「試合に出ているメンバーだけじゃなく、全員が」
トップリーグで優勝を飾ったパナソニックの主将、堀江翔太が、ことあるごとに言った台詞である。チームがどう戦い、どんな意識で試合に臨むのか。それは、試合に出るAチームのレギュラーメンバーだけが分かっていればいいわけではない。
当たり前だけれど、実行するのはそう簡単なことではない。
試合に出られない経験をして、ノンメンバーの気持ちがやっとわかった
今季、新たにパナソニック・ワイルドナイツのキャプテンに就いた堀江翔太が、そこにこだわったのは、日本人初となるスーパーラグビーの経験で学んだことからだった。
「レベルズでは僕自身、9割がたノンメンバーで、試合に出られない経験をして、ノンメンバーの気持ちがやっと分かりました。自分が試合に出られない立場だったことで、一歩引いたところから、なぜレベルズは勝てないんだろうということを見ていました」
堀江から見ると、レベルズのコーチングスタッフは、ノンメンバーに対して目を向けていないように感じられた。
「ほったらかしでした。それでは信頼関係が生まれないんです」
試合に向けた戦術の練習は、Aチームの15人ないし23人で行うのがほとんどだった。
残りのメンバーには教えていない。だから、誰かのケガで急にメンバー入りした選手は、チームでやろうとしていることを「何も分かってないんですよ」
分かっていないから、当然ミスが出る。本来、ミスは次に成功するための検証材料になるはずのものだが、コーチはそこで「なぜミスするんだ?」「もっと集中しろ」と、選手を責めるのがほとんどだった。そして、同じミスを、Aチームの選手がしても責められない。「Aにいる選手は、ミスしても『次は大丈夫やろ』と見てもらえるんです」と堀江は言う。オーストラリア代表の選手は、酒を飲んで練習に来て、集中力の薄れた姿を見せても何も言われない。下から上がった選手がミスをすると、コーチはミスという結果だけを見て、そこを責めたという。