試合には敗れたが、そのポテンシャルの高さを改めて思い知った人が多かっただろう。
ブラックラムズ東京のSO/FBアイザック・ルーカス。その白い肌から「ミルキー」というニックネームを持つ男は、16日に秩父宮ラグビー場で行われた静岡ブルーレヴズ戦で、その圧巻のアタック能力を見せつけた。
前半36分にピッチに入ると、FBとSOの位置を行ったり来たりしながら果敢にアタック。とりわけ後半20分過ぎからのアタックではアンストラクチャーな場面で多彩なポジショニングからボールを持ってアタック。電光石火の連続トライをクリエイトした。
前半36分という早いタイミングでの投入について、ピーター・ヒューワットHCはこう明かした。
「ゲームの流れで、相手(ブルーレヴズ)のスピードにやられていたところがあったので、こちらもスピードで対抗することが必要だと思ってアイザックを入れました。彼を入れれば良いアタックを作れるという画が見えていました」
第10節終了時点のスタッツランキングを見ると、ルーカスのパフォーマンスの高さがよく分かる。ボールキャリー回数151とディフェンス突破数60は1位、ゲインメータ-776mは3位、オフロードパス22回は2位タイ。ブラックラムズはここまで順位は10位と苦しい戦いが続いているが、その中で獅子奮迅と呼びたくなるパフォーマンスを続けている。
ブルーレヴズ戦後のミックスゾーンで「ミルキー」に聞いた。
――ループプレーなど1フェイズで複数回ボールを持つなどボールタッチの多さが目立ちます。
「ボールの近くにいられるようにしています。世界のベストの選手はボールタッチが多いので、僕もセカンドタッチを多くするように意識しています。ボールを持つ回数を増やすほど、何が起こるか分からないですから。ヒューワットHCからは、自分のことを信じていけ、すべてが正しい判断じゃないかもしれなくても、自信を持って行こうと言われています。今の課題は、ランをするかしないのか、そのバランスをみつけていくことです」
――10番(SO)と15番(FB)と、どちらで出るのが好きですか?
「どちらで出るかによって自分のプレーを少し変える必要があります。プレーするのが違うエリアですから。15番だったらワイドなエリアで、10番だったらインサイドでアタックすることになる。ただ、10番と15番の位置に交互に入ってプレーすることも多いので、どちらのときもマインドセットを変えることはない」
――アンストラクチャーな場面でプレーするのが楽しそうですね。
「いつも楽しみにしているよ(笑)。ディフェンスがアンストラクチャーになっているときにボールを持つのは楽しいし、チームもそこからチャンスを広げようとイメージして狙っているからね」
――アンストラクチャーな場面でイキイキとしている様子はまるでフィジアンみたいですね。
「はは、僕はフィジアンじゃないけど、僕自身アンストラクチャーなシチュエーションは大好き、ラグビーが大好きです(笑)」
――アンストラクチャーな場面では何を考えてプレーを選択しているのですか?
「あまり考えすぎないようにしている。自分の直感を信じて、ミスマッチがどこにあるかを見つけたら、早くそこに向けて動こうとしています。ブラックラムズではもう4シーズン目だし、マット・マッガーン(SO/FB)ともネッティ(WTBネタニ・ヴァカタリヤ)とも、お互いにどんなプレーが好きかを理解している。どんなプレーを選ぶかが予測できるからね。僕はランニングゲームが自分の強みだし、チームが自分に何を期待しているかも分かるから、その瞬間瞬間に必要なことをやる。まだまだ完成形ではないけれど、ハードワークしたいね」
――将来は、ワラビーズのジャージーを着たいですか? 日本代表のジャージーを着たいですか?
「うーん、それについてはクリアじゃないなあ(笑)。確かなのは、今はここ、リコーブラックラムズでプレーしていることであり、ここで何ができるか、どんなプレーができるかということ。ここで良いプレーをすることにフォーカスしています。もちろん、将来的にはインターナショナルでプレーしたい、ワールドカップでプレーしたい気持ちはありますけどね」