3月15日、NTTジャパンラグビーリーグワンは第10節がはじまった。秩父宮ラグビー場のナイトゲームは、ここまで4勝5敗と苦しんでいる昨年王者のクボタスピアーズ船橋・東京ベが5位の横浜キヤノンイーグルスに挑んだ。敗れればプレーオフ進出が絶望的となるプレッシャーのかかる一戦でどんなパフォーマンスを見せるか注目された。
2024/03/15
文●編集部
試合序盤はイーグルスのペース。スピアーズはマキシがレッドカードで苦しい展開が続いた
前半から、イーグルスが試合を優位に進めた。10分、イーグルスにラインアウトから展開されWTB竹澤正祥にトライを許す。20分、敵陣深くのライナウとからモールを押し込みHOスカルク・エラスマスがトライを決めて8-5と逆転に成功するも、33分、イーグルスSO田村優に裏スペースにボールを蹴り込まれ、そのボールに反応したCTBローハン・ヤンセ・ファンレンズバーグにトライされ逆転。
37分、スピアーズはNO8ファウルア・マキシがハイタックルでレッドカード。14人と数的にも不利な状況となってしまう。さらに39分、イーグルスの細かなパスでディフェンスを崩されWTBヴィリアメ・タカヤワにトライを許し、8-19とリードを広げられ前半を折り返した。
後半も変わらずイーグルスペース。最大18点差をつけリードするが・・・
後半の入り、イーグルスWTBタカヤワに再びトライを許し8-26と18点差に広げられてしまう。スピアーズは、アーリーエントリーのHO江良颯、LOシカリング、PR紙森陽太を投入。リザーブメンバーがチームにエナジーを与える。
60分、相手のペナルティからゴール前のラインアウト。スピアーズはモールを組んで押し込む。アドバンテージが出されてCTB立川理道が裏にグラバーキック。後半出場のCTBハラトア・ヴァイレアが走り込むもグラウディングできず。再びラインアウトから、今度はFWでフェイズを重ねるもグラウディングできず、ここもイーグルスがオフサイドで三度ラインアウト。江良がボールをもってモールを押し込むもイーグルスもしっかりモールディフェンスをして前進を許さない。
SH藤原忍がボールを展開すると、立川からSO岸岡智樹へのパスがつながりトライ。FB島田悠平のゴールも決まり15-26と9点差に迫る。
膠着状態がしばらく続いた73分、スピアーズはSO岸岡が50-22を決め敵陣22m内側でラインアウトのチャンス。スピアーズはラインアウトからマイボールをキープ。イーグルスは密集の攻防でLOファン・ダイクにイエローカードが出されイーグルスが残りの時間一人少ない状況となる。
スピアーズがもう一度ラインアウトからモールを組むとHO江良颯が2試合連続のトライを決めた。島田悠平のゴールも決まって22-26と4点差に迫った。
残り2分少々、スピアーズは負ければ連覇の夢が潰える状況。全員が「行くしかない」と意識が一つになった。自陣からボールをつなぐと、SO岸岡がアドバンテージがある中でタップキックで裏スペースへボールを蹴り込むと自ら手中に収め、一気に加速。ゴールに迫る。イーグルスもFL嶋田直人が何とか岸岡を止めるも、立川がすぐにフォローしてスピアーズがボールをキープ。すぐに右サイドへ展開。大外の根塚洸雅までつながり決勝のトライ。
劇的な展開で、スピアーズが29-26でイーグルスに逆転勝利を収め、プレーオフ進出に望みを繋いだ。翌週は王者・埼玉ワイルドナイツとの大一番を迎える。今日の勝利で勝ち点は29の6位。今節まだ試合をしていないスティーラーズ、そして今日勝利したイーグルスとの勝ち点差は3。一戦必勝の状況は続く。
敗れたイーグルスはボーナスポイント1は確保し、勝ち点29。4位のスティーラーズに並んだ。(今節、スティーラーズはワイルドナイツと対戦。)スティーラーズが勝ち点なしで敗れれば得失点差でイーグルスが4位に浮上する。次週、イーグルスは東京サンゴリアスとの対戦。こちらも激しい戦いになることは必至だ。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ フラン・ルディケHC
クボタに来てから本当に一番の大逆転の試合でした。選手たちには感謝しています。信じる力、プロセス、やり切るところを出してくれた。前半はペナルティで自陣にくぎ付けになったが、後半はレッドカードもありましたが、選手たちが地に足をつけてしっかりゲームをコントロールしてくれた結果です。特に過去2試合は、大事な局面で点数に変えることができなかったが今日の試合ではできた。その修正がこれから大事になってくる。
――SO岸岡智樹の成長
確実に成長しています。モールトライなどチームのモメンタムのコントロールのところ、過去の試合、前半良かったけど後半悪い部分があったが、今日はステップアップしてくれていて彼の才能が見えている。試合の中で落ち着いてできているので成長できている。
――江良選手の評価
毎試合良くなっているし、特にボールキャリー、接点の強さでインパクトを見せてくれています。後半のスクラムも大事なところで組んでくれたところでも大きな成長を見せてくれている。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 立川理道キャプテン
前半ペナルティが多くペースをつかめなかった。後半も最初取られたが、そこからやることを明確にすることができたし、レッドカードの中でもゲームをうまく進められたところは一戦一戦、タイトな試合をやっていく中で、若い9番、10番が経験できていた(結果)。
後半入ってきた選手たちがいいインパクトを出してくれた。ケガ人が多い中で、今こそチームの力を出すことができた。次の試合もしっかり準備して臨みたい。
――今日の試合に勝利できたことは大きいと思いますが
これから勝っていくしかプレーオフにいけないので、FWのセットピースの局面をどこで出すのかはBKの仕事です。今日、うまくいったところといかなかったところがある。うちの大きなFWをしっかり前に出せるような試合の作りにしていきたい。
――今日負けるとプレーオフ進出することが難しくなるという状況でどんな準備をしていたか。
今日の試合に負ける、負けないはチーム内ではみんなわかっていることで、特別、プレッシャーを感じることはあったと思いますが、試合中、次は何をするのかということを話していました。この試合でやることだけを話していた。危機感はもちろんあったが、それを口に出すということはなかった。
――14人で試合を進めることなったことについて
レッドカードをもらったが(他のメンバーが)帰ってくることができるというのが、今シーズンのルールだったので、試合をスローにして、(1人)戻って来るまでの時間を稼ぐということを考えましたが、帰ってきてから対応できたし、入ってくれた選手が、マキシの替わりをしっかり果たしてくれた。
――ここ最近2試合、いやな負け方をしていた。どうやってショートウィークを過ごしていた?
大きなことを変えずにやってきた。ここ2試合は、結果に対して少しコミットし過ぎていたかな。もちろん勝てるようなチャンスがたくさんあった中で自分たちのミスで首をしめてしまった。ショートウィークで準備する時間は限られていましたが、コーチ陣も選手間でもやるべきことを明確にしてやってきたことがつながったと思います。
――江良選手の評価は
見てわかるように、大学卒業して、あのパフォーマンスするのはすごい。人間としてもいい奴ですしね。クボタの将来を担う人材だと思います。明るいですし、堅苦しくないし、2~3年、チームにいるような雰囲気もありますし、コミュニケーション取るのも上手いし、チームにもエナジーを与えてくれています。早く日本代表になったほうがいい。
横浜キヤノンイーグルス 沢木敬介監督
残念な結果でショックなんですけども、現実を受け止めて次に切り替えてやっていかないといけない。65分間、支配していたのはウチだが、勝敗がひっくり返るのがラグビー。しっかり、最後まで勝ちきれる強さをもう一度準備していきたいと思います。
――後半30分前後にタッチを狙った判断について
あの状況でペナルティもらったらボーナスポイントを狙うのは普通の判断で選手たちはすごくいい判断をしたと思う。今日の敗因は、3本くらいあったゴール前のラインアウトを確保できなかったこと。1本でも確保できれば勝てた。我々がそういうプレッシャーがかかった状況を、トレーニングできなかったのは俺の責任。ああいう状況でもしっかりプレーできるようにトレーニングしたい。
横浜キヤノンイーグルス CTB梶村祐介キャプテン
本当に結果は残念で、自分たちがほとんどの時間をコントロールできた。勝負どころで取れなかったのが結果につながった。次の週は大きな試合(東京サンゴリアス戦)があると思いますのでチームとしては前に向いていかないといけない。
――後半30分前後、PGを狙わずタッチに蹴った
エリアとしてあのエリアに行きたかった。またFWとも話してここならトライとれるということだった。結果として取れなかったですが、自分たちとしては敵陣にいた方がいいかなという考えだった。(勝点5を取りたかった?)それもありました。
――前半ショット狙えるところもトライを取りに行った
敵陣ならボールを持っていたかった。ショット狙うという話もあったが、敵陣でプレーすればスコア取れるという自信があったので。守っていてもスコアを取られる印象はあまりなくて、最後15分だけ自分たちのディリプリンが崩れて、勝負どころでミスしてしまった。
――ショートウィークや大分遠征などの疲れは?
ショートウィークだから難しいというのはなかった。個人的には今日、体が軽いなと感じていたし連戦の疲れは感じていませんでした。
――相手にレッドカードが出たが
レッドカードで消極的な選択をしたこともないですし、人数的に優位だったので敵陣にいようとしました。プランが敵陣に入ったらボールを持つというプランだった。
――来週のサンゴリアス戦に向けて
相手どうこうよりも、もう一度自分たちのスタンダードでどれくらいプレーできるか。ゲームプレッシャーの中でパフォーマンス発揮できる選手はまだ少ないので、その強度の中で発揮できるような準備をしていきたい。