニックスWTB鹿尾みなみ
それでもOBLは数的不利ながら粘りのディフェンスをみせ、試合はここから膠着。30分過ぎまで互いに追加点を奪えない展開が続いた。

テンポの良いパスでゲームをリードしたOBLのSH渡辺貴子

正確なキックをみせたOBLのFB中村紘子主将.
勝負所は30分の攻防だった。フェニックスの連続攻撃をOBLは自陣ゴール前で粘り強くディフェンスしてターンオーバー。しかしOBLのキックがタッチに出ず、そこからフェニックスはカウンターアタックから再びフェイズを重ね、およそ20のフェイズを重ねた末に、途中出場のFL20田中怜恵子が右隅にトライを決める。
ここで流れを掴んだフェニックスは37分にWTB鹿尾みなみが3本目、さらにロスタイムの41分にも左隅に飛び込みこの試合4トライ目。大黒田が左隅の難しいコンバージョンを連続で決め、最終的には57-19の大差をつけて東京山九フェニックスが勝利。トライ数9-3と6差をつけたことでBPも獲得する好スタートを切った。
スター・オブ・ザ・マッチには4トライをあげたフェニックスの鹿尾みなみが選ばれた。

スター・オブ・ザ・マッチを受賞したフェニックスの鹿尾みなみ
この試合、フェニックスはCTB古田真菜、WTB松村美咲、PR柏木那月が、OBLはSH/WTB安尾琴乃、CTB安藤菜緖(ブレイブルーヴ)、PR左高裕佳(弘前サクラオーバルズ)が、南アフリカで行われていたWXV2から帰国したばかりとあって欠場。パリ五輪最終予選を控えたサクラセブンズの原わか花、大竹風美子、水谷咲良、西亜利沙(フェニックス)も出場を回避した。

ブレイクダウンの激しい攻防
今季の関東大会にはこれまでの日体大、東京山九フェニックス、横河武蔵野アルテミ・スターズ、RKUグレースに加え横浜TKMも単独チームとして初めて出場。合同チームとして①OBL(弘前サクラオーバルズ、国際武道大、ブレイブルーヴ)と②立正大学アルカスバーバリアンズ(立正大・アルカス熊谷、北海道バーバリアンズディアナ)の2チームが参加。1月6日の最終節まで7チーム総当たり戦で行われる。
東京山九フェニックス四宮洋平GM兼監督

「まず、ここ(代々木公園ラグビー場)で試合をやれたことが一番大きい。そのために、渋谷をホームグラウンドとして、小学校のグラウンドで練習したり、宮下公園でラグビー体験会を開いたり、都知事にも表敬訪問して女子ラグビーへの支援をお願いしたり、いろんな根回しをしてきましたから(笑)。たくさんの人に見ていただけたことが一番の収穫です」
東京山九フェニックス中島涼香ゲームキャプテン

鈴木実沙紀の負傷で急遽ゲームキャプテンを務めたフェニックスSH中島涼香
「開幕戦を代々木でホームゲームとして戦えることに幸せを感じながら試合しました。たくさんの人に見ていただいて、ここで開幕戦を戦えたことでパワーをもらいました。
試合自体は入りが悪くて、ゲームをうまくコントロールできなかったので、次の試合に向けて改善したい。このあと代表組が帰ってきてポジション争いが厳しくなるけれど、今出ている選手たちも譲るわけにはいかない。後半はハードワークでアピールしてくれたと思います」
OBL松田努監督

OBLの円陣。選手たちのトークを聞く松田努監督
「セットプレーが安定していたし、タックルも格段に入れるようになった。特に前半のディフェンスではチームも個人もレベルアップを感じました。負けたけれど、前半の戦いは自信になると思います。

今回は、オーバルズの弘前にも武道大の勝浦にも1度ずつ合同練習に行きました。遠かったけど、みんなその遠くから来てくれているんだなと実感しました。去年はケガ人が出て棄権したり、ノンコンテストになったりで1勝もできなかったので、まず1勝したい。次からは代表のPR(左高)も、BKも2枚(安尾、安藤)も合流するので楽しみです」

試合後のピッチではラグビー体験会を実施

ラグビー体験会の指導には現役サクラセブンズの大竹、水谷、松村、西らも登場